─泡沫の夢の果て─
拙いと思いますが、生暖かい気持ちでお願いします。
お待たせいたしました。
ひとときのほほんとよろしくお願いします。
不定期になりますが、のんびりお付き合い
いただければ幸いです( * ॑꒳ ॑*)
「……仕事だ。狙うのは侯爵家の次男、三歳のレオンだ。姉の聖女関係なく、次男は始末しろ。変に侯爵家に権威を残したくない。妻が亡くなった後、あの落ち込みようだ。命かけて遺した次男が死ねば、どれほど落ち込むか、……見ものだろう」
どうしようもなく欲深い者は、どこにでもいるのです。バレなきゃいい……、ただそれだけなのです。
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朝日が昇り始めた侯爵邸の庭……。
そこには戦場の跡地より、不気味で殺伐とした光景が広がっていました。
ガストンは恐る恐る、屋敷の内郭へと足を踏み入れました。
そこで彼が目にしたのは、精鋭の暗殺部隊であるはずの彼らが、人間としての尊厳を剥ぎ取られる姿です。
「……これは、酷いな」
……ガストンが呟きました。
そこには全身を『ベタベタ』で塗り固められ、カチカチに硬化した暗殺者たちが、奇妙なポーズのまま石像化していました。
ある者は逃げ出そうと手を伸ばし、ある者はスベスベ地獄で顔を地面にめり込ませたまま……。
「……助け……て……鼻が……ミントで……」
石像の間から聞こえる泣き濡れた掠れた声に、敵ながら哀れみを感じます。
しかし彼らに救いの手を、差し伸べられる事はありません。
むしろメイドや使用人たちは、更なるトドメを差しに行きます。
「あら、まだ口が動くの?お行儀が悪いわね」
一人のメイドが氷のように冷たい微笑みを浮かべ、レオン特製の『アチアチ』をかけます。
「坊ちゃまの好きな薔薇を数本、踏み折った罪は重いわよ……」
布でその上をゴシゴシと拭いました。
「――グブッ!? あっ、あああああ……」
粘膜を焼く激痛に、石像の中からくぐもって響きますが、メイドたちは眉一つ動かさず、むしろ「汚れが落ちないわ」と言わんばかりの怒りを込めて、その顔をゴシゴシと力任せに磨き上げます。
さらに屋敷を長く守ってきた年配の女性たちは、より精神的な恐怖を植え付けようと、身動きの取れない暗殺者たちの耳元で、老婆特有の低い、湿り気を帯びた声で囁きます。
「ねえ、あんた。……このマツヤニ、一度固まると皮膚ごとメリッと剥がさないと取れないよ。……あんたの綺麗な顔、……昇ったお日様を拝む時はもう……、真っ赤な生肉になってるだろうねぇ」
「ひっ、ひいい……っ!」
「静かにおし!坊ちゃまを怖がらせた報いだよ。……憲兵団に運ばれる間、ずーっとこの刺激の中だ。眠らせないよ。……一生、この香りを嗅ぐたびに、終わりのない恐怖を思い出すがいいさ」
彼女たちは、徹底的に害虫として完遂させていました。
視覚を奪いや嗅覚を麻痺し、物理的な拘束で逃げ場のない永劫の苦しみを、今まさに彼らの脳に刻み植え付けるのです。
「ガストン隊長。……状況は見ての通りです」
背後から声をかけたのは、血を一滴も浴びず、めちゃくちゃいい笑顔のマルクスでした。
彼の背後には、レオンが寝ぼけ眼で「とーさま、おはよぉ」とヴィクトールの腕に抱かれている平和な姿が見えます。
「……彼らは全員、生きて憲兵団へ引き渡します。……また、侯爵邸の方向に足を向けるならば、今度こそ死あるのみ、ですが……」
石像化した暗殺者の目から流れる「絶望の涙」を見て、ガストンは静かに溜息をつきました。
「……ムリだろう。……これ以上の拷問は、この世に存在しないだろうからな」
侯爵邸──美しくも恐ろしい完璧な要塞になりました。
……難攻不落、国際的暗殺部隊『常闇の鎌』をも、雁字搦めに縛り付けたのです。
そんな侯爵邸に近づける者など、今後出てくるはずもないのです。
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夜会の喧騒が遠く響くバルコニーで、ヴィクトールの前に足音もなく男が現れます。
他国の諜報機関『真眼の灰』の長、ファルカスです。
「……相変わらず、お宅の『死神』は鼻が利く。私の部下が三人ほど、痛い目を見るところでした」
「……挨拶がわりだ。それで? 愚か者どもが、我が家の『宝物』に薄汚れた奴らを放つ情報は、……真実か」
ファルカスは懐から、固く封印された極秘文書を差し出します。そこには、暗殺部隊「常闇の鎌」への着手金、および結託した貴族・商人の連判状の写しが記されていました。
「真実どころか、既に秒読みです。私は信用という名の新世界に投資したい。……これはそのささやかな手土産です」
ヴィクトールは書類に目を通し、冷酷に目を細めます。
「……ほう。我が領内の商人も混じっているか。これだけの情報を渡して、貴様は何を望む?」
「望むのは『不敵対の証明』、そして協定を望みます。この泥石鹸を皮切りに、何やらいろいろと起こりそうなので……。我が国の上層部も、楽しみにしているのです。よろしければ、我が方のルートもご自由にお使いください。……我ら『真眼の灰』は、楽しみ多きところに加担します」
