皇太子エドワード─3歳児レオンに武器を与える─
拙いと思いますが、生暖かい気持ちでお願いします。
お待たせいたしました。
ひとときのほほんとよろしくお願いします。
不定期になりますが、のんびりお付き合い
いただければ幸いです( * ॑꒳ ॑*)
「ようこしょ、ん?そ!……えどわーど殿下、ボクは、レオンです♪」
小さな背筋をピンと伸ばし、レオンがエドワードの正面に立ちました。
ヴィクトールが「よし、上手く言えた」と安堵したのも束の間……。
レオンはふわりと両手を広げ、片足を斜め後ろに引くと、深く、深く膝を折りました。
カトリーヌが舞踏会で見せるような、一切の妥協がない完璧なカーテシーが、ふたたび登場したのです。
「…………っ!?」
エドワード皇太子の目の前から、突如レオンの姿が消えました。
まるで手品のようにストンと視界からいなくなったレオンに、エドワードは思わず椅子から腰を浮かせ、「はっ……!?」と声を漏らします。
大人が立ってちょうどいい高さの重厚なマホガニーの机が、そこにはありました……。
【凍りつく応接室】
まわりは一瞬にして静まり返りました。
ヴィクトール、カトリーヌは息を吸うのも忘れ、またまた目を見開いて固まります。
(机に隠れるとは……不敬?いや、……可愛いがすぎる……!)
ヴィクトールは、壊れました。
もうどうにでもなれ精神です。
冷たい沈黙が流れる中、机の向こう側からぽつりと可愛らしい声で言いました。
「……あえ? でんか? ……どこ? ボク、いない……?」
ピョコッと机の端から、不安げな顔を覗かせるレオン。
「ウンショしたら……でんか、消えたった」
しょんもりと斜め上の発言に、凍りついていた空気がパキパキと音を立てて崩れました。
「お、まえは……、消えたのは私ではなく、お前の方だろ。……それに、その挨拶は淑女のものだろう。なぜそれをやった?」
厳しく言おうとしましたが、机の下から見上げてくるレオンの瞳があまりに無垢で、つい口元が緩むのを必死に堪えます。
「えっ……? ねーたま、してゆ。キラキラ、カッコいい」
(まあ! カッコいいですって!……でもそれは女の子の挨拶なのよ。ああ、でもなんて愛らしいのかしら!)
レオンの応えに、カトリーヌは悶絶します。
レオンが首を傾げてそう言うと、ヴィクトールは膝から崩れ落ちそうになるのを、必死で堪えるしかありません。
「……も、申し訳ございません、殿下。また、私がお名前でご挨拶を言ったばかりに……」
これでは怒る事もできない……、完全に父ヴィクトールの不手際でした。
エドワードの口元には、日頃の冷徹さはなく、年相応の笑みを浮かべています。
最上の礼でもてなそうとするレオンの気持ちが嬉しいのです。
「でんか、ボク、つぎ消えないで、がんばる!」
「……いや、次は普通に頭を下げればいい。それ以上消えられたら、……心臓に悪い」
のほほんとしたレオンの様子に、エドワードの肩の力が抜けました。
部屋の片隅では、肩を落とすヴィクトールを、立ち直ったカトリーヌが慰めています。
─王宮の一室─
洗濯板や洗濯石鹸の訪問後、エドワード皇太子は小さな「賢者」をどう扱うべきか、人生で初めての難問でした。
叡智を持ちながら、柔らかな頬と短い手足を持つ、まだまだ可愛い三歳児。
先日のカーテシーは愛らしいけれど、間違いです。(100点満点だけど……)
この賢者を正しく世に出すためには、やはり最低限の「盾」となるマナーが必要!
