~博士~
~博士~
なんでだろう
面白くない人生を、ただ真っ直ぐ歩いていたはずなのに、寄り道をしていた。
~1週間前~
実家からアパートに帰る途中だった
何事もなく、どうでもいいような会話をしたぐらいでつまらない1日だ・・・
マンションに着くと、管理人が居たので軽い挨拶をし、自分の部屋に行く
「ただいま~」
俺はドアを開けながら誰もいない部屋に向かって言った
その声は、誰もいない部屋に響いてすぐに消えるはずだった
だが今日は違った
「お帰りなさい」
…ん?
声のする方に目を向けると
そこには、制服の上にエプロンを付け
両手に銃を持っている女がいた
…確かに機関銃を持っている
制服姿の女は見たことはあるけれど
それはテレビの中であり、エプロン姿ではない
「何で無言なのよ!普通驚くところでしょ!」
おかえりなさいの次って・・・確か
『ごはんにする?お風呂?』とかだと思っていたが違ったんだな~
とりあえず謎の生命体Xの問いかけに答えることにした
「いや、充分驚いている…なんでエプロン?」
「そこかよ!」
突っ込みが早いな
なんでか知らんが、女は顔が真っ赤になっている
「ま、コレ食って落ち着け」
俺は言いながら所持していたチョコを渡そうとポケットから取り出した
「あ、ありがとう…っておい!
『なんで見知らぬ女があなたの部屋に居るのか』とか!
他に言う事無いの!?」
あ、確かにそれもあったな
「まず落ち着け、チョコには色々と良いことがあるぞ
人を落ち着かせることができる」
女はそのまま黙ってしまった・・・
何か間違った事でもしたかな?
はぁ~
「驚いたぞ、本当に…
ただ人間は驚きすぎると落ち着くと…思うんだ」
女は顔をこちらに向けた
女は泣いていた
なんで泣くんだ?
「だってぇ!あなた…前と違う反応だから!…ま、前だったら驚いて…」
…母さん、父さん大変です
僕は自称見知らぬ女と知り合いでした
どこかで俺は頭を打ったらしいです
記憶がありません
女は大きな涙を散らしながら俺に顔を向けた
「あ…もしかして」
「なになに!?やっと思い出したの!!」
女は期待で目が輝いていた
眩しい…
「言いにくいが、酒の勢いで一発やっちまって…
すまん責任はとるからさ…」
「とらなくていいから!」
即答された
「俺をそんな軽い男だと思っているのか…
かなりひどいプレイを…」
「そ、そんなことやっていないから!…もしかして女の子とそんなことをした事あるの!?」
「いや無い」
女はまた大きな涙を作り始めた
まったく女の気持ちはわからん
「よし分かった、俺に記憶がない!」
「自信満々に言わないでよ!」
ですよね~
また、女は泣きそうになった
う~ん、どうすればいいんだ?
「…すまん、だが知らない事はしょうがないだろ?
一応名前ぐらい教えろよ、思い出すかもしれないだろ」
女は少し考えていた
そして口を開いた
「名前はないの…でもあだ名ならあるわ。チョコよ」
…チョコ、名前の前にあだ名を教えてもらうことなんて、無いな初めての展開だ
こういう時はどうすればいいんだろ?
とりあえず、俺はリビングに無言で歩いて
机にあるパソコンを立ち上げた
「なんでパソコンやるのよ!?」
なんか一番まともな反応がきた
「こういう時は、どうすればいいか検索しようと思って…」
「とりあえずやめてくれない?悲しくなるから…」
女…いや、チョコは暗い顔になってしまった
俺は女心が分からないらしいな
…女心の勉強でもするか
あ、重要な事聞くの忘れていた
「質問いいか?」
チョコは小さく頷いた
「チョコは何処で寝るんだ?」
「…まずなんで泊まることになるの?
そして、このタイミングで言うこと?しかも、寝るの前提なのね」
ヤバイまた泣かせたかな?
