探偵と屋根と少女と出逢い3-2
なぜ自分は空を見上げているのか、要はすぐには分からなかった。まるで途中を切り取られた映画のフィルムを見たように、原因と結果の間が抜け落ちている。
けれど、背中に感じるジンジンとした痛みと、視界の隅に見えた自分を見下ろしている少女の顔で、気付いた。
どうやら自分は投げ飛ばされたようだ、と。
不思議と怒りはどこかへ消えていた。痛みのせいで頭が冴えたのだろうか。
体をゆっくりと起こす。
その途中で目の前に手が差し出された。細く白い手。もちろん、少女だ。
冷めたとはいえ、怒り自体が消えたわけではない。未だ部屋はボロボロなのだ。要はそれを無視して、自分で起き上がった。
「……どうやったんだ、今の」ゴミクズを払いながら、要は訊ねる。
「単なる技術です、要様」差し出した腕を引っ込めて、少女は眉一筋動かさず答える。無視
されたことによる感情の変化は、その顔からは見い出せない。
なるほど、単なる技術ねぇ。心中で独りごちた要は、昔似たような技を教わった時の光景が蘇った
あの時も気づいたら空を見上げていたのだったか。たしか、相対していたのは――
同時に蘇ってきた痛みで現実へと引き戻された要は、続けて問うた。
「……その要様ってのは、何だよ」
「要様は要様ですが……何かお気に障りましたでしょうか」
そう言って、少女は首をかしげた。可愛らしい動作ではあるが、顔は能面を思わせる無表情のままだから、まるで機械仕掛けの人形のように見えた。




