第9話 市街戦2
カキーン
金属と金属がぶつかり合う音が響いた。正確に言うとルークの持つ剣だけ音を発していた。
デカッチの一物はそもそも金属ではないのでそんな音はしない。
ルークは信じられないといった表情で男を見た。
「あり得ない!」
だって普通そうだろう。剣で一物を切ろうとしたら一物はスパッと切れるものだろう。ただの肉片だぞ。それがルークの剣を押し返すとは。
ルークは危うく自分の剣が折れるのではないかと焦った。
だがそんなこと考えている場合ではない。コイツはかなりヤバい。露出狂すぎてヤバいという意味ではない。
強すぎてヤバいという意味だ。このままでは殺られる。何とかせねば。
だが相手もルークと同じように動揺していた。
追撃してこない。その場に留まって動きが止まっている。あっちからは何もしてこない。
ここは見つからないように逃げるべきか。相手は今、固まっている。逃げるには今しかない。
まぁ、この街には友達が多いが未練はない。今は自分が生き残ることが最優先だ。
ルークが唯一彼らにできることは彼らが無事に逃げ出せることを祈ることのみだ。ルークはそーっと後ろへ下がった。
デカッチは混乱していた。ノー・ソイ・ボールドーを狩りに来たのだが、新たなヤベー奴に出くわした。
コイツ、絶対に一般人ではない。普通の人間が彼の一物を弾き返せる訳がない。
普通、触れたら切断される。デカッチの一物はそれほどすごい物なのに奴の剣は切断されなかった。そんなこと絶対あり得ないのだ。
これは緊急事態だ。相棒と合流せねばならない。デカッチは相棒のモッコに念話で事の次第を伝えた。
「モッコ、いるか。デカッチだ」
「あぁ、デカッチ、どうした」
「今、ヤベーことになっている。スゲー奴に遭遇した」
「まさかノー・ソイ・ボールドーを見つけたか」
「いや、違う。別のスゲー奴だ。ソイツ、俺のセイバーを弾いた」
「はぁ、そんな事できる奴、いる訳ねーだろうが。お前、寝ぼけているのか!」
「寝ぼけてねーよ!お前、すぐこっちに来い。この野郎を確実に仕留めるぞ」
「わかった。今すぐ行く」
ノー・ソイは一連の剣戟を見ていた。一連の剣戟といってもたった一撃だけどな。
あの青年は超人戦士の一撃を自らの剣で弾いた。こんなこと常人には不可能だ。
超人戦士の一物の一撃を防げる物は超人戦士の一物だけだ。なのにあの青年はそれをやってのけた。
間違いなくあの青年は彼が探していた青年に違いない。何が何でも助けなければならない。
このまま傍観していたらあの青年は生きて帰れない。
あの青年は新たなる希望だ。もう潜伏などとは言っていられない。
デカッチはモッコが到着するまで待った。
だがルークから目を離すことはなかった。彼が動かず何もしなかったのはモッコと念話でやり取りしていたからであって、呆然としていたわけではない。
デカッチはルークが後ずさり逃げようとした所を見逃さなかった。
「おい、小僧。どこへ行く気だ」
「あははは⋯⋯」
ルークは笑って誤魔化した。
この短剣はあと何撃耐えられるわからない。もう1本あるがそれも長くは持たないだろう。
これは人生最大のピンチ!ルークは蛇に睨まれた蛙みたいに動けなくなった。もしかしてルークの人生、終わったかも。
ノー・ソイはもう1つの強い気配がこちらへ向かって来ているのを感知した。
コイツラが合流する前にあの青年を助けなければならない。未熟とはいえ、彼はあの一撃を弾いたのだから。
ノー・ソイは覚悟を決めるとスボンのジッパーを下げた。そして彼の一物を出しておっ勃てた。
そして例の超人戦士の前まで素早く移動すると渾身の一撃を放った。
ブーン
2つの一物が交差して異様な音を立てた。
デカッチは何とかこの一撃をなんとか受けたが、かなりの勢いで突っ込まれたのでかなり後方まで吹っ飛ばされた。
後方からのいきなりの襲撃だったため、ほとんど対処する暇がなかった。
その上、殺気もほとんど感じられなかったため襲撃の瞬間までわからなかった。
デカッチはかなりの深手を負ってしまった。生死の程はわからない。
ルークは一連の剣戟を見ていた。正確にいうと速すぎて何が起こったのかよくわからなかった。
老人がいきなり現れたと思ったらルークの前にいた変態男が勢いよく吹っ飛んだ。
助かった!ルークは胸を撫で下ろした。礼を言いたくて老人の方を見た。
ナニ!コイツも露出狂か!!
老人は一物を縮めてズボンの中に入れるとジッパーを上げた。老人はルークの方を見ると丁寧に言った。
「死にたくなければ付いて来なさい」
ルークは頷くと彼に付いて行くことにした。
これにて第1章『ルークの覚醒』完結になります。
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