「あなたは変わらないんだね…」
『え?今なんて言った?』って言おうとしたら
「ココはダメなの?」
という、質問がきたので言えなかった
…でも、意外な答えだな
「別にいいが、ベッドは一つだぞ?それでもいいなら」
「寝れたら何処でもいいから」
…今日俺はベッドで寝れないだろうな
その時、俺の腹が鳴った
そういえば帰ってから何も食べていない
「お腹減ったの!?」
その音を聞いただけなのに
ハイテンションな答えがきた
チョコは、待ってました!みたいに俺を見る
「料理作ったよ!一緒に食べよ!」
あ、だからエプロンなんだな
博士は服装の一つだけ理解できた
チョコはそのまま台所の奥に行ってしまった
さてと、チョコはいったい何者だ?
勝手に家に入れるから、スペアキーを持っているのだろう
と言うことは、かなり密接な関係なのだろう
しかも、俺の昔のことを知っているような口振りだった
でも、記憶が無い
大切な記憶っぽいがいっさい無い
そんな事を考えていたら
なんだろう・・・なんか大変な事になっていた
それは、チョコは俺の目の前に
作ったのだろう
いや、錬金術でもしたのだろう
なんかゴホゴホ鳴っている赤い液体の収まった皿を置いた…
恐る恐る聞いてみた
「これはなんですか?」
「チャーハンだけど?」
チャーハンってドロドロしていたか?
視線を感じそっちに目を向ける
チョコが早く食べるのを待っているようだ
そして、目が異常にキラキラしていた
「チョコの事、知りたいから自己紹介してくれ」
俺は目の前にあるチャーハン?を無視して聞いた
「別にいいよ」と言いながら、
チャーハン?をスプーンですくい俺の口の前に持ってきた
それを俺は海老反りの形で避ける
「詳しくは、言えないけど…
私はあなたの作る人型生物兵器のデータを抹消する事が役目なの…」
「…え?」
俺が不覚にも開けてしまった口にチャーハン?
いや、レッドキラーを目にも止まらない早さで口に放り込んだ
「うぉ~!?」
口の中で弾けた・・・だと・・・
「食べた感想は?」
「甘い…これチョコだよな」
チョコでした
臭いは違う中華っぽいが確かにチョコだ
「あなたの好きな食べ物は把握済みなんだからね!」
チョコは胸を張って自信満々で言った
「味は確かにチョコだが、なんでこんな事になった?」
チョコは鼻を鳴らし堂々と言った
「それはね、元々の食材がチョコじゃないから!」
…そうだと思っていたさ
「チョコだけだと体に悪いと思うから、私が必死に作ってあげたの!スゴイでしょ!」
スゴイ…
「確かに凄いぞ、どうやって俺の好きな食べ物を調べた?」
「そこかい!!もっと違うところツッコめ!」
チョコは俺に指差して幼稚園の音楽発表会みたいに元気な声を出していた
「あ、さっき俺が人型生物兵器を作っていると言ったが、
俺はまだそんな物を作り上げた事はないぞ?」
「スルーかよ!えぇっと…
人型生物兵器は作るという情報を聞いたの!悪い!?」
…と、言うことは
なんでこんなに俺の事、知っているのか分かった
「どこのまわし者だ?確かに俺は生物学の研究をやっているが
そんな事一度も聞いた事がない。
後、俺はそんな研究を任される程えらくはない」
「いやっ…だから…その……」
チョコは黙ってしまったが
また喋り始めた
「な、なんでもいいでしょ!?
とにかくあなたは人型生物兵器を作る事になるの!分かった!?」
…俺はどうやら分からないといけないらしい
チョコと言うこの女がスパイだとは思わないし
まぁ・・・良いか
「一応だが俺は『あなた』と言う名前じゃない
あだ名は…博士だ」
「なんで名前じゃないの!」
「君だってあだ名じゃないか、
お互い様だよ」
「だから…私には名前は…」
チョコはそのまま下を向いた
「俺は名前なんてどうでもいい、名前なんて飾りにすぎない
それよりチョコは、無いデータをどうやって抹消するんだ?」
チョコは少し考えて言った
「時がくれば分かる事だし、もし作らないと知れば帰るわよ!」
その期間を限定はできないらしいな
俺はチョコが作ってくれた
チャーハン?を食べ始めた
絶対、虫歯にならないチョコだな
「なぁ、飯も食った事だし、銭湯に行こうか?」
俺は食器を片付けながら言った
「私はいいわ、銭湯嫌いだから」
「でも、ここには風呂ないぞ?」
チョコは驚きを隠せないらしいだって目を丸くしているから
「なんで無いの!?一応研究者でしょ!」
「いや~金はあるが、駅から近いのここしかないから、
後、研究者は全員豪華な暮らしではないよ」
「分かったわよ!銭湯に行けばいいんでしょ!!」
お、物分かり早くなったな
「銭湯にコインランドリーが、あるから着替え持って行こう」
チョコは下を向いてしまった
なんだ女は?
