俺が青春が嫌いなわけ
俺は青春という言葉が嫌いだ。こんなことをいうのにもきちんと理由がある。
まず一つ青春とは不確定な要素が多すぎる。
青春を謳歌してる気になってる頭がちょっとあれなやつらに青春とは何かを問いただしてみたところで絶対にそれが何かはわからないだろう。なぜなら青春には実体がないのだから。そいつが青春だと思いこめば全ては青春のではないだろうか?逆に思いこまなければ青春ではないのではないだろうか?ギャルゲみたいに根暗なやつ春が来ることは現実世界ではありえないのだ!
次に俺はリア充じゃない!ここ重要!マーカーとか持ってたら、ライン引きして覚えとけ!絶対テストに出すぞ!まあ話しが脱線してしまったが、リア充と青春は水面下で深く強い結びつきを持っている。この要素が欠落している俺はいくら頑張っても青春などやって来ないのだ!例えば、例えばの話だ!昼休みに教室の隅っこで一人で飯を食ってる俺に「おーあいつ青春してるなー」とか思うか?思わないだろ!?
青春してるやつらは周りを気にしない!いつまでもどこまでも一直線なんだ!だから俺は青春が嫌いだ!その不確かな何かにしがみついてるやつらも嫌いだ!日本で殺人が許さていたのなら、俺は絶対にそいつらを皆殺しにする!
平日の放課後午後五時。俺こと伊瀬仁宮机に突っ伏していた。
というのも、数日前に書いた少し過激な作文が担任、矢浜理美の目に止まってしまったらしい。そのため俺は反省分と言う名のラブコールを浴びせられたわけだ。
秋も深まり日が落ちるのが早くなったためか、少しだけ教室に暗さが増している。
放課後の学校は部活にかまけてリアルを充実させているやつらの巣窟である。
俺みたいな帰宅部の非リア充は即刻退場すべきだろう。
退場したいのだが……。シャーペンがどうにも進まない。渡された反省文用の作文用紙は白紙そのものだ。そもそも反省文って言うネーミングセンスがそのまますぎてダメだと思う。もっとこう……俺の生きたしるしみたいなかっこいいやつないの?
カチカチカチ……。
シャーペンをプッシュする音が教室に虚しくこだまする。
そういえばなぜ学級委員長は俺が残ることを確認したにもかかわらず、電気を消して去ってしまったのだろう?何俺みんなに愛されてるの?
てか、そもそもなんで俺が放課後返上してまでこんなことしなきゃいけないの?
自由なテーマで作文書けって言ったのは矢浜だろ!ま、まさか……。作文と言うのは名目だけで、本当は犯罪予備軍をあぶり出すための犯罪予備軍チェッカーだったんじゃない!?
とかいうのはさておき、とりあえず反省文を少しでも書いておこう。
『反省文 伊瀬仁宮
そもそも反省文とはなんなのだろうか?反省文とは読んで字の通り反省を文で表したものだということは誰もが知っている世間一般の常識だ!だが、そもそも俺には反省すべき点が見当たらない。あのちょっと過激な作文は担任が自由なテーマで書けと言ったから書いたものである。要約すれば担任が悪いわけだ!だが、教師は俺が悪いだのなんだのと言い始め終いには反省文を書かせる始末。だから、言わせてもらおう、俺が悪いのではなく、教師いや、社会が悪いのだ!そして俺はその被害者だ!』
シャーペンで書く速度も上がって行き、ものの十数分で書きあげることができた。
まったく本気を出せばこんなもんだ。俺は普段本気を出していなだけなんだ。
そんなことを考えながら、俺は椅子から立ち上がり、机の上に散乱した消しカスなどを床へと落とし、鞄と反省文を持って職員室へと向かった。