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Exchange Love  作者: まひ姉
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第12話 面影(美海視点)

美海「どうかなどうかなぁ~」


私はわくわくしながら、今日の訓練の結果を見始めた。



遥「思ったより被験者達の適応は早い。 この調子なら、一般ユーザーへの発売も近いかも知れないな」


訓練全体を統轄していた遥が、おおよその感想を語った。


その実、私はあまり興味がないのだけれど、一般に販売できないような機器は、いずれ開発が続けられなくなってしまう。


私は研究自体が楽しいけれど、開発資金を出してくれている企業は違う。 結果を出さなければ、最悪、研究所を閉じる羽目になるから。




遥「美海に、お楽しみも用意してある」


意味ありげに微笑んだ遥は、さらなる映像を私に見せてくれた。



美海「おお~」


映し出された画面には、変てこな踊りらしきものを踊る少年と、本格的なダンスを踊る少女がいた。




美海「遥が教えたの?」


私はてっきり、遥が手取り足取り教えたのかと思ったんだけれど…。



遥「まさか。 ダンスはともかく、こっちを私が指導したとでも?」


遥は苦笑していた。



美海「って事は、1日目でもうこんなに自由に身体を操れてるのかぁ~」


私は、正直凄いと思っていた。 自分で開発した機器ではあるけど、短期間でこれだけ使いこなせる人がいるなんて、思ってなかったから。




美海「この2人が、遥お気に入りの天才と秀才?」


遥「そうだ。 興味が出てきたか?」


美海「もちろん。 直接会えるかな?」


私は、つい顔をほころばせながらそう言った。




遥「私から伝えておこう。 せっかくだから、所長面接なんて堅苦しいのじゃなく、外で食事でもしようじゃないか」


美海「わかってるぅ~」


私の反応を予想していたのだろう。 遥は、笑いながらそう言った…。






【2】



所変わって、研究所からほど近いレストラン。


私は、食事は研究の合間につまむだけの生活が多かったから、外食をした事はあまりなかった。 ここも研究所から近いから決めただけで、美味しいのかもよく分からない。




美海「そうだ先に… って、もしかして」


長い時間迷ってしまうといけないと思い、遥達の来る前にメニューを見ておこうとして気がついた。



美海「…メガネ、忘れたかも…」


バッグの中を探したけれど、メガネは見つからなかった。 そう言えば、自分の机に置いたままにしてきた気がする。



美海(…ま、いっか。 目を近づければ見えるし、柱や壁が見えないほど目が悪くもないし)



そう思う事にした。


仕事で画面を見るのなら、メガネがないとどうにもならないけれど、風景くらいは見える。 視力は0.5ぐらいで、実はそこまで困る程悪くない。






店員「お客様は3名様で…」


???「いや、先に1人来ているんだが」


店員「失礼いたしました」


そんなやり取りが聞こえた。 顔ははっきり見えないけれど、他にも2人伴っている。 彼らが、遥お気に入りの2人だろうか?




遥「待たせたな」


遥の口調は、プライベートのものだった。


どうやら彼らに対しても、仮面は被っていないらしい。 もうそれだけ打ち解けたって事で、それは何気に凄い事なんだけど。




美海「私も今来たところだから。 この2人が?」



祐希「今野 祐希です。 こうして直接ご挨拶するのは初めてですよね? よろしくお願いします」


確かに、言葉を交わすのは初めてだった。 顔ははっきりとは見えないけれど、けっこう背が高い、ショートカットの元気そうな女のコだろうか?。



伊織「…藤村 伊織だ」


これまた無愛想な…。 それとも、人見知りするタイプなのかなって思って、何気なく彼の方を見て、私は息を呑んだ。






美海「…ゆ  …う  …じ?!」



続けざま私は



ドンっ!



って音がするくらいの勢いでテーブルに両手をついて、イスから立ち上がってしまった。 そして顔を近づけ、食い入るようにその男の子の顔を見てしまう。




伊織「……?」


祐希「……??」


遥「………???」





遥「…美海、どうした?」


そう遥に言われて、やっと我に返った。


面影はある。 似てもいる。 でも、そこにいたのは…。




伊織「俺の顔になんかついてたか?」


声が違った。 髪型も。 ほくろの位置も。


当たり前の事だ…。




美海「…え、えと…  き、君があんまりイケメンだったから… つい」


私は苦しいとは分かりつつも、そう言って誤魔化した。



遥「……。


研究ばかりしているが、私達も女だからな? 研究所にも男はいるが、毎日顔を会わせているから、新鮮味がない」



何かを察してくれたのだろう。 遥は私の話を否定しなかった。


そんな遥に心の中で礼を言いつつ、冷静さを取り戻せた私は、イスに座り直し、メニューを手繰り寄せた。





遥「何でも注文していいぞ? ここは私が…」


伊織「そういう事なら!」


遥の奢り宣言に、その男の子は急に元気になったようだった。 その現金さに、少しだけ笑みが戻った。




遥「…で、こいつらだがな…」


幸いな事にそれ以上何もなく、普通の食事会になった。


伊織と呼ばれた男の子は、小柄ながら定食2つとデザートを食べきり、周りを大笑いさせた。


祐希ちゃんは、最後まで丁寧な食べ方を崩さなかったけれど、時折見せる笑顔が、遥だけでなく、私にも打ち解けつつある事を感じさせてくれた…。

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