下を向く癖でもあるのか?
「あの…言いにくいんだけど……私、着替えが無いの」
「…取って来いよ、家から、もしかして遠いのか?
心配するな、タクシー代払えるから」
「家は…かなり離れているから
取ってこれないの!」
チョコは顔赤らめて言った
そんなに恥ずかしいか?
「チョコ…もっと考えて行動しろよ…」
「しょうがないでしょ!
時間の歪みで正確な時間に飛べなかったんだから!」
…たまに変な話が出てくるけど小説の読みすぎだと思う
「大丈夫だ、途中で買ってやるから」
そう言って自分の着替えを取りに行った
~自主規制タイム~
それから何事も無く家に帰った
普通は何かあると思うが本当に何もなかった
だが、家に帰るとチョコが真剣な眼差しで、俺に話しかけてきた
「やっぱり私ダメだわ、あな… 博士に隠し事できない…」
ちょっと暗い表情でチョコは言った
今、俺の事を博士って言った?
まぁいいか
「何のことだ?」
俺は答えたが
チョコは迷っているみたいだ
だって唸りながら考えている
「また後でにしよう、眠いから」
「まだ9時だよ!?」
チョコは今日買ったばかりの
ジャージを着ていた、かなり似合っている
「俺は眠い時に寝るんだ、悪いか?」
「悪くは無いけど…私の話聞かなくいいの?」
また下を向いてしまった
「チョコは悩んでいるっていうことは、本当に言いたい事なのか?」
「早めに知った方がいいと思って…」
「いいよ、悩んで言う事なんてろくな事じゃないし」
「あと…」
「あと?」
チョコは首をかしげて言った
「内容が告白だったら、どうしたらいいか分からんからな」
本当は違う何か嫌な事だと思うからだ
「こっ告白なんて!だっ誰が博士なんかにするか!!」
うわ~かなり傷ついた~
それでも゛あんた゛ではなく”博士”なんだ
「私もう寝る!」
チョコはそう言うとベッド
目がけて小走りで行った
「お休み」
チョコとの生活はこうして始まった
そして一週間経った今
俺はチョコと普通の生活をしている
相変わらずチョコの料理は大体チョコ味だ
世間では俺達を恋人だと思うだろう
だが恋人と違うところがある
それは、デートをしないのだ
いや、恋人が必ずしもデートに行くものではないな
恋人ではないが、チョコは外に出たくないのだ
どこのニートだ
外に出る理由は、風呂ぐらいだ
俺は何度か外に出るように誘ったが
”「嫌よ!疲れるだけだから!」”
の一点張り…
そして一週間が経った
チョコの言う人間型生物兵器の研究はいまだにない
本当にそんな研究あるのか?
ただでさえ生物兵器はウイルスが資力なのに何故、人間型生物兵器なんだ?
…まったく
「なぁ、今日の飯は何だ?」
俺はいつものように話しかけた
「チャーハン」
チョコは無表情で答えた
つまらないな…
…よし
「外行くぞ」と言って俺はチョコの手を握った
「いっいきなり何するの!?」
チョコは凄い力で俺の手を払った
「何って、別にいいだろ?」
首を傾げて言ってみた
「もう一週間だぞ、流石に長すぎだろ?
いまだに人間型生物兵器の話なんてこないし
後、ちょっとぐらい外に出ろ体に悪いから」
チョコは大きく息を吸った
「あのねぇ~…むぐっ!?」
俺はチョコの口を手で塞いだ
大体チョコが言うことは長いからな
俺はそのままチョコを無理やり外に連れ出した
鍵を掛けるの忘れたが別にいいか
チョコは欲しい物を買ってもらえない子供みたいに俺の腕の中で暴れていた
歩きながらは、かなり邪魔なので
俺は肩に担ぐ事にした。
そしたら塞いでいた口が封印の解けた怪物みたいに暴れ始めた
「博士!?いきなりなにするのよ!まだ晩御飯の準備できていないのに!
