レオンとブルーノ─土と語らうある日の朝─
拙いと思いますが、生暖かい気持ちでお願いします。
お待たせいたしました。
ひとときのほほんとよろしくお願いします。
不定期になりますが、のんびりお付き合い
いただければ幸いです( * ॑꒳ ॑*)
刺客を闇に葬り、薔薇の枝先の下を淡々と踏み固めていた。
(……泥遊びが庭師の本分だ。……存分に吸い上げるがいい。あの子の愛でる薔薇を、より美しく彩る糧として……)
澄み渡る空の下、ヴァリエール邸の菜園には、大小ふたつの影がありました。
ひとつは、泥だらけの膝をついて熱心に土を見つめるレオンと、その傍らで大きなクワを杖がわりに、静かに控える庭師のブルーノです。
「ブルーノ、いま、だいじよ。お芋さん、おなかすいた、いってる」
レオンが小さな指を土に差し込むと、ブルーノは深く刻まれた目尻のシワをさらに深くして、低く落ち着いた声で応じました。
「……そうでございますか。では坊ちゃま。いつもの『特等席』へ、ごはん(肥料)を運びましょうか」
ブルーノは、レオンが堆肥と草木灰の入ったバケツを、軽々と持ち上げました。
ポイント1:根っこを「歩かせる」追肥
ジャガイモの茎から少し離れた場所を指さしました。
「ここ、パラパラなの。お芋さん、『よいしょ』って手をのばすと、マッチョさん」
「……なるほど。甘やかしすぎず、自ら栄養を求めに行かせるのですね」
ブルーノはだまって正確な手つきで肥料をまいていきます。
ポイント2:まん丸の「お部屋」を作る土寄せ
肥料をまき終えると、ブルーノはクワを握り直しました。ここからが彼の腕の見せ所です。
「ブルーノ、お山、こんもりいーぱいね。お芋さん、お日しゃまが、『いたいいたい』するの。まっくらで、ゆっくり、まん丸よ」
「……承知いたしました。お芋たちが安心して眠れるよう、最高のお布団(土)をこんもり被せてあげましょう」
ブルーノがひと振り、ふた振りとクワを動かすたびに、見事なまでに整った畝が出来上がっていきます。
「ブルーノ、じょうず! お山、かっこいいの!」
「……坊ちゃまにそう言っていただけると、庭師冥利に尽きますな」
ブルーノは無骨な手で、レオンの麦わら帽子の位置を優しく直してあげました。
書斎の窓からその光景を見ていたヴィクトール侯爵は、手元の書類を置きました。
「……ふむ。ブルーノの奴、あんなに穏やかな顔をする男だったか?」
「旦那様、ブルーノは口数が少ない男ですが、レオン坊ちゃまの理にかなった話に、隠密として血が騒ぐのでしょうな」
(窓の外、レオンと笑い合うブルーノの『一瞬視線』がこちらを向いたのを感じて)
「ただ……、彼が穏やかに笑っていられるのは、その足元にある『不浄なもの』を、既に下へ隠し終えたからですよ」
窓の菜園でレオンを遊ばせていたブルーノが、ふいに行き先を追うふりをして顔を上げました。執務室から覗き見る侯爵とセバスに真っ直ぐ視線がぶつかり合います。
その瞬間……、ブルーノの口角が吊り上がり、冷酷で不遜な面構えの笑みを浮かべました。
そこに穏やかな庭師の面影など微塵もなく、数多の闇を潜り抜け、標的の命を弄んできた「死神」そのものです。
「……何か文句あるか?」と無言で挑発する眼差しに、侯爵は息を呑み後退しました。
「ブルーノ、 おはな、きれい♪」
背後からレオンに服を引かれた瞬間、死神の表情は魔法が解けたかのように霧散します。
振り返った顔には、凶悪な笑みなど影も形もありません。
ただ目尻を下げるデレた庭師がいました。
「坊ちゃま。そうですね、実に……実に、可愛らしいお花です」
膝をつき赤子語混じりの甘い声で、レオンの泥だらけの手を握るブルーノ……。
その極端な切り替えを特等席で見せられた執務室の二人は、呆れ果てるしかありません。
「……おい、セバス。今の見たか!あれも技術か?ただの『レオンぼけ』だろう」
セバスは呆れたように眼鏡を拭き直し、深くため息をつきました。
「……左様でございますな。元は最強の隠密だった者が、3歳児の呼び声一つで、これほど腑抜けるとは……、もう開いた口が塞がりません」
咲き誇る真っ赤なバラの横で、何も知らないレオンが笑い、その下にはブルーノが葬った影が眠っていた。
