第3話 才能(遥視点)
副所長さんの説明によれば、適性検査は筆記と実技、面接によって行われるらしい。 就活ではなく、ただのバイトにしては厳しいようにも感じたけれど、それは研究熱心さから来ているのだと思う。
とか言って、実は適性もない人に、高い時給を払いたくないだけなのかも知れないけれど。
ちなみに説明は短めで、すぐ用紙が配られ始めた。
どんな問題が出されるのかと身構えたけど、案に相違して、それは問題の答えを書く物ではなかった。
例えるなら、小学校でやった知能テストを複雑にしたような…。 言われた通り、大学での知識などまるで必要としない物だった。
それを見て、私はちょっとだけにやけてしまった。
周囲から『趣味は受験勉強』なんて言われたりして、勝手に勤勉タイプとされているあたしだったけれど、実は、こういう反復作業のようなテストは大の得意。
子供の頃から悪い評価を貰った事はないのよね。
遥「では、適性検査を始めるっ!」
開始を告げる声が辺りに響いた…。
【2】
テストの大半を終えてみると、自分達に何が求められているか、何となくではあるが分かってきた気がする。
発想の柔軟性と意外性、あとは根気だろうか?
同じ作業を延々と繰り返させる設問などは、まさにその典型かも知れない。
そう言えば、新作ゲームのテストプレイは、バグがないかどうか、延々と同じ作業を繰り返すと聞いた事がある。 『壁をキャラが突き抜けないか?』とか、ごくごく当たり前の事を…。
遥「ふむ…。 なかなか優秀だな」
不意に声をかけられ、ビクっとなった。
遥「ああ、別に私語をしたからと言って、失格にしたりはしない。 だいたい、君の解答はもう終わってしまっているじゃないか」
意外な笑顔に、また不意を突かれた。
祐希「…あ、ありがとうございます」
遥「君とは良い仕事ができそうだ。 正式な結果が出ていないから断言はできないが、そうなる気がする」
言われたあたしは、顔が紅潮するのを感じていた。
なにしろそれは、自分が副所長さんに、先を見込まれた事を意味するのだから…。