それに全然化粧していないし!それと格好!」
あ、そういえばチョコの服…
初めて会った時と同じ制服の上にエプロンの姿だった
「飯は外で食うし、格好は面白いし、化粧無くても可愛いと思うぞ?」
チョコは俺の肩で顔を真っ赤にしていた
「降ろして」
チョコは小さい声で言った
「ん?なんで?」
「恥ずかしいでしょ!」
まぁ・・・そうだろうな
「すまん、ちゃんと着替えれば良かったな」
「担がれている方がよっぽど恥ずかしいわよ!!」
チョコは俺より小さい手で力無き抗議をしてきた
「チョコ…絶対にアパートに帰るだろ?」
「あたりまえでしよ!?」
即答だな
ま、あたりまえか
「覚えているか?前にチョコが言っていた言葉」
チョコは小さい抗議を止めてこちらを見ていた
「俺が生物兵器を作らないなら、家に帰るんだろ?」
「えぇっと…それは…」
チョコは何か考えているようだ
「思い出の一つぐらい作らないと面白くないだろ?」
チョコは黙ったままだ
そして諦めたように言った
「わっ分かったから、降ろしてくれない?」
俺は言われたようにチョコを降ろした
そしてチョコは俺に向き合って少し微笑むと
俺の鳩尾にその小さい拳をおもいっきりめり込ませた
簡単に言うと殴った
「レディーにあんな醜態さらしてタダですむなら、
ぼったくりバァーはないんですよ、博士」
チョコはニコニコしていた
俺は痛みに負け倒れた
「ちょっ!博士大丈夫!?」
殴った本人が言うことか?
「大丈夫じゃない…結構ヤバイかもしれない」
そう言いながら俺は立ち上がった
かなり痛かった
本当に女だよな?
2人に気まずい空間ができそうになって慌てて話題を考えた
「そ、それよりチョコは何処に行きたい?」
チョコは少し考えていた
そして、分からないがなんか
もじもじしながら言った
「今日だけ彼氏になってくれませんか!!」
「熱ある?」
「ない!」
…えぇっと…展開早いというか・・・今日だけ彼氏か・・・う~ん
どうする?俺
チョコは熱でもあるんじゃないか、と疑うぐらい顔を赤らめていた
長い沈黙が続いてしまった…
「あの…彼氏ができた時の…
よっ予行練習だからね!?かっか勘違いしないでね!!」
あ、なるほど予行練習か
「1日ぐらいならいいぞ、俺も予行練習は…のわっ!!」
バタッ!
言った瞬間、チョコが俺に抱きついてきた
そして、その勢いに負け、そのまま後ろに倒れてしまった
不意打ちかよ!
「やったー!ねぇねぇこれから何処に行くの?」
いや…さっき何処に行くか聞いたよね?
チョコは俺の上で、元気に暴れていた
「元気なのはいいが、いきなりタックルはないだろ?
さっさと降りてくれ」
チョコは少し残念そうに俺の上から降りてくれた
「はぁ~、どこに行くの?」
チョコは頭をかきながら言った
「そうだな町にでも行こう、デートなんだし、
なんか食いたい物とかあるか?」
「う~ん、チョコかな?」
いつも食べていないか・・・それ
「チョコはいつも食べているだろ・・・服でも買いにいくか?」
「いいわよ♪博士が選ぶならどこでも行く!」
…テンション高いな今日は
とにかく、町に行こう
そしたら、いきなりチョコが腕を掴んできた
「ほら。さっさと行くよ♪」
そう言いながらチョコは腕を掴んだまま走っり始めた
「おいおい、町はどこにも行かないぞ?」
「いいの!」
?
前にもこんな感じの事なかったか?
なんか何かを忘れているような気がするんだが
だが、時は止まらない
チョコは
50メートルを全力で走る俺のスピードで、走るので、
街に着いたら、今にも倒れそうになっていた
足はすこし震えてきた
「どこにあるの?洋服屋は?」
「ハァハァ…ちょっと休ませろ…」
「博士体力無さすぎ~」
…ちょっと運動しようかな?
