貴族派からの招待状─帳への誘い─
拙いと思いますが、生暖かい気持ちでお願いします。
お待たせいたしました。
ひとときのほほんとよろしくお願いします。
不定期になりますが、のんびりお付き合い
いただければ幸いです( * ॑꒳ ॑*)
その日招待されたパーティーでは、派手な扇で鼻を覆いながら、クスクスと笑う夫人たちの悪意がありました。
会場に「カトリーヌを泥臭い」という嫌味な空気が流れています。
まだ年端もいかない少女に対し牽制と妬み、もしくは其処に付け入る隙があれば、おこぼれを貰おうと、そんな浅ましい考えが見え隠れしたものでした。
カトリーヌは花のつぼみがほころぶような貴婦人の微笑みで一歩踏み出します。
「あら、皆様。私から泥の匂いがいたしますの?……ふふ、それは失礼いたしましたわ。毎日いろいろと研究し向き合っておりますので、どうしても材料の香りが移ってしまいますの」
「まあ、おいたわしいこと。次期王妃ともあろうお方が、そんな汚れ仕事に精を出されるなんて……」
「いいえ、滅相もございません。私は、母の残した研究で、この国の憂いを洗い流せるなら本望です。……私はこれからも、この出来上がった石鹸で自分を磨き、綺麗になりますわ」
そしてカトリーヌの瞳に冷たい光が宿ります。
「……ですが、皆様。今のお言葉で安心いたしましたわ。皆様は泥の匂いもご存じないほど清らかで、一点の曇りもない方々なのですものね。これほど汚れのない皆様に、私の作る『石鹸』など、きっと必要ないでしょう」
その言葉に含まれもたらす「地獄」は、単なる嫌味返しではありません。
「王家管理品」の受給資格を、その場で剥奪したに等しいのです。
夫人たちはその一言を聞き、愕然とし慌てふためきます。
「え……? 必要ないって、私たちの家には石鹸を回さないってこと!?」と、数秒遅れて気づきます。
石鹸がなければ、彼女たちは「泥臭い」どころか、流行病や加齢による肌の衰えに無防備になるのです。
さっきまで一緒に笑っていた他の貴族たちが、関わり合いを恐れてサッと離れていきます。
「あいつら、カトリーヌ様に『石鹸はいらない』って宣言しちゃったよ……」というヒソヒソ話が聞こえ始めました。
手のひら返しも貴族のお家芸なのです。
後ろで聞いていたアルベルトは、楽しそうに言います。
「聞いたな? 彼女たちの家に石鹸は不要だそうだ。今すぐリストから削除しておけ。彼女たちの『清らかな』生活を邪魔しては悪いからな」
アルベルトは懐中時計を確認すると、事務官へ命じました。
「こちらも無粋な方々に与えるほど、心に広さがなくてね。数も少ない。貴女方はいらない。減れば減るだけ、こちらとしても助かるのさ」
軽薄な足取りでカトリーヌの元へ歩み寄り、大げさに肩をすくめて見せました。
カトリーヌが「あら、お兄様ったら」と言わんばかりに片眉をあげると、彼はニヤリと唇を吊り上げ、「フフン」と鼻で笑いました。
そして、アルベルトはゆっくりと首を巡らせ、背後の従者へ声をかけます。
「事務官、見ていたな?」
アルベルトが社交界では珍しく、隠しきれない冷笑を浮かべています。
そして、常の事務官ならば鉄の仮面のような無表情ですが、この時ばかりは、なぜか満面の笑みを浮かべていました。
余りの豹変ぶりに、中身が入れ替わったのではないかと疑いたくなるほどです。
「確かに確認致しました。 リストから、最優先で削除させて頂きます」
その事務官の「満面の笑み」の裏に、どれほどの思いが込められているのか。
この夜会に出席した貴族たちは、自分たちの運命に気づくのは、そう遠くありませんでした。
貴族たちの嘲笑が、引き潮のように消えて行った理由……。
「事務官」と呼ばれた青年が、おもむろに眼鏡を外し、髪をかき上げ、整いすぎる顔をさらけ出したからです。
その瞳に宿る冷徹な覇気……。
それは紛れもなく公務で不在なはずの、エドワード皇太子その人でした。
