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チョコと銃  作者: 愚零
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~剣山 愚零~

~剣山 愚零~


ボクは寄り道が好きだ

真っ直ぐにしか行けない道の最後に着きたくないから

だから寄り道が好きだ




今日!好きな人が家に来るの!

さっき電話で「助けてほしい」って!

何があったのかな~ボクに何ができるのかな~?

ちゃんと掃除もしたし!紅茶も用意した!

好きな人が大好きなチョコも用意した!

これで大丈夫♪

久しぶりだな~元気かな~

早く来ないかな~



でも、そんな期待をいつも裏切ってくれるのが

ボクの好きな人なんだ

チャイムが鳴って玄関に行くと

好きな人は『試験体』を持ってきた

血だらけの汚い『試験体』

ただの『試験体』のはずなのに

何故か羨ましい



彼と出会ったのは、高校生の時だった


私はその頃『人間』とうまく話せなかった

『人間』は難しい、話しかけても嫌われてしまう

自分の好きな事を話しても伝わらない


そして、彼もそうだった

『人間』にどうやって接するのか分からなかったらしい

…いや、接し方は知っていた

からかってくる『人間』を暴力で接していた


私と彼に共通点があるとしたら


よく「心が無い」と言われる事だった



私の父は生物学の博士で

よく動物をバラバラにしていた


色んな事を知っている父に、私は憧れていた

他の人に自分の感じた気持ちを知ってもらおうとした

だから、私は動物を簡単にバラバラにする事を頑張った

父が良く動物をバラバラにしていたから

父はバラバラにする事で色んな事を知っているんだと思った



彼の父親は有名な極道の頭だった


いつも周りには彼の強さを試したい『人間』がいっぱい

倒した『人間』は全員

彼の部下になったらしい

喧嘩をして『人間』が自分の周りに居てくれる

それを知った彼は毎日喧嘩をしたらしい





ある日、ボクは『人間』を調べる事にした

どんな構造をしているのか


高校の図書室で『人間』を調べるために本を借りようとしたら

彼が自分の借りたい本を先に借りていた


どうしても借りたかったから

彼に話しかけた

これが彼との出会いだった


「その本をボクに譲ってもらえない?」

普段だったら

『人間』はボクを見て、青ざめた顔で逃げて行くはずなのに

彼は逃げるどころか、ボクに接近して来た


「俺を誰だと思って言っているんだ?

俺は『蝶月 陰光』(ちょうづき かげみつ)

苗字ぐらい知っているよな?」


蝶月・・・ボクは知らなかった

あとから知ったけど、日本最強と言われる極道が『蝶月組』

そして、その頭の息子が彼だった


「ボクの事は知っている?

『剣山 愚零』(けんざん グレイ)

『人間』から『殺人鬼』って言われているんだけど?

あ、一度も『人間』を殺したことはないよ」

ボクは首を傾けながら言った


でも、ボクの名前を言っても彼は逃げなかった

何でだろう?


「ああ、知っているさ

だからどうした?お前はただの『人間』だろ」


初めてだった。父さん以外にボクの事を『人間』と認識されていたのは


だからボクは彼に興味を持ったのだろう


彼の事を知るために毎日会いに行った

初めは無視されていたけど

会う度に「しつこい」って言われる仲になった

何週間か経つと話すようになった、何故か拳で

彼の拳は硬かったけど、避ければ全然痛くない


そうして何ヶ月間ずっと彼に会っていたら

普通に会話をするようになった

一番初めに話した事は『何で俺を怖がらない?』だった


話しかけてくれるようになった頃に

彼は自分の事を「博士」って言ってくれと言った

自分の本当の名前が嫌いらしい

ボクは彼に嫌われないなら全然良かった




博士君は『人間』を調べるために医者になることを決意した

ボクも彼を知るために医者になった


でも、博士君は学者になった

理由はボクが医者になれば自分がなる必要がないと思ったらしい

なら、ボクは彼に協力しよう

ボクの知っている知識全てを彼に伝えることにした


ボクは彼のために『試験体』を集めた

父は警察にも顔が利くので動かなくなった『試験体』は簡単に手に入った

ボクは何十体の『試験者』を見て『人間』を調べた





今回はボクに調べさせるために『試験体』を持ってきたんだろう

でも彼の持ってきた『試験体』なにかが違う

反応しないただの『試験体』なのに

血だらけで汚い『試験体』なのに

なんだか気になる


彼はこの『試験体』をチョコと名づけていた

チョコをスキャンして頭の状況を知りたいから

ボクの家に来たらしい


ボクは嫌々引き受けた

この『試験体』はなんか違う気がした

博士君が初めて自分で持ってきた『試験体』


…でもスキャンしてやっと違う理由が分かった♪


「今なんて言った?」


ソファーに座っていた博士君はまるで今聞いたことを否定するように言った

「だ~か~ら~このチョコって言う『試験体』は博士君が作ったんでしょ?」


2人の間に沈黙だけが続く・・・


博士君は必死に声をこらえているみたい

涙を流して、顔を真っ赤にして必死に何かを呟いている


必死に否定し続けている


ボクは・・・ただ博士君を見ているだけ

なんでだろう?