身内の裏切り者まで特定し、ヴィクトールに渡すことで、圧倒的な「貸し」を作る、ファルカス。
そうする事で今後、最優先で取引が出来るうえ自国の女性らは喜ぶだろう。
女性の機嫌が良ければ国も平和ということ、特に我が国の女性は元気が有り余っているから……。
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今回の泥石鹸という世紀の発明を前に、何の利権も手に出来なかったという手前勝手な理由で、報復に手を染め雇われた国家戦力級の精鋭暗殺部隊『常闇の鎌』。
彼らの目的は誘拐ではなく、――聖女の弟、レオンの確実なる抹殺でした。
「……ターゲットは寝室、全速で侵入し首をはね見せしめに……、との事だ」
鎌の隊員が音もなく塀の上へと跳躍し、飛び降ります。
「…………ッッッ!?」
ブルーノたちが数時間かけて掘りに掘り抜き、さらにマルコが気合いを入れて仕込んだ廃油に雲母(キラキラする石)の粉を混ぜた『見えない沼』です。
「な……ッ!? 抜けない、脚が……ッ!」
闇夜に紛れた廃油の沼は、鎌たちの脚を冷たく絡めとります。
「……いらっしゃいませ。夜のお掃除は、命懸けですよ、お客様」
屋根裏の小窓からゴーグルを装着したレオンを抱き上げ、ブルーノが冷徹な声を掛けました。
「……うん! 悪コロさんは、……ナイナイ!」
みんなを殺しに来た悪いやつは、レオンでも絶対に許せません。
屋根から降り注ぐのは、キラキラと光る雲母と、さらに粘着力を高める特製の灰……。
夜の「お仕置」は、まだ始まったばかりです。
今回の罠は、マルクスとブルーノの監修が入り、使用人らが全力で嫌がらせでした。
ベタベタから間一髪で回避着地に成功した精鋭暗殺部隊『鎌』の数名は、穴を飛び越え舗装された石畳の上へ着地しました。
しかしそこが、一番レオンのこだわった「遊び場」でした。
「……着地成功。穴は回避した。これより内部へ――」
隊員が次の一歩を踏み出した瞬間……。
「――ツルッ、ッッ!?」
彼の視界が唐突に、真上を向いたのです。
強靭な体幹を誇るプロの暗殺者が、まるで見えない氷の上に放り出されたかのように、無様に宙を舞います。
「なっ……!? なんだ、この床はッ! 踏ん張りが効かん!!」
今まで経験した事の無い事態に、焦りが生まれます。
石畳に塗られていたのは、特製『スベスベ』です。今回は特に『純度の高いラード』に、保水力の高い『アロエの粘液』、そして極めつけは、極限まで細かく砕いた『大理石の微粉末』を使用しました。(ニコがヤスリ付きすりこぎですり鉢ゴリゴリ♪)
おかげで靴底が地面に触れた瞬間、全方向へ滑れるようになりました。
「……あ、悪コロさん、踊ってるの♪」
屋根裏の小窓から、レオンが手を叩いています。
「じょーじゅ!」
「……前より悪化してないか?」
「……ふむ。なかなか無様で笑えますね。実に見事な嫌がらせです」
ヴィクトールが引きつっている横で、ブルーノが感心したように、滑り続けて立ち上がれない暗殺者たちを見下ろしました。
「……あそこクルクル。……ニコ、シュッシュッ 今だと、おもしろい!」
「はい、レオン坊ちゃま! 踊り子さんたちには特別仕様です!」
「レオン……、楽しんでるだろう」
やはり教育に悪かったのでは……、「閣下、命かかってますから、レオン様は立派です」とブルーノはフォローします。
ニコは窓から原液に近いミント液の瓶を投げました。
石畳に当たって割れた瞬間、高濃度のミント臭が辺りに充満します。(だけじゃなくマッハスベスベになります)
「目が、目がぁっ! 滑って、逃げられ……っ、ぐはあッ!!」
滑り倒れた刺客たちは、受け身を取ろうとしても手が滑り、さらに石畳に顔面を強打しました。鼻は地獄の痛みと震えが来るほど、濃厚なミント臭……。
プロの暗殺者でも特製『スベスベ』の前では、手も足も出せずに無力でした。
「……ブルーノ、ベタベタへ、ポイ! 」
「御意」
その様子を何も言うまいと、遠い目をするヴィクトール、刮目相待とはよく言ったものです。
スルスルスルーと下に降りたブルーノは、滑らない特殊な靴で歩き、もがく刺客たちの襟首を掴んで、『ベタベタ』へ、ボウリングのピンのように放り込みました。
『スベスベ』で加速し『ベタベタ』で固まる。
(さらに『ベタベタ』はブルーノ特製で、スズランを入れた全身麻痺仕様でした。)
「……完璧な罠コンボですね、レオン様」
「……うん! ぴかぴか、ガォーなの!!」
夜の帳の下、暗殺者たちは踊り疲れた末に、
中には麻痺して、「出荷待ちの荷物」へと成り下がり、完全勝利となりました。
ヴィクトールは額に手を当て疲れ果てました。
レオンはしっかり軍師していたようです。
特殊暗殺部隊『常闇の鎌』を以ってしても、侯爵家は揺らがず、寧ろ優雅に凶悪な毒牙で以って制したのです。そんな相手に手を出してタダですむはずもなく、報復を恐れる側になったのは一体誰なのか……。
ただ言える事は、相手の力量を測れぬ者に、栄華など存在するはずもない……のです。
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