王都民の噂話─貴族子供の謎─
拙いと思いますが、生暖かい気持ちでお願いします。
お待たせいたしました。
ひとときのほほんとよろしくお願いします。
不定期になりますが、のんびりお付き合い
いただければ幸いです( * ॑꒳ ॑*)
王都の広場や酒場ではある噂で盛りあがる。
彼らにとって雲の上の存在である王族や貴族の騒動は、格好の娯楽であり同時に「得体の知れないモノ」でもあります。
「おい、聞いたか? また侯爵家が発明?したらしいじゃねぇか。それも今度は三歳のお子様ってんだから、貴族の頭は次元が違うんだな」
「……とんでもない『代物』を作っちまったらしいな」
「あぁ、『ベタベタ』と『スベスベ』だろ? 騎士団の連中が腰を抜かして、青ざめたっていう」
暇を持て余した三歳のレオン様が、カトリーヌ様の研究材料を「おままごと」に使っただけ……、それらを適当にぶち込んで混ぜに混ぜ、こねくり回して遊んだ結果、生まれたものらしい。
「ガキってのは混ぜ混ぜ好きだからなぁ……」
「だよなぁ。俺も工房で混ぜじゃねぇけど、何でもかんでも袋に入れられた事があるぞ」
「俺はやっぱり混ぜだな。調味料でやられた」
そう考えれば、幼子のやらかしではよくある行動だ。
「それ考えると、やっぱり皇太子様に勝てる子供はいねぇよな」
かつて王都を震撼させた「真珠溶解事件」を覚えている者は少なくない。
幼少の皇太子エドワード様が、あろうことか王妃の耳飾りを好奇心から溶かしたあの一件だ。
真珠一粒の金額を聞いて、震えが上がったのは懐かしい思い出だ。
「真珠溶解事件か。ありゃあ凄かったな。王妃様の耳飾りの真珠を、酢の瓶に放り込んで溶かしちまったんだからな。あの時、皇太子様は笑って仰ったそうだぞ。『形があるから美しさに縛られる。溶かせば自由だ』なんてな……。ガキの言うことかよ、恐ろしい……」
「そう考えりゃあ、カトリーヌ様の石鹸も似たようなものかぁ。一応知識有りだからスゴい物が出来たみたいな……」
「レオン様はただ、ねぇちゃんの真似して、混ぜ混ぜしたんだろ。可愛いじゃねぇか」
考えなくても、やらかしをする土壌が出来ている。
最近あの皇太子様が、よく侯爵家に向かっていたし、レオン様の目の前には、たまたま材料があり、周りには皇太子やカトリーヌがいる訳だ。
「石鹸の材料だか泥だかを混ぜ合わせて、一度踏んだら二度と動けなくなる糊や、氷より滑る床か……」
「……だよな。だが、あの『真珠の溶解』を知ってる身からすりゃ、まぁ貴族のお子様だからって、妙に納得しちまうんだよ。無邪気な顔して、世界を形から変えちまう。……泥を捏ねてりゃ石鹸だぞ。レオン様のやらかしは、うちの子供と通じるもんがあるから可愛いもんだ」
「ははは! ……だが、あの『スベスベ』のせいで転んだ隣国の商人が、あまりの無様さに商談をフイにしたって話だ。偶然にしちゃあ、出来すぎてるよな。……ま、俺たちにゃ関係ねえ。精々、侯爵家の『お遊び』に巻き込まれて、怪我しねえように気をつけるこったな」
今まで培われた王族や貴族のやらかしが、レオンのやらかし(ベタベタやスベスベなど)を、オブラートに包んで可愛いで終了しました。
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【国王アルフレッド視点】
ある程度目処がたち、教会の件も含めてアルフレッドはヴィクトールのもとを訪ねました。
するとエドワードが教会の件と王妃を含めて、ヴィクトールに詳細を説明した事から、ただのお疲れ様会に変わりました。
出来た息子の采配にアルフレッドは感謝しつつ、酒を酌み交わし「未来」を語り合うことになりました。
ヴィクトールと静かに酒を酌み交わし、互いの不手際と友情を確かめ合った二人は、吸い寄せられるように小さな子供部屋へと足を運びます。
厚い絨毯に足音を消し、そっと扉を開けた先には、世界を揺るがす「奇跡の石鹸」の発明家などどこにもおらず、ただただ愛らしい小さな命が横たわっていました。
「……見てくれ、アルフレッド。あんなに無防備に、幸せそうに笑って寝ている」
ヴィクトールの囁きに、アルフレッドもまた厳格な王の顔をすっかり崩し目を細めました。
月明かりに照らされた寝顔は、なんの憂いもない幸せそのもの……。
