第2話 適性(祐希視点)
私は、集まった応募者の顔ぶれを見渡した。 若い、大学生がほとんどのようだ。
まあ、最初からそれが狙いで、学生の夏休みの時期に募集をかけたのだから、当たり前と言えば、当たり前なのだが。
中年や高齢者でもできない仕事ではないが、機械が苦手ではマズいし、思考に柔軟さも求められる。 携帯の使い方に四苦八苦するような化石人間など、問題外のさらに外だ。
遥「ああ、楽にしてくれていい。 さっき美海所長より紹介のあった、副所長の源だ。 副所長と言っても、一般所員より給料は1割程しか高くない」
私の冗談に、周りの空気が少しだけ和むのが分かった。
ざっくばらんな話し方もあるのかも知れない。 学生相手ならこのくらいがちょうどいいと、私は経験で知っていた。
遥「それでさっそくだが、これから適性検査を受けてもらう。
検査と言っても、大学の講義と違って、既存の知識はいらない物だから安心してくれ。 ただ、諸君らの頭の柔軟さと、センスを調べさせてもらうだけだ」
私の言葉に、応募者達はざわつき出した。 彼らにしてみれば、この適性テスト次第で時給が大きく変わるのだから、無理もないか。
遥「繰り返すが、従来の知識など必要としてはいない。 また、難しいものでもない。
ただし残念ながら、生まれつきこの仕事に向かない者がいるのも事実だ。 その際は誠に申し訳ないが、速やかにお引き取り願いたい。
結論から言うと、SSSからEまであるランクのうち、Cより下になってしまった者だ」
私の読みでは、若い学生なら、かなりの割合で機器には慣れてくれるだろうと思っていた。
だが、ただ慣れて貰うだけでは高い給料を払う価値はない。 募集したのは、研究の最終仕上げに携わるテストスタッフであり、一般ユーザーではないのだから。
ましてや、美海の希望するフェイズ6ともなれば、最低でもAAA以上の適正がほしいところなのだ。
厳しい言い方をした事に、我ながら心が痛まないでもなかったが、そこは仕事と割り切ってもらうしかないだろう。
そして、実のところ私は『フェイズ6以上の適性者は、見つからなくても良い』と思っていた。
急ぐ研究でもないし、商品化の目処はまったく立っていない。 断り切れずにテストの実施までは承諾したが、適性者が見つからなければ、これ以上美海を傷つけずに、研究を一時中断できる…。