博士君が作った『試験体』なのに・・・なんで博士君は否定しているんだろう


この『試験体』は、表面の皮と臓器などは人間の部分が多いが

動物の肉も使われている

ぞう、キリン、サイ・・・これ一体で動物園ができるんじゃないの?って

思うほどの数が、この『試験体』に入っている

頭には電気信号を送り出す機械らしきものがあって

その中で、見たことのない銃弾でチップが壊されている

この『試験体』は全てチップで制御されているみたい

そんなの誰が見たって分かる

こんな『試験体』を作れるのは博士君ぐらいだ・・・


「ねぇ、なんで泣いているの?この『試験体』は直せるでしょ?

頭の中のチップが破損しているだけで・・・私はどんな作りなのか知らないけど

見た限りそうだと思う、違うの?」


博士君はその言葉に驚いていた

急に立ち上がりボクの方を向いた


違うのかな?と、言おうとした時

いきなり博士君が喋り始めた


「それは本当か!?チョコはまだ間に合うのか!!」


ボクは少し驚いたけど


…まぁ、元気になったから良いか♪


「そうだよ♪まぁ、仮説だけど・・・博士君の方が詳しいんじゃ…」

「なら、チップを復元しよう!」


博士君はボクの言葉は耳に入らないみたいだった

声、聞いてないのかな?


「まずは・・・研究所に行って・・・あ、愚零?手伝ってくれるか?」

「う、うん♪良いよ~」


なんだろう…

まぁ、良いか




それから、『試験体』を運ぶ時もずっと博士君は独り言している

博士君の研究所に着いたら

何かに憑かれたように博士君は計算をはじめた


ボクに話しかける言葉は

「この肉は、なんの動物?」「コーヒー作って」「ちょっと、どいて」

これだけだった


この研究には、博士君の一番弟子「木泥きでい しん

とボクと博士君の3人でやることになった


ほとんど無言でボクは『試験体』の肉体作りに専念している

2人はチップの復元・電源の作成に専念している


肉体はほぼできたが『血』に使われていたのは無限に分裂する微生物だったから

増やすのに力を入れている

ここまで計算されている大掛かりな『人形』は初めてだ

ほとんどが新しい

『血』に使われていた、微生物は人間の血とほぼ同じ役目をしている

すこし違うのは、その微生物は永遠に分裂していること

その代わり、微生物の寿命は30分だった

きっかり30分…まるで作られた生き物だ




チップの復元は2人にとっては簡単みたいだった


でも、チップの中にはとんでもない物があった

操作プログラム、感情プログラム、記憶プログラムと

戦闘プログラム、殺人プログラム、と色々な兵器のデータがあった

8割が見た事もない精密な計算式で構成されていて

2割は、もはやSFの話の一部だ


チップの中にあったデータを見れば『試験体』全てが分かった

その中でもっとも驚いたものは

絶対に朽ちる事のない体、記憶の取り方、タイムトラベル

この三つは現代には存在するはずがない話だった



その事が分かった瞬間

木泥が作業を中止するよう博士君に頼んでいた


木泥が博士君に話があると言ってむりやり止めたから

博士君は少し不機嫌だった

しかも、ボクは邪魔だからと言って追い出された

いったい何を話しているんだろう?


