ちょっとした同情
「久しぶりね。カタリナ。結婚おめでとう」
「一体何やってんのよ」
「ほら、王宮で舞踏会が行われるでしょう?作ってもらったドレスを取りに来たの」
隣にカタリナと結婚するオリバー・クック。確かに美男かもしれない。ジェラール様のような男前というより、女性のような感じ。悪く言えば弱々しい、よく言えば儚い。今にも私を殴ってきそうな目力で私を見ると、手を握りしめていた。どうしてそんな目を向けられないといけないのかしら。私カタリナにそんな恨まれるようなことした覚えないわよ。
「良いご身分ね。私なんてアンタが着たのを手直ししてウエディングドレスを着るのよ。信じられない」
カタリナは隣にいたオリバー様のことを一瞥すると、目を細めた。
「そのことだけど、私実はアレを着てないのよ。お義姉様が着たのを貸していただいたの。私の到着より遅くついてしまったのよ」
本当は義母が私を貶めるために隠していたのだけれども。
「だから何?半年も放置されていたドレスを着るなんて嫌に決まってるでしょ。それに対して、あんたは新品のドレス。少しはこっちの気持ち考えようとか思わないわけ?」
ジェラール様が私とカタリナの前に間に入り立ちはだかった。
「これは私が与えたものだ。口を出すな。着替えてこいセラフィナ」
「あ、はい」
ジェラール様にいわれ、先ほどの部屋へ入って着ていたドレスに着替え直した。戻ると、妙な空気が流れていた。ジェラール様は私のことを見ると手を取ってすぐ外へ出た。カタリナとオリバー様の隣を通り抜けた。オリバー様は酷く怯えているようだった。カタリナはしきりに私から視線をそらし、全く見ようとしなかった。
馬車で王宮まで行く途中、ジェラール様は少し苛立っているようだった。
「何か話しましたか?」
「何も話していない」
「そうですか?」
カタリナとジェラール様の間は妙に変な緊張関係があるでしょうし、会いたくもなかったわよね。やっぱり私一人で来るべきだったのかしら。
本当なら今夜に両親やカタリナと会って話をするのかもしれないけれど、私は両親とカタリナがどこにいるのかなんて全く分からなかった。きっとあの子もこれから先のことで不安なのよね。マリッジブルーで、イライラしているのかもしれないわ。結婚式を執り行うのは大聖堂、舞踏会は王宮。そりゃあ、少しは不安定にだってなるわよね。あの子のことは大して好きってわけじゃないけど今回のことに関しては同情してしまうわ。
「ジェラール様、クック家のオリバー様はどんな方なのですか?」
化粧台の前で髪をとかしながら、ベッドで横になっていたジェラール様にたずねた。こちらを向いてから黙ってみつめた。
「前は、詳しく話してくださらなかったでしょう?」
「クック家は、元王族の次男からなる侯爵家だ。それでいて貿易業で財を成した。オリバーはそこの三男坊。母親似のハンサムだが、知能は八才程度。脳に障害を持ってる」
どうしてカタリナが結婚できたのか分かったわ。他の令嬢達は誰もそんな苦労の道へ進もうとは思わなかったのね。オリバー様もオリバー様で苦労なさっているのに、カタリナと結婚して大丈夫なのかしら。上手くいかなくてすぐ離婚なんてことになったりするような気がしてしまうわ。
きっとカタリナはクック家の財力と、オリバー様の顔にしか興味がないのね。まだ愛しあって結婚してるならまだしも、そんなこと目当てで結婚してしまったらきっとすぐ立ち行かなくなってしまうわよ。
明日へ備え早めに寝ようとベッドへもぐりこんだ。
「同情してるのか?」
「少しだけ」
「お前の境遇は知っている。同情する必要なんてない」
頭を撫でられ、そのまま抱き寄せられた。
「私はカタリナのことなんて恨んでいないんです。仕方がない事だったのだから」
「お前のそういうところは大好きだが、自業自得という言葉がある」
腕に抱えられるように、彼の胸にすっぽりとはまってしまうと、キスをされた。空いている片手で腹を触られ、太ももまで滑らせた。
「だって、カタリナだってそうやって生きたいわけじゃなかったはずです。両親によってそうせざるを得なくなってしまったのかもしれません。ジェラール様だってそうでしょう?私は貴方のことを知っているわけじゃないけど、知らないわけでもないんです。もっと違う生き方があったと思っているんじゃ、ありませんか?」
「お前だってそうだろう」
キスをされ、首筋を唇を滑らせたところで、突き放した。最近思った事だけれど、この人は他の人に比べて性欲が強いんじゃないかしら。こんな長旅で疲れた後に女を抱くかしら。最初こそ優しく割れ物を扱うようだったけれど、最近のジェラール様は、欲望をそのままぶつけてくるから、へとへとになってしまうのよ。そんなことを考える私もとても恥ずかしい。
「私は満足してます。全然幸せですから」
「俺だって満足している。お前に会えたからな」
まだあきらめずに私に迫ってきたため、寝返りを打って背を向けた。すると胸を両手で包むように揉まれて、両足の間に足をねじ込んできた。
でも、もう私の身体は疲れている。
「私は、もう眠りたいです。長旅で疲れてしまっているので」
するとそっと離れた。
「すまなかったな」




