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妹ばかり愛されて追い出された姉ですが、無口な夫と暮らす日々が幸せすぎます  作者: 城乃コトミ


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17/22

幸せをかみしめて

 初めて王都にやってきた感想としては、とても疲れるような場所だということ。人はとにかく多いし、建物ばかりで森や自然なんてものがないし、お屋敷とは比べ物ならないほどに高く広い塀で囲まれている。王様はこんなところに閉じ込められているだなんて、本当に可哀そうだわね。カタリナはこんなところに住んでいたのね。

 カタリナと結婚するクック男爵は、代々王族とも関係があり、教会で結婚式を行った後は、舞踏会を行うということだった。だからほとんどダンスが踊れない私は、特訓をしてやってきた。


「それにしても、騎士団の方々を引き連れてくる必要がありましたか?」


 馬車の後ろと前には騎士達が馬車を護衛するように隊列を組んでいた。


「最近は山賊なんかで物騒だ」

「そうなんですか」


 長旅のため腰が痛んで仕方がなかった。だから解放されたとき、本当に箱詰めから解放されたことに感謝した。宿泊するのは王宮。王宮で働いている貴族はもれなく王宮で暮らしているし、大体泊まることだってできる。王宮とはそういうところなのだ。

 カタリナが式を行う大聖堂は本当に大きかった。大きな鐘が設置され、屋根にはガーゴイルなんかがいて。有名な建築家が施したという様々な装飾も目を引いた。すでに式の準備が進められていた。


「悪かったな。お前の時はこんな大きな教会で式が挙げられず」

「そんな、私は別に気にしていませんよ。こんな大きな大聖堂で結婚式を挙げるなんてことになったら、きっと私は頭がパンクしてしまいますよ。大切なのは豪華な結婚式ではなくその後の平穏な結婚生活なはずです」


 隣でジェラール様は柔らかく微笑した。


「セラフィナを連れて行きたいところがある」

「連れて行きたいところ?」


 ジェラール様と一緒に王都を移動し着いたのは、王宮御用達のテイラーだった。他の店とは雰囲気が違う高級感のあるお店。ガラス張りのショーケースには、青い美しいドレスが飾られている。この通りはどこもかしくも、貴族が使う店ばかりなのかもしれない。なんだか高級なドレスを着ている人たちばかり、私の服がみすぼらしく見えてくる。


「モンフォールだ」

 

 店主は年配の女性で、腰が曲がり、優しそうな穏やかそうな人だった。


「お待ちしておりました。できてますよ」

「セラフィナ、着替えてこい」

「着替える?」


 年配の女性に連れられ奥の部屋へ入るとそこは全身鏡がおかれ、ただけのシンプルなものだった。女性が持ってきたのは、深い緑色をした、シックなボールガウン。胸元には銀糸で装飾が施され、スカート部分には花が舞い落ちているような模様がしつらえてある。


「素敵」


 思わず感嘆のため息とともに言葉をつぶやいた。私の大好きな緑色。


「そうでしょうそうでしょう?ウチは王宮御用達ですからね」


 女性と共にドレスに着替えてみると、すべてぴったりだった。ドレスの丈から、胸元、ウエストまで計算しつくされている。


「まあ、とても似合ってるわね。さあ、いらっしゃい」


 うっとりと鏡を見つめていたところを、女性に手を取られ、ジェラール様が待つ部屋へ戻った。ジェラール様はしばらく私のことを見つめていた。こんなドレスを着ることなんてないから、恥ずかしくなってしまって、私は目をそらしてしまった。


「あんまり似合ってないかもしれないです」

「とても綺麗だ」


 まるで初めてジェラール様と出会ってからの時のように私は顔が熱くなった。いつもいつも適当なドレスばかり着ているから、変な気持ち。


「ジェラール・モンフォールにと、王宮へ届けておいてくれ」

「はい、分かりました」


 ジェラール様に左手を取られた。彼は胸ポケットから指先でつまめるような、小さなものを取り出すと、私の左薬指に滑り込ませた。エメラルドがはめ込まれたその指輪は、ぴったりと私の指にはまった。シンプルなデザインで、エメラルドが輝いている。


「渡すなら、王都の腕のいい者に作らせようと思ったら、こんなに時間がかかってしまった」


 左手を照明の光にかざしながら見つめた。


「ありがとうございます。とても嬉しいです。私が緑色が好きだってどうして知っていたんですか」

「お前は植物や自然が好きだから、同じ色にしようと思っただけだ」


 思わず私はジェラール様に抱き着いた。こんなに幸せな事ってないわ。目頭が熱くなって、我慢しなければ涙が零れ落ちそうだった。


「本当に、幸せです」

「俺もだ」


 私を撫でる手が相変わらず大きくて、優しくて。半年前のことを思い出した。あの時はジェラール様のためと思って必死だったけど、いつの間にかこんな風になった。

 顔が近づき、キスをしそうなほど近づいたとき、扉が開いた。


 目に飛び込んできたのは、また一回り太ったカタリナの姿。私はジェラール様から離れて、目を丸くしてつま先から頭のてっぺんまでまじまじと見つめた。


「カ、カタリナ?」


 彼女は眉を顰め、目を細め嫌悪を現した。


「なんで、ここにいんのよ。アンタが」

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