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俺が担任が嫌いなわけ

 廊下では吹奏楽部や合唱部などの美しくなる直前の決して聞いていて気持ちのいいものではない音が混ざり合っている。

「失礼します。矢浜先生いらっしゃいますか?」

 俺は職員室の扉をスライドさせ、中に入りながらそうやって確認を取る。

「うん?ああ伊瀬か。反省文出来たのか?ちょっと持って来い!」

 入り口近くの席から聞き覚えのある男口調が聞こえてくる。

 案の定それは矢浜。

 俺の担任こと矢浜理美は年がら年中白衣に身を包み、いかにも私理系ですけど何か?みたいなオーラを醸し出している。容姿的にはまあまあ。理科の教師としてはいまいち。担任としてはもはや論外である。

「なに突っ立てるんだ?早く持って来い!」

 眼鏡の奥から鋭い目で俺を睨みつけながら矢浜がそう言ってくる。

「え、あ、はい!あのこれです」

 俺は鞄をその場に置き、手に持っている反省文を矢浜に渡す。

 矢浜はそれを無言で受取り、目をすごい速さで動かしながら俺の反省文を読んで行く。

 こういう作文とか先生に読まれてるときって緊張するよね。

「伊瀬……質問したいのだがいいか?」

 矢浜は眼鏡を頭へと押し上げ、目をぐしぐしとやりながら呆れた声で言ってくる。

「いやだめですよ!質問もなにもそこに全ての真実が書かれてるじゃないですか!現実から目を背けないでください!」

 要約『現実逃避すんなよ!あんたは教師には向いてねえ!』

「では、命令させてもらおうか!私の質問に答えろ」

 眼鏡をつけなおし、俺をまたもや鋭い目で睨みつける。さっきと違う点はその目がいささか冷やかなことだ。

「何でも答えます……。どうぞ述べてください……」

 あまりの恐さに俺もしたでに出ざるおえない。

 何かこの迫力を有効活用できないもんかね?例えば女王様になってみるとか……

「なぜ私が悪い的な事を言っているんだ?これはつまり私もとい教師への線背布告だよな?」

 矢浜はそう言って俺の反省文を机の上の書類の山へと放り込む。

 おい!扱い雑すぎだろ!

「宣戦布告ではありませんよ。むしろ戦いはもう始まってます。俺はこれから帰ってどうやったらリア充せん滅できるか考えるんで帰らせてもらいます!」

 俺たちの戦いは終わらねえ!伊瀬先生の次回作にご期待ください。

 俺は回れ右をして、職員室の出口の方向を見る。

 だが、肩に反対側からの力がかかって上手く進めない。

「その戦いお前の負けだろ!この反省文に反省が書いてないわけをとりあえず聞いてやる。言ってみろ」

 矢浜は声に怒りを込めながら静かにそう言ってくる。

 あれれーおかしーなーうしろにはせんせーしかいないはずなのにさむけがするぞー

 俺は恐る恐る後ろを振り向きとびっきりの笑顔でこう答える。

「そ、そもそも俺が反省文提出しただけでもう反省してるわけですよ!それを見抜けないなんて先生もまだまだだなー。ははは……」

 笑顔がどんどん薄れて行き、背中にいやな汗が大量に流れる。

 あれ?今秋じゃなかったかなー?寒くて死にそうなんだけど……。

 矢浜は俺の言い分を静かに聞き、おもむろに口を開き始める。

「そういえば私は理科の教師だな。ということは塩酸、硫酸、その他もろもろの危険薬物を所持しているということだ。この意味わかるか?そろそろ私の堪忍袋の緒も切れるぞ?」

 矢浜の声は異様なほど冷静である。

 怒るときに冷静になる人ってむしろ怖いよねー

「せ、先生に堪忍袋があるってことがわかっただけでも、俺が放課後を返上してまでここに来たかいがありました。その重要な事をツイッターで拡散しないといけないので、俺そろそろ帰ります!」

 ぎこちなく回れ右をしようとする俺の肩に矢浜がそっと手を置く。

「お前のツイッターなんて誰もフォローしてないだろ?」

 矢浜の声が微妙に優しくなる。

 そこで優しくしてほしくねえよ!

 そして矢浜はこう続ける。

「私は前々から思っていたんだが、お前の思考の腐り具合は人間国宝級だと思っている。そんな貴重な人材を是非とも我が部活で保護したい」

 うわー俺褒められてるよー。褒められたの生れて初めてなんじゃない?

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