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探偵と屋根と少女と出逢い4-3

葵はテーブルを挟んで要達の反対側にあるソファに座って。

何か言おうとしたのだろう、口を開こうとして――途中で止まった。

眉をひそめ、何かを探るような目つき。

その顔つきのまま、葵は要に訊ねた。

「……どうしたんですか? その顔」

「……う」

ばれたか、と要は心中で顔をしかめる。

受付のおばちゃんには何を言われなかったから、大丈夫だと思っていたのだが。

まあ問われた以上は仕方がない、隠すつもりもないのだから。

要は少し腫れている赤い頬を擦りながら答えた。

「殴られたんスよ、有紗に」

言いながら、横目で少女を見る。

原因のほとんどはこの少女である。罪悪感を少しでも感じていればと思ったが、やはりそれは叶わなかったようだ。

少女は『我関せず』といった風な表情で、貰った紙コップのコーヒーをちびちびと飲んでいた。

――要が殴られたのは、警察署に来る前である。

まず、事務所から出る前に、要は少女に自分のコートを着せた。

少女の格好があまりにボロボロ過ぎて、それで警察に言ったら自分が捕まってしまいそうだったからだ。

少女は素直に要の言うことを聞いた。少しサイズが大きかったことと、若干季節外れであること以外に問題は無かった。

これで大丈夫だ。意気揚々と、要は少女を連れて部屋の扉を開けた。

すると、丁度そこに有紗が立っていたのだ。

予定外ではあったものの、当初、要はそれをむしろ幸運だと思った。

事情はどうあれ、自分が借りているその場所が壊れたのは揺るぎようのない事実なのだ。

要は、先に警察にこの少女を保護してもらってからと思っていたが、順番が入れ替わった所で別に問題は無かった。

だから、謝ろうとした。

けれど、有紗は聞く耳を持たなかった。否、謝罪すらさせてくれなかった。


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