「可愛いだけでは、いつか悪い大人に丸め込まれる」
3歳のレオンに、エドワードは「王族・貴族としての正しい礼」を授ける事にしました。
それが今回の訪問理由ですが、相手はムチムチの3歳児レオンです。
エドワードの理想とレオンの現実が、どうなるのかわかりません。
侯爵邸の庭園でエドワードは、ローズマリーを刺したまま眠そうにしているレオンを、花壇の縁に座らせ真剣な表情で向き合います。
特別講義:レオンのはじめての『ご挨拶』
エドワードは騎士のように背筋を伸ばしました。
「いいかレオン。挨拶とは、相手に『私はお前より上だ』、あるいは『私はお前の敬意に値する』と分からせるための武器だ。いくつか試してみるぞ」
「ボク、……こう、ちたの。……だめ?」
レオンが、泥んこのズボンの裾をちょこんとつまんで、カトリーヌの優雅なカーテシーを披露します。
それを見たエドワードは、あまりの愛らしさに天を仰ぎ、心臓を押さえました。
「レオン、それはカトリーヌの真似で淑女だ。君はかっこいい『騎士』にならないのか? 男はこうするんだ」
エドワードは自ら土の上に立ち、背筋をピンと伸ばして、右手を左胸に当て、スッと頭を下げてみせます。
「かっこいい……。……ボクも、しゅる!」
レオンは、今度は裾をつままず、小さな手を一生懸命に胸に当てます。
「……こう? ……えいっ!」
勢い余って、お辞儀というよりは「お辞儀の姿勢で固まる」ような形になりますが、エドワードはとりあえず拍手を送りました。
「レオン、挨拶には意味がある。一通りやってみよう」
1.騎士の礼(跪礼 - きれい)
「まずはこれだ。片膝をつき、胸に手を当てる。騎士が王に忠誠を誓う時の最も美しい形だ」
レオンの挑戦!
「んっしょ!あっ、へ?」
膝を勢いよく曲げたら、お尻の重みとお腹のまるみ?が邪魔をして、ゴロンと後ろに転がりました。
結果:ひっくり返って空を蹴るレオン。
「……お空……まわるぅの」
エドワードは頭を抱えます。
「……膝をつく前に、お尻が低すぎる。不採用だ」
2. 貴公子の会釈ボウ
「ならば立ったまま、腰を45度に曲げろ。手は横に!高貴な余裕を見せるんだ」
レオンの挑戦!
「ぺこー……」
レオンが勢いよく頭を下げると、そのまま頭の重さに引っ張られ、おでこが地面に「ゴン」とつきそうになり、四つん這いになりました。
結果:エドワードはため息をつきます。
「……それは礼ではなく、ただの観察だ」
3. 王族の「鷹揚な会釈」(ノッド)
「最後だ。王たるもの、深く頭を下げすぎてはならん。顎を引き、ゆっくりと一度だけ頷く。これだけで威厳が出る!」
レオンの挑戦!
エドワードを見上げて、コクン……。
次に……、大きなあくびをしながら、コクン……
結果:そのまま船を漕ぎ始めました。
そういえばお昼寝の時間です。
「……ねむねむ、なの」
エドワードの勝ち誇ったような威厳は、レオンの眠気という平和な空気にかき消されました。
「……ウン、やり方を変えるしかないな」
結果:3歳児の身体に挨拶は無理。
─更に数日後─
エドワード謹製:レオン専用
「対大人制圧用」礼法
エドワードはレオンに、普通の貴族の礼を教える事を諦め、「レオンの可愛いを最大効力の武器」にする事にしました。
1. 伝説の「こてん」会釈
エドワードが教えたのは、ただ頭を下げるのではなく、「首を30度ほど横に傾けながら、上目遣いで相手を見る」というテクニックです。
「いいかレオン、顎は引くんだ。でも目は離すな。そして相手が『うっ』となった瞬間に、ゆっくり瞬きをしろ」
「……こてん? め、ぱちぱち?」
結果: 教えたエドワード自身が、その破壊力で鼻血を出しそうになりました。
2. 裾掴みの「おねだり」礼
「挨拶の最後には、相手の袖か裾を指先で少しだけ摘まむ。これが『親愛の情』の表現だ」
……結果、どうなるか未知数です。
エドワードの狙い: これをされた大人は、「何でも買ってあげよう!」と言うはずだ!
