カトリーヌ─魔法の泥団子─
拙いと思いますが、生暖かい気持ちでお願いします。
お待たせいたしました。
ひとときのほほんとよろしくお願いします。
不定期になりますが、のんびりお付き合い
いただければ幸いです( * ॑꒳ ॑*)
王宮の淑女教育の合間に、カトリーヌは王妃イザベラ様からサロンへ招かれました。
イザベラは親友の娘であるカトリーヌを気遣いながらも、屋敷に残された末っ子――レオンが気になります。
「カトリーヌ、 ヴィクトールはいろいろと不器用でしょう?幼いレオンに寂しい思いをさせていない?」
イザベラの慈愛に満ちた問いに、カトリーヌは苦笑を漏らして屋敷であった話をしました。
「それが最近、庭の隅で土遊びをして……、先日は父様の裾を泥のついた手で掴んで、『日の匂い』と言って笑っていました」
その言葉にイザベラは目を見開きました。
「……まあ!あの大真面目なヴィクトールに、泥の手で? レオンは大丈夫だったの?」
眉間に皺を寄せ、不安げな顔をされてます。
「父様は……驚きながらも、ひどく不器用な手でレオンの頭を撫でておられました。あんなに穏やかな父様の顔を、私は久しぶりに見ましたわ」
カトリーヌの報告を聞いたイザベラは、末っ子のレオンを通して、凍りついた侯爵家に温かな変化が訪れたことに、何よりも嬉しく思いました。
「その……『日の匂い』、私もいつか嗅いでみたいわ。カトリーヌ、レオンがまた何か新しいことを始めたら、教えてちょうだいね」
イザベラは微笑み、心の中では安堵しました。
どうやら侯爵家に、緩やかな春が訪れようとしています。
「ニコ……これ、まんまる……ねんね」
ニコがコトコトと丁寧にサボンソウと生のローズマリーを煮出し、ブルーノが精製した滑らかな泥を混ぜたタネが出来上がりました。
レオンはそれを前に目を輝かせます。
エドワードとヴィクトールが、隠蔽の命運を左右する「石鹸の製造工程」を視察に来たはずです。
……が、目の前の光景はあまりにも無邪気で平和な泥遊びでした。
レオンの小さな手で団子を作りますが、あっという間に、全身泥だらけになりました。
「まんまるよ。どろの、だんご♪」
レオンは鼻歌を歌いながら、一生懸命に泥の団子を作ります。
その隣ではカトリーヌが、レオンに教わりながら、真剣な表情で泥を丸めていました。
「見て、レオン。わたくしも、まんまるに出来ましたわ!」
「わあぁ! ねーたま、じょうじゅよ! なかよしさんね!」
二人が不格好な泥団子を見せ合う姿は、どこにでもある微笑ましい姉弟の日常です。
近くでその様子を見ていたニコとブルーノは、歴史を変える「身体石鹸」の製造をしているとは思えないほど、平和な光景に目を細めていました。
「坊ちゃま、ギュッギュッしてますね」
「あの泥は粒子が細かいから、成形は難しい」
レオンが並べた「泥だんご?」は、天日に干されて魔法がかかるのを待っています。
カトリーヌの奮闘した団子も横に並んでいます。
初めてですが、きれいな丸い団子でした。
「この泥だんごを世界で一番価値のある『宝石』に変えてみせますわ」
カトリーヌはやる気に満ちています。
(……なぜかレオンはやらかしている気がするの)
「あい! ねーたま、しゅごい!」
カトリーヌが独り気合いを入れ直すことなど、レオンには関係ありません。泥にまみれた小さな両手を元気いっぱいに広げ、全身で喜びを表現します。
その無邪気なようすに、カトリーヌは毒気を抜かれ苦笑し、ソッとその頭を撫でました。
レオンはほにゃ~んと、とろけるような笑みを零します。
その様子を少し離れた場所から見守っていたエドワードとヴィクトールは、図らずも同時に長く深い溜息をつきました。
「……まさに3歳児、本来の姿だな」
エドワードは呆れたような、それでいてどこか救われたような表情です。
知略を巡らせカトリーヌの発明として功績を奪った様なモノ……、なのに本人はその発明品を、ただの遊び道具として楽しんでいました。
「ただの泥団子ならば、確かに……」
ヴィクトール、眉間を指で押さえながら呟きました。
「しかし侯爵、あれが王都の貴婦人たちの肌を磨き、病を遠ざける『奇跡の石鹸』として流通するのだ。この落差は酷すぎるな」
実際レオンの作った泥団子は、道にある土の塊にしか見えません。