「……あ、あ、殿下……!? なぜ、ここに……っ!」
腰を抜かしかけた貴族たちを、エドワードは「事務官」として浮かべていた満面の笑みのまま、一瞥しました。
「公務を早く終わらせる秘訣はね、『不純物』を削除する効率を考えることなんだ。……アルベルト、君の言う通りだ。これほど泥を嫌う方々に、与える必要はないよ。もったいないし、何より努力の結晶を触れさせるには、いささか無礼が過ぎる」
エドワードは優雅にカトリーヌの隣へ歩み寄ると、彼女の小さな手を取りました。
「カトリーヌ、待たせたね」
カトリーヌは呆れたような顔をしています。
「エドワード様……変装は楽しゅうございました?」
エドワードはニヤリと笑うと、アルベルトと視線を交わし、最後にもう一度「満面の笑み」で会場を見渡しました。
「確かに確認致しました。リストから、最優先で削除させて頂きます」
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拝啓
初夏の光が万物を等しく照らし、庭園の緑が深まりを見せる佳き日。侯爵閣下におかれましては、ますますご清祥のこととお慶び申し上げます。
さて、この度は我が一族の別邸にて、次代の社交界を担う若き星々――アルベルト嫡男殿、ならびにカトリーヌ令嬢をお招きし、ささやかな「新たなる未来を語る夜会」を催す運びとなりました。
王宮の重責を担われる閣下、ならびに東奔西走される皇太子殿下を、これ以上お疲れにさせるわけには参りません。
当夜は、将来の展望を語り合える若きお二人こそが主役。我々一同、お二人の「独り立ち」を、心より祝福したいと考えております。
また、幼きレオン殿につきましては、夜風は万病の元と聞き及んでおります。どうか、温かな屋敷の奥で、健やかな夢路を辿られますよう。
……私共の配慮が行き届く『帳の導き手』が、レオン殿の眠りを妨げぬよう、枕元で静かに見守っております。
我らの差し示す『友愛』に対し、賢明なるお二人が無作法を働かれるなど、毛頭疑うべくもございません。
欠席という『間違い』を犯されることは万に一つもございませんが、我が貴族連盟への明確な配慮を賜りたく存じます。
月光が降り注ぐテラスにて、お二人の憂なき笑顔を拝見できることを、心より楽しみにしております。
敬具
この手紙を受け取ったとき、兄妹の間に会話など必要ありませんでした。
それはエドワードとて同じこと、予定の公務は早々に切り上げたのです。
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闇に潜むもの達は、蠢き騒めいていました。
ココ最近、息を潜めていた侯爵家が攻撃に転じたからです。その動きから内に何かを隠してたのではなく、むしろ下準備をしていた印象を受け取ったのです。
「……いいか。今すぐ、侯爵邸への偵察をすべて中止させろ!」
隣国の諜報長官は、机を叩いて部下たちに命じました。
「もし我々の潜入がバレて、ヴァリエール侯爵の逆鱗に触れたらどうなる? 我が国の王妃様や王女殿下たちが、一生あの『発光する肌』を手に入れられなくなるんだぞ! そんなことになったら、我々は反逆罪で処刑される!」
「し、しかし長官、あれが普通の泥とは思えず……」
「馬鹿者が! 泥だろうが石鹸だろうが、王家が欲しがっているのはあの『若返り』だ! リストから外される恐怖に比べれば、泥の不思議など些細な問題だ!いいか、むしろ恩を売るような形にするんだ。今の侯爵家には情報が、何よりもほしいはずだからな」
他国の密偵たちの中には、「リストから外されないため」に、ヴァリエール家を守るような動きを始めるところも出てきました。
少しづつ侯爵家に群がる汚れの、除去作業が行われ始めたのです。
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