~序章~【pandemonium】
「きゃあぁぁぁぁああああああああああああああああああああ!」
一人の少女が叫ぶ
ここは日本の数ある都道府県の中の宮崎県・・・の高鍋と呼ばれる町。
その少女がなぜ叫んでいるのかというとそこが戦場だからである。
そして敵に腕を刺されたからだ。カランビットナイフ。
敵が構える得物、屈曲したそれには幾つもの返しがついていた。
前腕を抉られたらしい。
ドクドクと血が流れ、深く刺されたようで腕がうまく動かない。敵はナイフを保持したまま銃を抜き、さらに追い討ちをかけようと左手で遊底を引き照準を合わせた。
もうダメかと少女が目をつぶった刹那―。
ドスッ!!
敵は腹部を銃剣で刺され、地面にうずくまっていた。
「おいおい、無茶すんなよ静流!」
ひとりの青年が声をかけてくる。どうやらその少女の名前は静流でその仲間が助けてくれたらしい。
「くぅぅぅぅぅうぅっ!った~~~~~~~いっ!!早く助けなさいよ!バカぁ!」
「そんなに喋れる余裕あるなら早く後退しろ!」
「分かってるわよ!」
青年に止血バンドを渡され、少女は必死に腕を押さえながらその場を青年に任せて後退していった。
「静流を傷つけるやつは俺が許さねぇ!」
青年は既に息絶えていた敵の腹部に刺さっていた銃剣を引き抜き、突き進んでいった。
それから数日後、戦いは終わり、高鍋に平穏が戻る。
高鍋のとある高校の昼休み、静流と青年が戯れている。
青年はコンビニで買ったおにぎりをむさぼりながら
「お前それ何個目の傷だよ。女なんだからせめて戦うなら救助班とかに・・・」
「私の事、知ってるでしょ?」
「・・・。」
少年は黙ってしまった。
「で、でもなぁ・・・」
「・・・言われなくても、分かってるわよ・・・」
「・・・ならいいんだけどよ。でも、絶対ムチャすんなよ!?・・・じゃないと俺・・・」
「もう、これ何度目の会話??」
「す、すまん・・・。」
高校生の会話とは思えない話。
そう言う彼の腕や顔には様々な傷があるが、少女のそれには及ばなかった。
先日刺された腕には包帯が巻かれ見ているだけでも痛々しい。
だが、それ以上に彼女の顔には大きな十字傷、首には火傷の跡、刺されたものとは逆の腕には銃弾の撃ち込まれた跡などその体は惨烈な傷ばかりであった。
「私だって戦いたくないわよ・・・」
今日も少女は寂しく呟くのであった―――――――――――
―― 硝煙立ち込める2○○○年、日本、明日を保障されない彼らは今を生き続ける ――
プロローグ ~序章~ 【pandemonium】