第1.2話
(10月1日、学校が攻撃を受けた。訪れた平穏、だがそれは一時のことに過ぎなかったのだ。争いが争いを呼ぶrevenge tragedyが幕をあける!)
・・・その日は学校が休校となった。
下校時の通学路、誠吾と静流は高鍋の町の中心から周辺の地区へ自転車で帰宅する。
「っかしなんだよ・・・隣町との戦争が終わってまだ本調子じゃねぇって時に」。
苛立ちを隠せない表情の誠吾。
「ええ、何にしろ“宣戦布告 ”なしに不意打ちなだなんて、許されない行為よっ・・・」
静流は怒りを押し殺した調子で返事する。
「まぁ、俺は静流が無事ならいいんだけど。」気を紛らわせた風に誠吾がぼやく。
「ありがとう、でも私だけ生きてもしょうがないわよ。誠吾達も生きてもらわなきゃ・・・。今日のアレで2、3人逃げ遅れてしまったクラスメイトがいる様だし、早く犯人か原因でも分かれば・・・。」やはり怒りを抑えるのに精一杯の静流。
「・・・。」黙る誠吾。
次の日、学校が再開し、昨日の事件再発防止のため、それぞれの学年ごとに高鍋町の各施設にて授業を再開するのであった。
「昨日の一件により、私のクラス生徒3名が・・・。」
静流と誠吾のクラスの先生が重々しく自身担当の生徒の死を告げる。
「この一件の首謀者は、昨日急遽行われた町会議による結果・・・。数ヶ月前の戦いの残党勢力が強く予想される!私自身、自分の教え子が殉死した以上、一人の人間としてこの事態に徹底的に対峙していくつもりだ!だが、まずはこれ以上君たちに危険が及ばないよう周囲への警戒を強化していく。これから一時は訓練授業ばかりになってしまうと思うが最後に自分を守れるのは自分しかいないからな。ではこれからの予定と日報を・・・・・・」
朝のホームルーム後、戸惑いの雰囲気が隠せないようで、クラスメイト達のざわめき声が聞こえる。
「おい、新富の町長が確保されて戦争は高鍋が勝ったんじゃないのか?」
「いや、話によると新富は一部反発していた一派が前々からいたらしい。多分そいつらだろう。」
「だが、国内法の条令により町長とか村長が捕まったらそこで戦いは終了だろうが。」
「まぁそうだけどよ。百人が百人とも(はいそうですか)っていうわけねぇよ。そんな奴らがやったんだろ。」
「確かに戦時の虜囚の取扱いや敗戦国民の人権に関する慣習を守らない奴らもいるっちゃいるけどさぁ流石にこれはねぇよ。」
「どうせ弾薬が尽きるまで戦って降伏するんだろうなぁ。しかも今は俺たち非戦闘員なんだぜ。」
2人の男子クラスメイトが話している。
「よお、お真面目なお二人さん。」そこに誠吾が割り込む。
「おい誠吾、お前は前線に出ていたんだよな」
「おお、そうだけど・・・ってお前らは前線に出てないのか?」
「俺らは後方に回されたんだよ。」
「嘘つけえ、お前らはどうせ訓練成績が悪いとか頑張って学科の成績を上げて後方に回るようにしたんだろうが」
「ハハハ・・・まぁね。」
「まぁ、それはさておき。お前が前線に出ていたあの時にはもう町長は確保されていたんだよな。」
「ああ、報告にはそう書いてあったけど。でもまだ諦めてねえ馬鹿な奴らもいてさ。静流に腕刺しやがって。」
「お前ほんと静流静流だな。もの好きだよなぁ~~。」
「うるせぇ!・・・まぁ、色々あったんだよアイツにも・・・。」
静流はクラスで一人浮いた存在である。大体の女性は戦争時には救護班にいくか後方に回されるのがほとんどである。しかし彼女は自ら進んで前線へ希望したのである。そのせいで女の子でも体は常に傷だらけ。
痛々しい十字傷が顔などにあると日常の場には中々馴染めないということである。それでもクラスの女子達は難なく静流に話しかけたりと普通に会話してくれているのである。(男子ではどうしても気まずくなってしまう)
「ほんと、クラスに恵まれたよ。じゃないと俺だってなぁ・・。」
「ははは。」
こうして話している間も彼らの表情はわずかに哀しみを含んでいた。
このような事態が起こる事は予想していた。しかし思った以上に今回の惨劇は彼らの心を摩耗させていた。
しかし彼らはまだ知らない。
この後どのような歴史の変遷に巻き込まれ、翻弄されていくかということを。