登場人物紹介+プロローグ(伊織視点)
★登場人物紹介★
☆藤村 伊織
大学1年、19歳。 身長160.0cm、体重49.5kg。
小柄で名前が『伊織』である事から、男らしくないとよく言われる。 天才肌であり、閃きと直感で生きているような所があるが、興味のある事には努力もする。
気さくすぎる両親と、いおりんと呼ばれる事が大の苦手。 物語に登場しない姉『詩織』の影響で、ファッションセンスはなかなかのもので、元来は女性に優しい性格。
身長が実は159cmしかないとの噂があるが、本人は『絶対に160cmだ』と主張している。
☆今野 祐希☆(こんのゆき)
大学2年、20歳。 身長172cm、体重は秘密。 スリーサイズも秘密。
長身、中性的な出で立ちで、かつボーイッシュなコーディネートを好むため、男に見間違えられる事もしばしば。 けれど男装が趣味だとか、男に憧れている訳でけしてはなく、むしろ逆との噂も…。
ダンスに歌、作詞を得意とし、勉学にも秀でる才女だが、実は精神的に脆い面があり、ストレス解消のために浪費をしてしまう癖が璧に傷。
また、過去に心を深く切り裂かれる出来事を経験しており…。
☆牧原 美海
26才。 身長153cm、体重は秘密。 スリーサイズも秘密。
小柄、童顔、メガネの3点セットのためそうは見えにくいが、とある研究所の所長をしている。
自身も天才的な閃きの持ち主で、どことなく伊織に相通じる所もある。 三度の飯より研究が好きで、開発しても商品になりそうもない物まで作ってしまうのが、最大の弱点。
現在彼氏はいないようだが、募集している様子はない。
☆源 遥
29才、身長167センチ、体重48キロ。 スリーサイズは上から90、59、86。
美海が所長を務める研究所の副所長。
数年前に美海がヘッドハンティングしてきて以来、研究の片腕兼アドバイザー、営業部長etcと、実質的な研究所の取締役。
プライベートでは美海と親友であるものの、研究所では『美海所長』と呼び、懸命に一線を引こうとしている。 自身、不測の事態に弱い事は認めていて、仮面を被るのは、平静を装うためでもある。
性におおらかな発言が目立ち、純情な美海とはかなり印象が異なる。
美海同様、彼氏はいないらしいのだが、研究所の誰もが、彼女と関係を持った男を知らない…。
???「…じむら…」
???(あちぃ…)
???「…藤村。 夏休みのバイト、もう決めたか?」
???(だいたいエアコンが故障って何だよ。 壊れたんなら、講義も止めろよ…)
???「…って…。 お~い、伊織ちゃん」
???「い~おり~ん」
伊織「ふざけんな!」
俺は、反射的に拳を隣の男に叩き込んでいた。
???「ぐはっ! う、腕を上げたな」
伊織「いい加減にしないと、マジで怒るぞ」
俺は暑さから来る苛立ちもあって、かなり不機嫌だった。 だが、言われた当人に堪えた様子は微塵もない。
???「いや、せっかく愛しのいおりんが手を上げたんだ。 そこは、食らってやるのが礼儀…」
そう言い終わる前に、俺は無言で二撃目を放っていた。 だがそれは、軽く払いのけられてしまった。
???「…あ、すまん。 そこで連撃とは思わなかったから、つい」
言い遅れたが、そいつの名前は『橘 啓介』、自称、俺『藤村 伊織』の親友だ。
暑苦しいくらいの筋肉質で身長は180越え、空手か何かでも黒帯だった気がする。 何にしても、一般人の俺の攻撃など通じる相手じゃない。
これはいつものスキンシップなのだ。
伊織「…で、何か用か」
俺は不快さオーラをMAXで放出しながらも、ようやく啓介との会話に応じた。
啓介「本当に何も聞いてなかったのかよ。 愛しのいお…」
伊織「イスで殴るのと、ペンで刺すのと、どっちが好みだ?」
俺は啓介の言葉を途中で叩き切った。
啓介「わーたっよ。 相変わらず、こう呼ぶとキレやがるんだから…。
それはともかく、お前、夏休みのバイト先は決まってるのか?」
伊織「いや、まだ決まってない。 って言うか、働くのかよ…」
啓介「お前の事だから、そうに違いないと期待してたぜ。 これを見てくれ」
俺が『決まってない』まで言うと、啓介はバイト情報誌の1ページを押し付けてきた。 『働くのかよ』以下は聞く気がないようだ。
伊織「お前なぁ…」
そう言いながらも、仕方なく啓介が押しつけてきたバイト情報誌のページを眺める。
募集欄には
『力仕事は一切ありません。 寝ているだけで高収入!!』
と疑わしげな文句が書いてあった。
啓介「これ、どう思う?」
伊織「どうって」
啓介はそのまま、そのバイト先を熱心に説明し始めた。 どうやら1ヶ月の期間中、新型の機器の体験テストをする仕事らしい。
そして啓介は、とんでもないことを言い出した。
啓介「一緒に受けよう」
伊織「は???」
啓介「だってこれ、薬物依存、アレルギーがない方に限るとか、脳の病歴がある奴は不可とか…。 何かよく解らない事が書いてあるからよ。
1人じゃ、ちょっと怖いかなって」
…1人が怖いとは、まったくもってよく言ったものだ。 こんな脳筋大男、2回殺したって生きていそうだ。
薬物だか毒物だか知らないが、普通の人間の致死量の3倍や5倍でも平気じゃないのか?。
伊織「やなこった」
俺は、自称親友の頼みをいつものように袖にしようとしたが…。
啓介「そこをなんとか! 前のバイト、急にクビになって、今月マジでピンチなんだ。 神様仏様、藤村様っ!!」
理由は思いっきり自業自得なクセに、今日の啓介はかなりしつこかった。
伊織「うるさい」
俺は、ハエか何かでも追い払うように素っ気なく手を振ったが、啓介は諦める様子がない。
伊織「断る。 却下、拒否、拒絶、廃案」
啓介「そうすぐに冷たい事を言わないで、じっくり考えてくれよ!」
そう言うと啓介は、俺の鞄の中に無理矢理その情報誌をねじ込んで来た。
伊織「おい」
啓介「じゃあ、じっくり見といてくれ!」
勝手な事を言って、啓介の奴は席を立った。 いつの間にか講義は終わっていた。
伊織「…ったく…」
一瞬追いかけて突っ返そうとも考えたが、すぐに思い直した。 わざわざ返さなくても、ゴミ箱にでも捨ててしまえばいいじゃないか。
そう決めた俺は、啓介とのやり取りそのものを記憶から消去した…。