3. 「はんぶんこ」の献上儀礼
手元にあるものを(たとえそれが食べかけでも)、両手で捧げ持って「……はい」と差し出す動作。
エドワードの狙い: 幼子が大人にやれば、彼らは幼子の言われるがままになるんだ。(つまり扱い易い)
レオンがこの「エドワード流・礼法」を披露した際、大人たちは戦慄するでしょう。
ヴィクトール: 「……背後に、教え込んだ『策士』の気配がします。……殿下、少しあちらでお話を聞かせていただけますか?」
エドワード: (視線を逸らしながら)「……フン、マナーを教えるのは王族の義務だ。私は何も間違ったことは教えていないぞ」
─数日後─
更に味をしめたエドワードは、レオン専用を仕込みます。
1. 「しーっ」のマナー(秘密保持)
「いいか、レオン。お前は少し無防備すぎる。美味しいものを作ったら、まず『誰に報告するか』を考えろ。大人に真っ先に教えるのは、羊の群れに狼を放つようなものだ」
「おおかみ……さん? がおー?」
「そうだ。がおーだ。だから何かできそうな時は、『しーっ』と言うんだ。これが王族の第一のマナー、『機密保持』だ」
エドワードは人差し指を口に当てて見せます。
レオンはそれを真似して、「しー……。おおかみ、こない?」と首を傾げました。
2. 「はんぶんこ」の盾(責任転嫁と保護)
「次に言葉だ。お前はいつも『みんなで』と言うが、それは隙を作る。これからはこう言え。『これは、エドにぃとの、約束なの』とな」
「やくそく……?」
「そうだ。そう言えば大人たちも、無理やり奪うことはない。私の名前を『盾』にするんだ。これが第二のマナー、『後ろ盾の活用』だ」
エドワードは、自分の胸を叩いて自信満々に教えます。レオンは「えどにぃ、盾……。かっこいいの!」と、キラキラした目で兄(?)を見上げました。
3. 必殺の「のほほん」スマイル(懐柔)
「そして最後だ。もし大人たちが怒ったり、詰め寄ってきたら……お前は何も言わずに、ただ『のほほん』と笑って、相手の服の裾を掴め。言葉は要らん、『あざとさ』こそが最大の攻撃マナーだ!」
そこへちょうどヴィクトールとカトリーヌが、レオンを探しにやってきました。
「殿下、レオンにまた変な……」と話かけたその時です。
レオンが教わったばかりのマナーを発動しました。
口元に指を当てて、「しーっ……」。
エドワードの陰に隠れて、「これ、えどにぃ、やくそく。……だめ、なの」。
そして、裾をぎゅっと掴んで、「のほほん」と首を傾げると……。
「「…………っ!!」」
ヴィクトールとカトリーヌは、あまりの可愛さと「皇太子との約束」という強力な盾の前に、一歩も動けなくなりました。
「カトリーヌ……、私たちは負けたようだ。レオンが、殿下に毒されている(知恵をつけている)……」
「殿下……。あの『しーっ』は、反則です……」
エドワードは背後で、勝ち誇ったように鼻を鳴らしました。
「見たか!これが『マナー』の力だ。わかったな、レオン」
崩れ落ちた二人を見て、エドワードは楽しそうに笑っています。
「……う?」
レオンは首を傾げて……。
何が起こったのかわかりません。
侯爵邸は今日も平和な一日のようです。
穏やかな風が、草花を優しく撫でるように吹き抜けていきました。
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エドワードにとってレオンは、うまれた時から成長を聞いている、かけがえのない存在でした。
王妃が、ヴァリエール侯爵家を通じて、レオンが誕生した瞬間から報告を受けています。
「エドワード、エレーナに天使が産まれたそうよ!」
「今日初めて寝返りをしたんですって。ふふふ、やんちゃになりそうだわ♪」
「もうスプーンを握れるらしいわ。将来が楽しみね♪」
いい事も悪い事も含めてエドワードは、レオンの事を聞いていました。
心の中にジレンマを抱える日々……。
他家の内情に、口出しは出来ないのです。
三月の少し冷たい風が吹く菜園……。
エドワードは、公務の合間を縫って(母上からの言いつけという名目で)、ヴァリエール邸を訪れます。
「レオン、……本当に、母上が仰った通りだ」
エドワードの目の前には、三歳になったレオンが、ブルーノと一緒にチョコチョコと土を混ぜています。小さな手は泥で真っ黒、でもその瞳は春の日差しを反射してキラキラと輝いていました。
「ブルーにょ、 つち、ふかふか……」
「はい、坊ちゃま。ふかふかですね」
感情を忘れた一匹狼――ブルーノのレオンに対する顔は、優しさと慈愛に満ちていました。
その光景にエドワードは驚きます。
今日ここへ来たのは、レオンがほしいと言ったりんごと桃の苗木を渡すためでした。
「……殿下」
頭を下げたブルーノは、レオンの様子を見て近づいて来ます。
「作業中すまないな。頼まれたりんごと桃の苗木だ」
「殿下自ら、申し訳ございません」
「いや、……大丈夫だ」
レオンは一生懸命に土をいじっていました。
「……あーやって一日中、やっていなさる」
「……そっか」
エドワードは侯爵一家を心配しつつ、レオンが健やかに過ごせるのか不安でした。
最悪引き取ろうかと思ったほどに……。
「殿下……、大丈夫です。レオン坊ちゃまは強いお方だ」
ブルーノの言葉を聞いたエドワードは、安心しながらも残念そうな顔をします。
一人っ子であるエドワードにとって、レオンは実の弟のように愛おしい存在でした。
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