探偵と屋根と少女と出逢い2-7
雑誌もあればホッチキスで綴じただけの書類もある。それらが層を成しているせいでほぼ床が見えないのがこの部屋の現状である。
掃除は二日前にしたばかりだ。なのに、どうしてこうなってしまっているのやら。
頭の片隅で考えながら、要はソファに腰を下ろす。ギシリとバネの軋む音がしたが、押し返される間隔は無い。見た目もそうだが中身も古いものだから、反発が弱くなっているのだろう。
机の上の、皿に載ったコーヒーカップに手を伸ばす。いつ出したかも分からないそれには、コーヒーの色が染みついてしまっていた。
それが自分用のだけなら兎も角、客用の物まで出しっぱなしだった。皿と組み合わせになっているちゃんとしたカップは、これら二組しかない。もしこれが駄目になれば、新しいのを買うまでは紙コップで応対しなきゃならない羽目になる。
それは要にとっては、考えたくない事態だった。客に対してそんな扱いをするなど非礼だし、何より格好が悪い。急いで洗わなければ。
事務所内で水の出る場所といえば小さな流ししかない。ついでに言えば、火も部屋の片隅の一口ガスコンロひとつでしか使えない。
だから。
そこでカップを洗おうと、要がソファから腰を浮かせたその瞬間――
轟音。
次いで、目を開けていられない程の量の埃が室内に舞い上がった。
「わぷっ⁉」
反射的に、要は腕で目を覆って守っていた。ぱらぱらと、何かの破片の当たる感触があった。
一体何が起こったのか、全く分からない。僅かだがゴミが入ったせいで、目が痛い。
擦って目のゴミを取る。これで見えるようにはなった。
――一体何が起こったんだ。爆発か? 隕石か?
未だ室内には埃が立ち込めている。
それを巻き起こした正体を確かめる為、要は視線をゆっくりと、音のした方へ移して、
「……」
そして、絶句した。
天井に大きな穴が空いていた――けれど、重要なのはそこではない。
テーブルが真っ二つに割れていた――けれど、重要なのはそこでもない。
重要なのは、無残な様相を呈している部屋のその中央に、見知らぬ少女がいたということだ