表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
Exchange Love  作者: まひ姉
21/36

第17話 かわりきれないモノ(祐希視点)

店員「いらっしゃいませ~」


そう言って店員さんが迎えてくれる。 だけどこれは、もちろん人間じゃない。



伊織「よくできてるなぁ~」


そう伊織… 見た目はあたしなんだけど… が呟く。


いわゆるNPC(ノンプレイヤーキャラクター)という人達で、あらかじめ命令された事しかできないはずだけれど、あたしが歩くと後をついて歩き、服を手に取ると何かしら反応がある。 まったくもって良くできていて、つい買い物も進んでしまう。




祐希「じゃあ、これください」




祐希「それから…」



伊織「…おい…」




祐希「これなんか?」


伊織「祐希さん?」




祐希「これ、可愛いかも~」


伊織「もしも~し… ってこら~!!」



祐希「…っ!!!


き… き… 急にどうしたんだい?」



『キャー』と言いかけて、なんとか思いとどまった。 いくら小柄な伊織とはいえ、見た目は男だから『キャー』はない。





伊織「2ついいか?」


祐希「…ど、どうぞ」


静かに詰め寄る伊織に、本能的に一歩下がってしまう。



伊織「まず祐希君。 君には反省という言葉がないのか?」


祐希「えっ?」



伊織「えっ? ではなぁ~い! 貴様、誰のせいでこんな逆転を続けるハメになったと思ってるんだ?」


伊織が視線を注ぐのは、あたしの持つカゴ一杯に入った服。




祐希「買いすぎかな?」


あたしは頭をポリポリ掻いた。




伊織「まあ、今の所この世界の中では、いくら買ってもリアルマネーはいらんからいいが…。 お前に反省とか後悔とか、教訓なんて言葉がないのはよく分かった」


祐希「あはは…」


思わず苦笑い。





伊織「そして、重大な事がもう1つある」


祐希「…ゴクリ…」




伊織「お前が選んでいるのは、なんで女物ばかりなんだぁ~!!!


お前は俺… いや、俺の身体を、女装させる気か~!!!」



伊織の絶叫が、店一杯に響き渡った…。






【2】



あたしは… つまり伊織の身体は、7分丈のパンツとTシャツにベスト。 それにキャップとスニーカーを合わせた。 全体的にはミリタリー調。


いつも通りのコーディネートにした訳だけど、それでOKサインが出てしまうあたりは、ちょっとだけ複雑かも。




伊織「じゃ、俺も」


そう言った伊織は、選んだ服を全部持って試着室へ…。




祐希「…ってて、いいい伊織?!」


あたしは思わず声を上げてしまった。 伊織が持っている服の中に、青地にレースの入った、ブラとショーツが見えたからだ。




伊織「どうした?」


祐希「あんたまさか、下着まで替えるの?」



伊織「だって汗だくだったし…。 まずいか?」


『まずいか?』って、まずくない訳ないじゃない。 下着なんか替えられたら…




祐希「…えちゃ…じゃ…」



伊織「ん?」



祐希「だから、下着なんか替えたら、あたしの裸が見えちゃうじゃん!」



伊織「ああ、そうか」


そうかじゃなくて。




伊織「でもこの身体、作り物だぞ? お前も俺も、研究所で裸になんかなってないだろ?」


『見せてないんだから、その部分は再現されていない』=『だから、そこだけはあたしじゃない』なんて言いたいらしいけど…。



伊織「しかし改めて考えると、質感や重量感はあるな。 女の胸って、付けるとこんな感じになるのか…」


そう言って伊織は、その身体の胸に何気なく触れた。



祐希「きゃ~! 変態っ!!」


あたしは大声をあげると、反射的に伊織に手を上げていた。






その途端、伊織の身体は目の前から消え、その直後にものすごい大きな音がした。 よく見ると、服を入れてあった棚が倒れてしまっていた。



祐希「い、いおり? 伊織?!」


うめいているだけで、返事がなかった。




祐希「…う… そ…  い、いや~~!!!」


叫んでいた。 頭が真っ白になり、何も考えられなくなった…。






【2】



祐希「う… うん…」


伊織「おい。 大丈夫か?」



祐希「…っつ… い、伊織?」



伊織「ようやく気がついたか。 まったく世話のやけるヤツだ」


祐希「…あたし…。 どうして?」


どうも記憶がはっきりしない。




伊織「教えてほしいか?」


祐希「え? う、うん」



伊織「と言うより、お前はアホかぁ~!!!」


耳元に伊織の絶叫がこだまする。



伊織「お前は今、男の身体なんだぞ?! 男が女を全力グーパンチで殴るか、普通。 それと!」


祐希「は、はいっ!」


背筋に電流が走った。



伊織「何で殴られた俺が、殴ったお前を介抱しなきゃならんのだ?! 取り乱しすぎだ!!」


ようやく記憶が鮮明になってきた。 たしかあたしは、伊織が胸を触ったの見て恥ずかしくなって…。



祐希「だって」


伊織「お前、何か隠して…」



祐希「…っ!!!」


言い訳しようとして、覗き込んでいた伊織と目が合った。 咄嗟に目を逸らす。あたしは顔を背けていた。





伊織「…いや、俺の気のせいだろう。 幸い、この世界ではダメージは蓄積しないらしい。 もう立てるんじゃないか?」


祐希「あ」


簡単に足に力が入った。 それを見て、伊織がふっと息を吐く。



伊織「もう1回だけ聞いておく。 帰らなくていいんだな?」


祐希「うん」


我ながら、弱々しい返事。



伊織「何を考えているかは知らんが、どうせなら楽しめ。 自分が他人になるなんて、滅多にない機会だろう?」


祐希「うん…」


あたしは何とか頷いた…。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