泥のタネに指を突っ込むと、ローズマリーの清々しい香りと、ひんやりとした泥の感触に、絶妙な笑いが込み上げてきます。
「そこを調整するのが、我々の仕事なのではないかと……」
「ヴィクトール、とにかく使ってみないと分からん。覆い隠せる程なら、こちらのモノだ」
エドワードは口角を不敵に上げると、レオンとカトリーヌの待つ方へと歩み寄りました。
遅れてやって来たヴィクトールに、レオンが嬉しそうに飛びつきます。ヴィクトールはそれを危なげなく受け止め、ひょいと軽やかに抱き上げました。
「とーたま、おだんご、ねんね。明日、ピカピカよ」
泥だらけの手を見せるレオンの顔は、とても満足げです。ヴィクトールは無邪気なレオンの頭を優しく撫でました。
「ああ。良い泥団子だ。しっかり『ねんね』させなさい」
「あーい!」
ヴィクトールの広い胸に顔を埋め、レオンは満足げに息を吐きます。
エドワードとヴィクトールが、「泥団子の防衛計画」を練っていることを、レオンは知りません。
レオンにとってみんなと一緒に、カトリーヌと泥遊びの時間が、何よりの「ごちそう」でした。
「エドワード様、貴方もいかが? 意外と、心が落ち着きますわよ」
カトリーヌが泥だらけの指先でエドワードを誘うと、彼は再び大きな溜息をつき、それから僅かに口角を上げました。
「……断る。その『泥団子』が本物の石鹸になった時、お前から贈られる瞬間を楽しみに待たせてもらおう」
この無邪気な「お団子作り」が、誰にも邪魔されない平和な遊びであり続けるために、彼らはこれからも完璧な「嘘」を積み上げていくのです。
─ちなみに─
お披露目用はもちろん、職人?による泥団子でした。
「どうです!ヴィクトール閣下!何十年ぶりでも、腕は衰えないものですな♪」
「マルクス、なんでそんなツルツルになるんだ?」
辺りには大きめの不格好な泥団子?がありました。
「アハハ!泥団子も親子のようですな」
実はヴィクトール、手先も不器用でした。
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今から私は、大いなる嘘つきになってみせますわ!
「……母エレーナが残した古い手記の中に、薬草と大地の配合が記されており、ようやく遺した知恵を形にすることができましたわ」
王宮の謁見の間。
居並ぶ貴族たちの視線を浴びながら、私は声を大にして響かせました。
私の手元にあるのは、滑らかな泥とハーブの泥石鹸……。
「コレは、私が作りましたわ」
凛とした声で告げた瞬間、広間には、波が引くような静寂ののち、感嘆の溜息が広がりました。
正面には王妃イザベラ様もいらっしゃいます。
お母様がもっとも信頼を寄せた親友であり、レオンを陰から見守ってくれました。
イザベラ様は、私を包み込むような眼差しで見つめ、優しく微笑まれました。
「……エレーナの研究が形になって嬉しいわ。カトリーヌ、見事よ。よくやったわ」
イザベラ様のそのお声に、私は深く、深く淑女の礼を捧げました。
「よ・く・や・っ・た」――その言葉の裏側にある、すべての意味を噛み締めながら……。
(……やりましたわ、レオン。イザベラ様も、こうして認めてくださいましたわ)
頭を下げ床を見つめる私の脳裏には、数日前の輝くような菜園の景色が広がっていました。
「まんまるよ。どろの、だんご♪」
お鼻の頭に泥をつけて、一生懸命に手をこねさせていた私の可愛い弟。
「ねーたま、しゅごい! ボク、のほほん、しゅる」と笑って、夢のような叡智を惜しげもなく私に譲った三歳の賢者……。
あの子がポテポテと歩き回る平和な庭を、決して誰にも侵させやしない。
あの子が「おいちーの!」と笑いながら「のほほん」とした日常を、私が偽りの名声で鉄壁の守りで覆い隠しましょう。
イザベラ様もすべて承知した上での共犯者になってくれました。
(お母様。あの子をこの世界の喧騒という汚れから、守り抜いてみせますわ)
――顔を上げたその刹那、カトリーヌの表情は、一点の曇りもない『聖なる石鹸の発明者』として、余裕と気高くも慈悲深い微笑みを宿していました。
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