30分後、コーヒーを飲む事しかなかったボクは話の内容がどうしても気になったので

ちょっと盗み聞きすることにした

ドアに耳を付けるだけだから全然聞こえなかったけど

少し聞こえたのは

「これは、大発見なんですよ!不死の人間が作れる!!!」

という、木泥の大きい声だけだった


そして

気になって仕方ないから

そろそろドアを壊そうとしていたら、やっと2人が出てきた

博士君は変わらず不機嫌だったけど


「愚零、始めるぞ」

博士君のその言葉でボクはまた動くのであった



それから・・・作業の合間に木泥に呼ばれるようになった

「お前と俺が組めば博士をこえられるぞ!」と、話しかけてくるだけだけど

正直、こいついつか解体してやると思っていた

博士君じゃないのに話しかけてくるし、うるさい

変な夢ばかり見ている

博士君をこえるばっか言っているから一回解体しようと思ったら

博士君が「まだダメだ」と言っているからしないだけで

許可さえあればいつでもホルマリン漬けにしてどっからあんな言葉がでるのか調べるのに


『試験体』がもう少しで完成する時にまた話かけられた

また、同じ内容だったら、博士君を無視して解体しようと心に決めた


「愚零、俺と手は組めないのか?」


またそんな話か

「ボクは組まない、あと呼び捨てするな」


大体この後に博士君の事をこえると言うのだろう


ボクはいつも隠しているメスと準備していつでも切れるようにしていた


でも

今日は違った

「あの『試験体』の事、知っているのか?」

ボクはいきなりの質問で驚いた

「知らないけど…なんで?」

「なんで、博士が死んだ『試験体』をわざわざ愚零の家に持っていったと思う?」

「調べたかったんじゃない?」


木泥はため息をしながら頭をかいていた

「しょうがないな、教えてあげるよ・・・『試験体』あれは博士の彼女だ」


・・・え?

「なに、愚零だって考えれば分かるだろ?博士が『試験体』を元の体で復元させようと思うか?

もっと使いやすい体にして軍に売りこんだほうが良いに決まっているだろ?」


嘘でしょ


「博士君は・・・ボクの事を頼りにしていたもん!あんな『試験体』よりボクの方が」

「は?何言っているんだ?愚零は良いように使われているだけだぞ?」

「え・・・嘘だ」

ボクは立ってられなくなった

博士君は、初めて人間扱いしてくれた

だから、ずっと博士君のためだけに頑張ってきた


ボクは走った、走るしかなかった

その話から逃げるように

その話を聞かないように

信じたくなかったから



博士君からメールがきた

昔だったら喜ぶのに

なんでだろう

涙しかでなかった

メールの内容は『ついに、完成したから、来れないか?』

昔なら・・・本当に喜んでいた

メールも全然してくれなかった

博士君は、今はしてくれている

涙が出ている・・・嬉しいはずなのに


そうだ!博士君が喜んでいるならそれで良いと思っていたはずだ!

今、博士君は、ボクが頑張ったから喜んでいるんだ!!

利用なんて・・・されていない!ボクからしたんだ!!!

だ、だから・・・お願いだから、涙を流すのをやめて

ボクの体・・・

これじゃ・・・博士君の所に行けないじゃんか!


早く行かないと、博士君が折角呼んでくれているんだから



でも、笑顔の博士君はいなかった

博士君は横に倒れていて

そこには起動していて博士君の首を泣きながらつかんでいた『試験体』と木泥がいた




博士君に近づいて

試験体をどかした

力がない博士君の手首を掴んだ

予想道理・・・でも信じたくない

博士君はすでに死んでいる

死因は窒息死


まだそんなに時間は経ってないはずだ…

今なら助けられるかもしれない!

急いで博士君を運ぼうとしたら

それを木泥が止めようとして僕の腕を握ってきた


「おいおい、目の前に俺がいるのに話しかけもしないのか?」

「あんた、ボクを止めているその手、切っても良いよね?」


木泥の手が一瞬緩む

いつもならもう握ってこないはずの手が

また握ってきた


「愚零、聞いてくれ!俺とおまえが組めば博士を超えられる!!」




「…は?何言ってんの?ふざけないでくれないかな…博士君を超えられるはずないじゃん

勝手に自信つけないで

あんたなんかカスなんだからさ

消えろよ」


「…愚零はただ使われているだけだろ!!!

俺はそんなひどい事しない!

お前のことが好きだか…」


もう解体してもいいよね?博士君


木泥の首をメスで切り

木泥が血を止めようとして動かした手の指を全て切断した


「や…やめて…く…」

ついでに口を開けて舌を切った


ああ、ゴミができちゃった…

あ、もともとか



その光景を見ていた『試験体』は

ただ、泣いているだけだった



博士君を手術しようとしたら…遅かった事に気がついた

分かっていた、でもボクはずっと手術していた

脳以外の全ての臓器を変えたり

電気ショックをずっとしてみた…

でも、博士君の心臓は動かない


こんなに近くにいるのに

こんなに触っているのに

なんでだろ

また涙が邪魔してくる

博士君が死ぬはずがない

博士君は…ボクの大切な人なのに

なんで死なないといけないの?


こんな運命間違っている



ボクは思い出した

『試験体』の中のデータに

タイムトラベルがあった

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