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異世界経営録 〜補佐官ガイウス〜  作者: ゆさひ
第二章 セプティムス
21/62

2-6 暗き森、二頭の獣

ご興味を持っていただきありがとうございます。


<登場人物>

ドゥモス:???

ハモン:???

ドマ・リュカイオン:ソリスの第一人者。共和制下でも一度も失脚することなく20年以上君臨している。

森の中は、昼であるはずなのに、なお暗かった。

分厚い梢が頭上を覆い、わずかな光すら苔むした地面に届かないよう、意地悪く葉が重なりあっている。

朝からたゆたう霧は、森を飲み、肺の奥まで湿らせる。

空気は重く、肌にまとわりつく冷たさが、季節すらもあいまいにしていた。

地面はどこまでもぬかるみ、歩くたび、靴底がぬかるんだ泥に吸い込まれる。


この森は、果てがない。

そう思わされるほどに、ただ深く、ただ同じ風景が、何度も何度も目の前に現れる。


霧の奥から、微かな滴る音がする。


「こんなところにいたら身体が腐っちまう。」


一人ごちるように男が呟く。


防衛の最前線、簡易的に土嚢を積み上げた質素な塀の上で、昼なおくらい森を見据えて吐き捨てる。

共連れは何も言わず、敵が密かに隠れていようとも発見できない森を恨めしく見ながら、警備に全身全霊を使っている。


男の背後から馬のいななきが聞こえ、蹄の音が近づいてくる。


男は見向きもせず、眉間に皺を寄せて、なお森に見入っている。


「ドゥモス様。こちらにおいででしたか。」


6ぺス(182㎝)の大男が完全武装した姿で馬から降りつつ話しかけた。


「ハモン。何用あってここまで来た。お前には補給線の堅守を命じていたはずだが。」


ドゥモスと呼ばれた男は振り返らず答えた。

不快感が眉間に出ている。


「最前線に兵糧を送る道で埋伏されいた敵を一掃して安全確保しておりますのでご心配には及びません。王都から書簡が送られてきましたのでお届けに上がりました。伝令係をちょいと可愛がってやりましたら内容を教えてくれたので私が必要かと思いまして。まだ、封は空けておりません。」


丸められたパピルス紙をぞんざいにドゥモスに手渡しながらハモンは経緯をなんて事のないように伝える。


「農地派の爺たちが無理難題を言っているのか?」


振り返り書簡を受け取りながらドォモスはさらに怪訝な顔をする。

その言葉を口にするのも嫌悪感が立つという顔だ。


「そのようで。」


体の前で手を組みながらハモンはドゥモスが書簡を解き読むのを待つ。


「東の最前線に我らを送り込んで、今度は南の戦線にも兵を拠出しろだと?」


身震いするような怒りがドォモスから立ち上る。声が怒りで震えている。


「いつもの爺様たちらしい嫌がらせですな。」


飄々とハモンが返す。


「いっそのこと王都に攻め入って農地派の輩どもの首かき切って回れば少しは気が晴れるか。」


ハモンの怒気の無さに当てられて、ドゥモスも毒気を抜かれて軽い口調をで返す。


「南への派兵、私、ハモンにお任せできませんでしょうか?」


「ただの駐軍であれば、お前ほどの将を向かわせなくてもよいと思うが、何か腹案があるのか?」


「腹案というほどのものではありませんが。軟弱な南の連中に一泡吹かせてやろうかと思いまして。それと南の軍団には影響力が無い我らの弱みを、勝利という見えやすい形で示すことで、幾分か影響力を獲得できればと考えます。そうすると東と南に爺たちが嫌がる勢力ができあがるのではないでしょうか。」


「面白い考えだな。しかし、お前が圧倒的に勝つ、というのが最低条件だが、荷が重いか?」


「はっ。南のやつらは戦い慣れておりません。日々これ戦闘の我らの敵ではありません。」


「では、ハモン。おぬしに1万の精鋭を与えよう。南のドマ・リュカイオンの首まで取ってきていいぞ。」


「1万もいりませんが、ソリスまで攻めあがるのは業腹ですな。では、ありがたく受け取りまして出立いたします。ドゥモス様も前線を進めていただき計画の完遂を祈っております。」


「お前に祈られても1ぺスも進まん。こちらはいつも通りに進める。着実に、地道に、だが、腹の中を掻きまわす蛇のようにな。」


凍るような笑顔でドゥモスが返して来た。ハモンですら背筋が凍るような笑顔だ。


「お前の代わりにカルネスを後方部隊の将につけておけ。」


「カルネス様でよろしいのでしょうか?まだお若く経験も足りていないかと思いますが。」


「バカ息子にもそろそろ試練を与えなくてはいかんだろう。そこでつまずくようならそこまでだ。」


何事もなかったのように吐き捨てるドゥモスにハモンは苦笑いをする。


「カルネス様は立派にお役目を果たします。なにせ私が手塩にかけて稽古を積みましたらからな。この頃では軍議盤では私に勝てはしないですが、無様に負けることも無くなってきましたらな。」


大きな声で笑いながら、委細承知、と言い置き、ハモンは蹄を響かせて後方に去っていった。


「カルネスがハモンに勝るとも劣らない。そんな馬鹿なことがあるか?あのカルネスが?」


息子の成長に驚きつつ、自軍きっての智勇兼備したハモンに肩を並べつつあるという新事実に頬が緩むのを抑えられなかった。


「さて、ハモンに負けていられないな。我らも暗き森に巣くう蛮族を一掃するぞ!」


ドゥモスは配下に鷹のような鋭い一瞥をし、一声吠えた後、最前線から馬を走らせるのだった。


ソリス・シシーナ周辺地図

挿絵(By みてみん)

※画像は予告なく変更されることがあります

ご覧いただきありがとうございました。

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