「さてと、銀行に行くぞ」
「なんで!?デートなのに!?」
「金を用意してなかった、しょうがないだろ」
「なんで無理やり外に出した!」
そうでしたね
「とにかく行くぞ」といいながら俺は銀行に足を向ける
「最初の場所が…銀行って…」
チョコはぶつぶつ言いながらも付いてくる
俺はとりあえず銀行に入り、金を引き出していた
50万ぐらいあればいいよな
外に出てチョコを探していたら
チョコの周りに不良らしき人達がいた
帰っていいかな?完全死亡フラグじゃないか?
展開がまるでドラマだ
嫌な予感がしてきた
「あ、博士!この若い人が美味しい店を知っているんだって!
一緒に行こうよ!」
チョコ…そんなに輝いた目で俺を見ないでくれ…
今どき珍しいナンパだなっていうか
チョコの姿は制服にエプロンだろ?なんでチョコを選んだ?
・・・人間の行動は分からん
「あ、すいません。これから、行く所あるんで…おい、チョコ行くぞ」
俺はそのまま、チョコの手を掴んで歩き出そうしていたら
不良4人の真ん中あたりにいる背は小さいが、
いかにも声がデカそうな奴が俺の前で”ここから絶対に通さないぞ”
と体で表現していた
「ちょっと待ってくださいよ~僕達はチョコさんと遊びたいんですよ~
あなたは帰ってもいいけどチョコさんは置いて行ってください~なんてな!あははは」
不良が笑って話かけてきた…めんど
チョコは目をキョロキョロしながら俺と不良を見ていた
・・・あぁ、早く帰りたい
「人に頼むならば、もっとちゃんとした方がいいと思いますけど」
俺がせっかく教えようとしたら
格好からして不良のボス?が喋り始めた
「俺達は説教を聞きに来たんじゃないわけよ?さっさと帰れ!
帰らないと・・・殺すよ?」
不良はポケットから、見つかれば警察に歓迎されるぐらいのサバイバルナイフを取り出した
・・・嫌な予感をしなければ良かった
これからどうすればいいんだ?まったく思いつかない
いや、思いついたさ
死亡フラグだけど
「博士に何するのよ!」
それはチョコの声だった。
チョコは不良の持っているナイフを見てもまったく怖くないらしいな
「あなたがナイフなら私は・・・」
チョコはスカートの下の方から中に手を突っ込んだ
もぞもぞ
「あれ?取りにくいんだけど・・・」
もぞもぞもぞ
チョコの手はだんだんスカートを上がっていく
「もうちょっと・・・上に・・・もっと奥かな?・・・」
チョコの手がもう少しで中が見えそうな位置にきた時
興奮状態の不良2人がケータイを構えて、
低い体勢のまま走ってくる
「チョコさんの神秘を撮ってやる!」
不良の一人がそう叫ぶと
不良2人はそのままスライディングの体勢に
「・・・って、させるか!」
とりあえず、がんばって不良のケータイを二つ蹴り飛ばした
諦めな、神秘は撮っていけないんだ・・・
だが、不良2人はポケットからデジカメを取り出した、だと!?
「さらば!ケータイ!」と泣きながらチョコの方に・・・
「な!?お前らそこまでして!
でもな、世の中には見てはいけないのもあるんだ!」
空中で元気に飛んでいたケータイをつかみ、彼らに投げた!
「ぐはっ!」
「うぐ・・・」
2人の勇者が腹を抱え、
ズサァアアアアアアアア・・・・・・バタッ
勢いついたスライデェングの体勢がくずれ、派手に転んでしまった
なんかすまんな
「・・・・・・」
不良達の時が止まった
「あ!やっと取れた!」
チョコはさっき起こった出来事を認識してないみたいだ
ま、たった十秒ぐらいの出来事だったから、
スカートに集中していたチョコは分からないか
「あなたがナイフなら私はこれよ!・・・って、
二人減っているじゃない!?」
チョコは会った時に持っていたモデルガンを構えながら
キョロキョロといなくなった不良二人を探していた
実際はいなくなったのではない
現在、彼らはチョコの後ろの方で腹を抱えて
ずっとうずくまっているのだから
教えないでいいよな?めんどくさいし
「チョコ、モデルガンを構えても可愛いだけだぞ?」
チョコの顔が一気に赤くなった
なぜ?
