親友への誓いと、防波堤の構築
拙いと思いますが、生暖かい気持ちでお願いします。
お待たせいたしました。
ひとときのほほんとよろしくお願いします。
不定期になりますが、のんびりお付き合い
いただければ幸いです( * ॑꒳ ॑*)
重厚な扉が閉まると雑音は遮断され、国王執務室に研ぎ澄ました沈黙が流れています。
アルフレッドは、まだ華やかな礼装を纏ったイザベラに向き直り、重々しい声で尋ねました。
「……イザベラ。説明してもらおうか。教会との独断での提携……、アレはどういう事だ?これら全てをヴィクトールに一言の相談もなく進めたそうだが、お前は何を考えている!」
イザベラは、扇を握りしめ、毅然と顔を上げました。
「陛下、一刻を争う事態でしたわ。レオンを、あの純粋な新芽を、強欲な貴族どもの『泥』に汚れさせるわけには参りませんでした。教会という『聖域』を先に固めてしまわねば――」
「黙れ!」
アルフレッドの怒鳴り声が壁に跳ね返ります。
イザベラが肩を震わせ、顔は強張り瞳には焦りが宿っていました。
「レオンを守るため、という大義名分は認めよう。だがな、イザベラ……。ヴィクトールは、エレーナが命を懸けて遺した子の父親なのだ。あの子が作った奇跡を国や教会の看板に塗り替えられる……。その痛みや苦しみを、お前は考えたことがあるのか?」
アルフレッドは窓際に歩み寄り、遠くの侯爵邸を見つめました。
「ヴィクトールはエレーナを失い、今はレオンの笑顔を支えに生きている。たとえそれが『守るため』の嘘であっても、父親を置き去りにして、あの子の存在を歴史から消し去るような真似……。それは親友として、いや……、人として越えてはならぬ一線じゃないか」
イザベラは言葉を失い、視線を落としました。
彼女もまたエレーナを愛して、レオンを守ることに必死で、残されたヴィクトールの「親としての矜持」を軽視していたことに、今更ながら気づかされたのです。
「……ヴィクトールには、余から直接詫びを入れる。そして、これからは必ず彼を通せ。……レオンは、国家の所有物ではない。ヴィクトールの息子であり、エレーナが『のびのびと自由に』と願った、ただの子供なのだからな」
アルフレッドは深く溜息をつき、椅子の背もたれに身を預けました。
「……イザベラ。お前がレオンを大切に思っていることは知っている。だが、その思いで誰かを踏みにじっては、エレーナが哀しむ」
静まり返った部屋で、イザベラは静かに膝を折り、唇を噛み後悔します。
「……失礼いたしました、陛下。私の……浅はかさでございました」
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親愛なる聖下
─懐かしき我が友セレスへ
此度、私が貴女の権威を仰ぎ、伏して願い奉るは、この地に生まれた「奇跡の泥」にまつわる救済の事業にございます。
この湧水より採取される泥を用いた石鹸……。ただ肌を清めるに留まらず、不浄を物理的に封じ、病の元となる汚れを洗い流す神の祝福そのものにございます。私はこれを水脈の通る各地の孤児院にて、生産する体制を整えたく存じます。
この石鹸が諸国に配られれば、不衛生ゆえの疫病に怯える民は救われ、何より、拠り所なき孤児たちが自らの手で「聖なる品」を作り出すことで、教育と自立の道を得るのです。
ただ光り輝けば、影もまた然り。
それにより幼き生命が危険に晒され様としています。──エレーナ様が命を課して遺した幼子です。どうかお願いです。
貴女がその筆を執り、防波堤となる宣言をなされば、世界は泥に沈むことなく、綺麗に輝き出すことでしょう。
不浄を焼き払う「火」ではなく、すべてを包み込み洗い流す「聖母なる愛」とともに、貴女の賢明なるご決断を信じております。
――貴女の古い友人、ベネディクトより。
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月光が照らす中庭……。
普段の穏やかな「庭師」の面影を一切捨て去った、一人の死神がいました。
ブルーノが手にする巨大な剪定ハサミ、その中央の留め金を親指一本で弾いた瞬間、シャキィィィン!!と鋭い金属音が夜の静寂に響きます。
巨大なハサミは二つに分かれ、逆手に握られた、反りのある「双剣」へと変貌しました。
「……掃討、開始」
ブルーノの動きは、長年の経験と裏打ちから変則的なものでした。
襲いかかる刺客たちの間を縫うように移動し、双剣を交差するたびに、敵の戦意が無慈悲に切り裂いていきます。
最後の一人を峰打ちで沈めたとき、ブルーノの周囲には隠密としての、冷酷な殺気で渦巻いていました。
……なのに、その背後からポテポテと、小さな足音が聞こえてきます。
(……見られた?!)
ブルーノの背中に、冷たい汗が流れます。
この血の匂いが漂う現場、そして研ぎ澄ました自分の姿……。
(レオン様が見れば、泣き叫び逃げ出すに違いない。自分を「化け物」と避けるようになるかもしれない)
……震える手で双剣を合わせ、再び一つのハサミに戻そうとしますが、焦りと恐怖でらしくなく手がうまく動きません。
「……ブルーノ、それ、なあに?」
聞き覚えのある舌足らずな声が、……聞こえてきました。
ブルーノは絶望に目を閉じ、覚悟を決めて振り返ります。
そこには三角帽子のポンポンを揺らすレオンが、不思議そうに首を傾げていました。
「……坊ちゃま、これは……その、恐ろしい、道具にございます。私は、貴方様が思っているより、危険な者に……」
自嘲気味に目を逸らすブルーノの姿には、むしろ痛々しさがあります。
レオンは逃げ出すどころか、トコトコと歩み寄り、ブルーノが握る双剣の片方を、小さな指でツン、と突きました。
「……しゅごい!かっこいい、チョキチョキ?」
「……え?」
「これ、ふたつになるの? いーっぱいきれる。……ブルーノ、ボクを、まもってくれたの?」
レオンの瞳には、怯えなど微塵もありません。
……転生者が理解する。
3歳のレオンの心は、「ブルーノが自分たちのために、戦ってくれた」という事実を、真っ直ぐに受け止めていました。
「……怖くは、ないのですか? 私は影の中で生きてきた、汚れた男ですよ」
ブルーノの口からは拒絶を、しかし瞳で縋りながら問います。
するとレオンはフニャンと笑って、ブルーノの血の気が引いて冷たくなった手を、両手でギュッと握り締めました。
「……ブルーノは、ブルーノ。……ボク知ってるよ。……ありがとう」
3歳児に、ブルーノの複雑さはわかりません。
ただ手に持つチョキチョキで自分を守り、この大きな手でいつも優しくしてくれた。
レオンにとってのブルーノは、それが全てだったのです。
ブルーノの目から、涙がポロポロと溢れ出しました。それを見たレオンはギョッとし慌てます。
彼はその場に膝をつくと、小さな主君を震える腕で抱きしめました。
「……こちらこそ、ありがとうございます。……レオン様、今まで通り……、お側にいてもよろしいでしょうか?」
三角帽子の先っぽが、ブルーノの肩で優しく跳ねます。
「いっしょよ。ヨシヨシ、ブルーノ。がんばったの」
死神と呼ばれた隠密が、ただの庭師になった瞬間でした。ブルーノにとって、レオンの「ブルーノはブルーノ」という全肯定は、何物にも代えがたい救いになったのです。
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