第23話 これから(美海視点)
美海「お疲れさま~」
祐希&遥「お疲れさまで~す」
軽く乾杯した。 フェイズ7成功の記念と慰労? みたいな感じで、私は祐希ちゃんを食事に誘ったんだ。
美海「伊織君は来ないんだ~?」
遥「残念か?」
遥が言う。
う~ん。 あの後遥には、みんな白状させられちゃったしな~。 ちょっと苦笑い。
祐希「『休みにまで職場に来れるか!』だそうですよ? 意外と薄情なヤツですよね」
遥「付き合いに薄情って、祐希は見た目に… …よってオヤジだよな」
祐希「ちょ、ちょっと遥さん?! あたしが年齢不相応なのは認めますけど! 何ですか? その見た目によっててのは~」
言葉はこうだが、口調は笑っている。
美海「遥は皮肉屋さんだからね。 正しい日本語に翻訳すると
『祐希ちゃんはとっても可愛いのにもったいない』
って意味なんだよ~」
遥「なっ! 待て、美海。 私は、今そこまで言うつもりは!」
笑い合う3人。 こうしてると、なんか姉妹みたいって言ったらおこがましいかな?
美海「でもねぇ、祐希ちゃん。 遥ったら、まだ研究所じゃ
『美海所長、おはようございます』
から始まるんだよ? いい加減、正体バレてるんだし、気さくに振る舞えばいいのにさ~」
遥「正体がバレてるのは、お互い様じゃないんですか? 所長?」
遥が私の肩に絡みつく。 ひきつった笑いが、ちょっとだけ気持ち悪い。
祐希「とっても仲が良いんですね、お2人は」
そんなやり取りを見てか、祐希ちゃんが微笑ましげに言う。
美海「まあね。 遥はあたしが『ぜひに』って頼んで来てもらった敏腕さんなんだけど、いくら実力があっても、意志疎通がしっかりしてないと、仕事はうまくいかないから」
遥「美雨はちょっと、意志を疎通しすぎだがな?」
何か言いたい事があるのか、遥はいつもより濃いオーラを出している。
美雨「ところで」
さすがにしつこすぎるのも悪いと思って、私は違う話題を切り出した。
美海「ところで、あの架空世界の今後なんだけど、祐希ちゃんみたいな若いコから意見を聞いておきたいなって」
祐希「あ、あたしが研究について意見だなんて…」
アレ? 戸惑わせちゃったかな?
遥「祐希。 別に難しく考えなくていいんだ。 研究がどうって言うんじゃなくって
『あの世界を何に使ったら面白いそうか?』
ってだけだよ」
戸惑い察したのか、遥がフォローを入れてくれる。
遥「体感したから解っているとは思うが、あの架空世界では、大抵の人間の感覚は再現できる。
だが、漫然と再現しただけでは売り物にはならない。 どういった世界を作り出し、そこで何をするか、きちんとした目的がいる」
美海「そういうトコ、私は苦手なんだよね~」
研究する事は得意なんだけれど 『それをどう使うの?』 と言われれば、私にはさっぱりだった。
遥「私もいくつか考えてはいるんだが、やはり学生の方がそういった発想は、な」
う~ん。 遥でも苦労してるんだ…。
祐希「あたしも考えますけど、もっと適任なヤツもいますよ? 発想と言うか、思いつきで生きてるのが」
美海&遥「あ、そうか」
肝心な事を忘れていた。 私もまだ観察力が足らないなぁ~。
美海「じゃ、お願いできるかな? おおよそのプランを練ってもらえれば、具体的なデータ入力は私達がやるし、協力してくれる企業の開発担当さんにも、話を回せるかも知れないから」
祐希「分かりました。 やってみます」
力強く宣言する彼女に、私は先行きの明るさを感じていた…。