「モッモデルガンじゃないもん!銃だよ!」
チョコは銃で撃つモーションをし始めた
「凄い銃なんだよ!?もともとからサイレンサーの効果付いているし!
2キロ先の物だって当てられるんだよ!?」
・・・そんなに必死にならなくても
「そうか、そうか、凄いなそのモデルガン」
「銃よ!」
「そんなモデルガン持っていたら危険だ。俺に預けなさい」
「銃じゃーーー!」
「チョコを守りたいから俺に貸してくれないか?」
「分かった・・・ちゃんと守ってね♪」
チョコはモデルガンを差し出した
まさかあんな言葉で貸すんだな、チョコ…なんかごめん
「おい!何いちゃいちゃしてんだ!?
俺の後輩達にケータイ投げやがって!お前体操選手か?」
ナイフを持っていた不良がなんか話かけて来た
「いや~小さい頃によく喧嘩していたから、その影響ですね」
とりあえず事実だけを話す
ナイフを持った不良は大きく深呼吸して
「んなわけあるか!」と周囲400メートルまで届く声で叫んだ
はっきり言って、うるさいだけだ
チョコは、あまりにも大きい声だったのだろう
なんかフラフラしてる
「そんなに大きな声で否定しなくても大丈夫ですよ、
ちゃんと聞こえますから」
「黙れ!」
いや、あんたの方がうるさいし
「どんなに強くても、ナイフを持っている俺の方が強いんだよ!」
不良はナイフを向けて突撃の体制になる
「別に俺は強くないよ、君達が弱いだけだから」
「お前、うざいんだよ!」不良は全力で走った
…チョコに向かって!?
「人質がいれば、俺達の方が強いんだよ!」
ぐさ
「おいおい、いくら単細胞な脳だからとしても、人質に突撃はおかしくないか?」
「おい・・・お前なんで避けないんだよ!」不良は叫ぶ
「避けれるはずないじゃないか」
「博士・・・大丈夫なの?」
チョコは俺の後ろにいた、良かった
「ああ、痛いなコレはでも大丈夫」
俺はナイフの刺さっている左手を見ながら言った
「チョコは怪我してないんだろ?」
「な!?なに言ってのよ!」
チョコは顔を赤面していた、面白いな~
「お前!病院行った方がいいぞ!」
不良がなんか心配そうだった
刺した本人ですよね?
でも、マジ痛いぞこれは!
これ抜いたら・・・血がやばいよな?
とりあえず、抜くことにした
ぐちゃ・・・ぐちゃ・・・なかなか抜けないな
「おい!やめたほうがいいぞ!」
「そうよ!やめたほうがいいよ!」
不良とチョコが青ざめた顔で喋りかけてきた
「ああ、ちょっと待て・・・(ぐちゃ、ぐちゃ)
今抜けそうなんだ(ぐちゃ・・ぬちゃ)」
やっと抜けた時には、チョコは目を手で隠していた
なんの遊びだろう?