『ん、フワフワ……』と小さく寝言をこぼしながら、ぷにぷにの頬を枕に沈めて、柔らかな寝息を立てているレオンの姿は、見ているだけで穏やかなでのんびりとした、柔らかであたたかな空気の化身でした。
「……ああ。この寝顔を曇らせる者は、たとえ神であろうと私が許さぬよ、ヴィクトール」
小さな手が握りしめている柔らかなタオルケットを優しく直して、二人の父親は執務室へ静かに戻りました。
お互い子育てには、あまり関わり合うことが少ないはずなのに、どういう訳かレオンは生まれた頃から関わります。
(……まあ、ヴィクトールが塞ぎ込まなきゃな。養子話もあったくらいだし……)
ヴィクトールも父親として、いろいろ葛藤と心配で、毎回ウロウロ、ハラハラしているようです。
自分もエドワードの時そうだったなぁ(真珠は特に愕然としたな)と思い、話をダラダラと聞いてあげました。
琥珀色の酒が注がれたグラスを揺らし、ヴィクトールは、絞り出すような声で言うのです。
「アルベルトとカトリーヌは、不甲斐ない私を助けてくれます。本当に頼りになるのです。今まで……、申し訳なかったと、思っています。……で、ですが、レオンが、いろいろと、やらかしますので、あ、謝る事もできず、……いえ、実際3人で右往左往状態で……」
……問題児レオンのことだなぁ。
「わかっている、ヴィクトール。アルベルトやカトリーヌも似たようなモノで、大変だな。それに……、あの『六畳の菜園』の噂は、幼子が亡き母親の真似ごとをしているというものだ。おまえの目論見通り、世間は気にしてないから安心しろ。『ベタベタ』や『スベスベ』も、エドワードのやらかしで可愛いでおしまいだ。あの黒歴史も役に立つ事もあるのだなぁ……」
私はあえて、友としての砕けた口調で彼を宥めた。
三歳にして土を語り、誰も思いつかない『洗濯板』や『泥石鹸』を考案する小さな賢者。
その叡智は、時として剣よりも鋭く人を惹きつけてしまう。
「あの子は、ただ『のほほん』と笑っているだけなのです。土がどうだ、芋がどうだと言って……。その瞳には野心も、どす黒い権力への執着も、欠片ほども存在しない。なのに……世間はあの子を捕まようとする!」
ヴィクトールは吐き出すように言い、一気に酒を煽った。
その手がわずかに震えているのを、私は見逃さなかった。一国の重鎮としての威厳を脱ぎ捨てた、一人の父親としての切実な怯えだ。
「陛下……いえ、友として言わせてくれ。レオンの叡智は国を豊かにするだろう。だが、それと同時に、あの子の平穏を奪う毒だ。もしあの子の無垢な心を食い物にしようとする輩が現れたなら……私は、私はその者を……」
「……その時は、余も動こう。いや、俺が動く」
私はヴィクトールの肩に、ずしりと重い掌を置いた。驚いて顔を上げる親友の瞳を見据える。
「貴公の息子は、俺にとっても希望だ。全く瑞々しい肌にしおって、王妃などツルピカ肌に、涙を流して喜んでいたぞ。……親バカなのはお前だけではない。俺も、あの子の笑顔を守りたい一人の父親だ」
私はレオンが寝ているであろう方角へ視線を投げた。
「『匂いがいいね』」
そう言って笑うレオン。あの子が描く未来図は、たぶん王である私が見る夢よりも、ずっと暖かくて優しい匂いがするのだろう。
「ヴィクトール、今日はもう寝ろ。今度はゆっくり話をしよう。父親のお前は立派だ」
「……レオンの父親は私一人ですが……。そうですね、今度レオンが描いた図面をお見せしましょう。もはや……芸術品、将来、天才軍師にも慣れますよ。……ふふ、驚きますよ、本当に……」
少しだけ憑き物が落ちたような誇らしげな微笑を浮かべて、「気をつけて帰って下さいね」と軽口を叩いて、千鳥足で部屋を出て行った。
その背中を見送りながら、私も軽く手を上げ、グラスに残った酒を飲み干した。
その瞬間……、顔から「友人」としての柔和な笑みが消えた。
王として、また一人の父親として……。
あの小さな賢者がいつか世界を、優しく照らすその日まで……、なんとしても、守らねばならん。
「玉座を盾にすることも、有りだ……」
暗がりのなか……、アルフレッドの瞳が獲物をつけ狙う獣のように、爛々と光輝いていた。
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