─次の日─
外ではレオンが、ブルーノの大きな手に小さな手を重ねて、土の感触を確かめさせていました。
「ブルーノ、雨のあと、ゴロゴロ、なの!」
「……ええ、坊ちゃま。必ずや、見事な『まん丸』を掘り起こしてみせましょう」
ブルーノは膝をつき、レオンと同じ目線で約束しました。その瞳には主君への忠誠以上に「小さな師匠」への深い敬意と慈しみが宿っていました。
周囲の安全を鋭い視線で確認した後、アルベルトはレオンのいる方へ向かいます。
それに気づいたレオンはとても嬉しそうに笑い、ブルーノは静かに頭を下げました。
「にぃちゃ、お芋さん、まだねんねよ」
3歳のレオンが、地面にぺたりと座り込んで、じゃがいものお山に指さします。
隣に来たアルベルトは、袖をまくり上げ膝をついて土をいじり始めました。
「あぁ……、前に母上から聞いたかも、土の下でお腹を膨らませているんだろ。昨日『ごはん(追肥)』をあげたらしいな。エラいぞ、レオン」
「ボク、エラい♪ブルーノ、お願いした」
「坊ちゃまが、タイミングを教えてくれたからですよ。スゴいのは坊ちゃまです」
「ボク、スゴい♪」
キャッキャッ手を叩いて喜ぶレオンの横で、ブルーノとアルベルトは視線を交差させました。
ブルーノはわずかにチラつく影に、土をいじりながら把握しています。
アルベルトは一つ頷くと、泥だらけのレオンをひょいと抱き上げました。
「わぁ!にいちゃ、たかい♪」
「んー、そうか?レオン、マルコがおやつを作ったと言ってたぞ。一緒に食べよう。……ブルーノ、お前も後で来い。……仕事が済んだらな」
「……御意。冷めないうちに、伺いましょう」
アルベルトは、レオンを正面から力強く抱き上げ、その小さな頭を自分の肩に押し付けます。
「よし、レオン、兄ちゃんとドロボーさんごっこだ!レオンは宝物だから 目を閉じて、……スタートだ!!」
アルベルトはスゴい勢いで、地を蹴り駆け出しました。レオンは兄の胸の鼓動と「しゅごーい! はやーい!」とはしゃぐ自分の声しか聞こえません。
背後で「カチリ」と、ブルーノが仕掛けた罠の作動音がなりました。
「……さて。レオン様がおやつを食べ終える前に、『雑草』を根こそぎ抜いて起きましょう」
右脚の古傷を一度だけ強く踏みしめ、ブルーノの姿が、陽炎のように畑から掻き消えた。
テクテクトコトコ……♪
庭を歩いていると、ブルーノが仕事をしていました。レオンが「ブルーノ、なに?」と頭を傾げ聞いてきます。
「……おはようございます、坊ちゃま。バラさんがお腹空かないように、ごちそうをあげてました」
「バラしゃん、おぉ食らい!」
「さすが坊ちゃま!花が咲く頃は特に大食らいです。…来年、再来年とこのバラは、ひときわ赤く、見事な大輪を咲かせるでしょう」
「バラしゃん、キレイ♪」
小さな両手を広げて喜ぶレオンを、ブルーノは優しく見つめ返しました。
「ええ、本当に……キレイですね」
その声はかつて闇を歩んでいた「死神」のものとは思えないほど、穏やかな愛情を湛えています。
「バラさん、だいすき!」
「はい。私も、バラも……そして何より、レオン様が大好きですよ」
ブルーノはレオンの小さな手を、優しく包みたした。まるで壊れやすい硝子細工を扱うかのように……。
ふいに行き先を追う風が吹き、バラの葉がカサリと鳴ります。
ブルーノは一瞬だけ、鋭い隠密の目で周囲の気配を察知しましたが、何も異常がないことを確認すると、すぐにまた優しい庭師の顔に戻りました。
「さあ、坊ちゃま。お部屋に戻って、美味しいおやつにしましょうか」
「おやつ♪ブルーノ、おんぶー、ちて!」
「はいはい、御意のままに」
ブルーノは慣れた手つきでレオンをひょいと抱き上げると、流れるような動作で広い背中へと回しました。
「さあ、しっかり捕まってくださいね。……お馬さん、出発いたします」
背中で「わーい!」とはしゃぐレオンの温もりを感じながら、ブルーノはゆっくりと歩き出します。
大切な重みを噛みしめて、穏やかにのんびりと景色を眺めながら……。
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