「俺は・・・いつもやっているように
脅すだけだったのに・・・」
不意にナイフを持っていた不良が一人言のように喋っていた
もう一人の不良とさっきまで倒れていた二人はもういないんだな
「じゃ~今度は俺の番だな」
「え?」
不良は驚いているようだ
「人の手にナイフ刺したくせに何もないはずないでしょ」
俺は血が滴るナイフを向けて言った
「ちょっと待て!お前が前に出たからだろ!」
「刺したのお前だろ」
「いや、そうだが、とりあえず病院いけ!」
「あとで行く、それにやり返すのが俺だし」
不良は腰を抜かし、その場で倒れてしまった
「待って!頼むから!」ああ、うざくなってきた
「慰謝料は払うから!」よく喚く不良だな
俺はナイフを高く上げた
「はぁ~、お前、俺に言った言葉覚えているか?」
「え・・・」
「”お前うざいんだよ!”だ!」
俺は不良の首に向けてナイフを構え
そして、ゆっくり歩いた
「クックソがぁああああああああああああ!!!」
「何でも言え、今から喋らないようにしてやるよ」
不良に近づき、首を切ろうとした
その時
チョコが抱きついてきた
「博士!私を見て!!」
俺はチョコの方を見た
チョコは涙を流しながら俺を見ていた、
泣かせてしまった
「う、うわぁあああああ!!!」
さっきまで喚いていた不良は叫びながら走って逃げていく
今ならナイフを投げて当たる位置だが
何故か投げられない…
ああ、チョコが泣いている…
俺は彼女と思い出を作るために町に来たのに…
こんな思い出はダメだな
「ごめん、チョコ・・・俺は彼氏失格だな」
頭を撫でてみる、すると
チョコは目の辺りを腕でこすった。
どうやら涙を拭ったらしい
「・・・そうよ!彼女を泣かせるなんて、最低の彼氏よ!バカ!」
チョコは泣くのを止め、いつもの調子に戻っていた
「あははは、本番だったら絶対に別れるな」
チョコは静かになってしまった
また、泣かせたかな?と、思っていると
チョコはじっと俺の左手を見ながら言った。
「は、博士、手が」
「ん?」
俺は左手を見た
ナイフが刺さっていた手から豪快に血が出ていた
「あ、これか?」
チョコは無言でうなずいた。
「多分…ダメだな」
「えええ!?」
「いや大丈夫だよ、俺は生物学者だよ?
こんなの糸と縫い針があればすぐに直せるさ」
「ダメ!病院に行くの!!」
その後、俺は意識が朦朧としている中
それに気づかないチョコに引き回され、
意識が飛ぶ一歩前でなんとか病院を見つけた
そして
応急処置が終わる頃には夕方になってしまった
はぁ~
本当だったら、チョコと一緒にデートの
予行練習しているはずなのに…
しかも、夕方になるまで待たせるなんて…
ひどい思い出だな。
チョコは病院のロビーで待っていた
「あ、ごっめ~ん待った?」
「・・・・・・・・」
おかしいな、漫画ではこんな感じだったような気がするんだが、
やはり謝る場面なのかこれは。
いや、でも謝ったよな。ごっめ~んって
俺は何も反応しないチョコにもう一回声をかけようとした時
何故反応がないのか気づいた。
チョコはよく見ると寝ていた。
どうしよう?
恋人たちは寝ている相手に腕枕か膝枕をするようだが、
座って寝ている相手にはどっちをやるべきなんだ?
俺的には膝枕の方がうまくできそうな気がするが
漫画では女の子がしていた気がする。
いや、もしかしたら男がやっても成立するのではないか?
いわゆるギャップ萌えってやつだ。
俺はチョコの隣に座ると、起こさないようにしながら
膝枕をしてみた。
意外に暇だな。
つん
(あ、以外にやわらかいんだな。)
つん、つんつん
つんつんつんつんつんつんつんぐりぐりぐりぐり・・・・・
「・・・は~か~せ~?」
ん?
「あ、すまん。起こしてしまったな」
「何でほっぺた触っているの?」
「やわらかそうだった、現にやわらかかったぞ
・・・って、うぉばぁまぁっ!!」
俺は顔面を殴られた勢いで壁に頭をぶつけた。
「何やってんのよ!」
チョコの叫びが頭に響く
「いふぁ~、やふぁらふぁかふぉうだっふぁから
(いや~、やわらかそうだったから)」
俺は鼻を押さえながら、チョコの追撃を避ける。
「あ、ふぇも、予行練習だから大丈夫さ」
「ほとんど本番じゃないの!」
「え?本番はベッドでするものじゃなかったのか?」
「博士・・・殴らせてくれる?」
チョコが殴る構えをした!
「待て!今のは冗談だ」
チョコはゆっくりと殴る構えを止めてくれた。
そして赤面しながらも、
チョコはしゃべりだした。
「デートの本番は・・・キスよ!」
・・・
「な、何で黙るのよ」
チョコは俯いて、しかしチラチラと俺を見ながら言った。
「いやぁ~積極的だな」
言い終わるか終わらないうちにきた
チョコの鉄拳を避けるはめになった
あぁ、女は分からん
「なぁーチョコ」
「ん?なに博士」
病院からの帰り道
俺はこのままで一日を終わらせていいものか考えていたら、
いい感じの公園が目に留まった。
「デートの続きをしよう」
「にゃっ!?」
「あぁ、正式名称は“デートの予行練習”だ」
「はぁ~」
チョコは一旦肺から息を出し、その分をすぅっと吸い出した。
俺はチョコの口を片手で止める。
「んぐぅっ・・・!?」
「待て、漫画ではこのタイミングじゃない」
「なんのタイミングじゃー!!」
チョコは俺の手を払い、
欲しいものを買ってもらえない子供のように喋った。
「告白だろ?」
「博士は自分の左手の状況を知って、それを言ってるの?」
「チョコは最後が病院で終わるデートが好きなのか?」
「好きだと思う?でも、今日は休んだ方が・・・」
チョコの視線が俺の左手に向かれていた
なんだそんな事か
「俺も好きじゃないし、チョコの思い出に病院エンドのデートではなく
ちゃんとした、二人だけの記憶を残したい・・・ダメか?」
チョコは顔を真っ赤にして、手をバタバタと動かしていた
「はっ博士がそんなに言うなら、べっ別にいいけど!」
「けど?」
「早く済まして帰るからね!」
まぁ、何で叫ぶのか分からんが・・・別にいいか
俺とチョコは公園内にあるベンチに座った
辺りは少し暗くなっていて、なんか無駄にいいシチュエーションをかもし出している
とりあえず、早く済まそう
「よし、キスしようか」
「なんで!?」
ん?変な事言ったかな?
「分かった、言い直そう“接吻しよう”」
「そこじゃなくて!なんでいきなりキスなのよ!」
「早く済ますんだろ?」
「早すぎよ!」
そうなのかな?
「大丈夫だ、ディープはしない」
「だ~か~ら~」
チョコは静かに拳を作った
その後、殴られると思い構えていたら、
チョコは殴らず静かに拳を下ろしてくれた
そして、チョコは静かに目を閉じ
頬を赤めながら俺に顔を向けた
「何をしているんだ?」
「待っているのよ!」
「何をだ?」
「・・・っだ・か・ら!」
チョコはうつむき
そして、ゆっくりと顔を上げた
「キスを待っているのよ!?分かったならさっさとしなさいよ!」
「あ、キスを待ってたのか。」
俺はチョコの肩を掴み、ピタッと動きを止める。
そういえば・・・
チョコって結構可愛いんだな。
俺は何故か戸惑っているチョコの動きを止めるように
そっと頬にキスをした。
「は、博士」
あれ?
チョコはもじもじしながら俺を見上げる。
なんだ?俺は何か間違えたのか?
チョコは唇を指差しながら
「もう一回、こっここ今度はここにし、
ててくれないですかっこのやろう!」
・・・お願い(?)とダメ出しをされた!?
「いや、これは予行だし・・・・本番は取って置いた方が」
「今でいいの!!」
泣きそうに必死になっている。
と言うかすでに涙目だ。
「私にとっては、これが“本番”なの!今じゃないとダメなの!!
頭良いくせに無茶して、イラつくくらい鈍感で、
こんなこと言っても全然わけわかんないんでしょうけど、
私は、そんな博士が・・・・・・すっ」
「俺もチョコが好きだ」
それは、恋人達がする“触れ合うだけのキス”だった。
静かに流れる時間の中で
俺とチョコはキスをした
この日が俺の人生の転機だと思った
もし、チョコとの生活が一生続けば、俺の生活に悲しいという言葉は生まれないだろう
ただ触れ合っているだけなのに長い時間が流れ
互いに確かめ合うようにゆっくりと触れ合った
その時
チョコの顔が激しく揺れた
俺は驚いて
そして、チョコを見た
男として倒れないように支えるべきだろう
でも
俺は支えようとしなかった。
「チョコ?」
チョコは静かに倒れ
今まで感じていたものが一瞬にして消えてしまい・・・
何をすれば分からなかった
何を考えればいいのか分からなくなった
ただ、静かに倒れるのを見るしかなかった
静かに倒れたチョコの周りには真っ赤な水溜りと
真っ赤に染まった俺の人生があった