第6話 自警団
今朝のシャブーレは平和だった。いつも国境付近では黒い煙が立っていたが、今朝は黒い煙が見られない。ボコール帝国がそう簡単にエイナールの征服を諦めるとは思えない。
とその時、シャブーレの街で敵襲の合図の鐘が鳴り響いた。ルークはちょうど朝練を終えて朝食を取っていた。何事かと思い急いで外へ出た。ルーク以外の住人も外へ出て様子を伺っている。
「何の騒ぎだ。いったいどうなっている?」
「さっぱりわからない」
人々はお互いに疑問を投げかけた。これでは埒が明かない。
敵襲と言えばボコール帝国との国境へ伸びる道に繋がる北門しかない。人々は情報を得るためそちらの方向へ歩いていった。ルークもその内の1人だ。ルークは念の為、短剣を2本帯剣している。
他にもルークと同じように帯剣している人も見かける。自警団の連中だな。野次馬も結構いるな。
本当にこれが襲撃ならこいつら邪魔になるな。早く避難しろよな。
その時だ。前方から爆発音が3つした。前方に黒煙が舞い上がり、あたりは瓦礫の山と化す。
更に1分後、また3回爆発音がした。それが何回か続いた。
見物に来た無知な野次馬共でもこれが何であるのわからない訳がない。
北の方での異変の発生、と言ったらボコール帝国の侵攻しかありえない。ほとんどの者は来た方向へ戻っていった。ルークと自警団の連中を除いては。
その場に残った連中は広場に集まり情報収集をすることにした。自警団の中の1人は他の連中に言った。
「俺、ちょっと北門へ行って様子を見てくる」
「わかった。気を付けて行って来い」
どうやら砲撃は止んだみたいなのでそれほど危険はないだろう。
残った連中は北門から広場に通ずる道を警護した。しばらくすると様子を見に北門へ行った男が血相を変えて帰ってきた。
「どうした?なぜそんなに焦っている」
男は息を整えると答えた。
「ヤバい!ボコールのクソ野郎共が城内へ侵入してきた!」
えっ!これ、もう終わってない?どう考えても自警団ごときが正規兵に敵う訳がない。
「シャブーレの守備隊はどうなっている?」
「崩壊した。駐屯地もすでに敵の手に落ちた」
自警団の連中はお互い顔を見合わせた。どうやら何をどうしたらよいのかわからないようだ。
その中にいた1人がボソッと言った。
「俺、ちょっと家族に知らせてくるわ」
男はそう言うと南の方へ走っていった。1人が逃げると次々と彼に続いた。
「おい、お前ら、ちょっと待て。まだ諦めるのは早いぞ!」
自警団のリーダーぽい男がなだめるように言うがほとんど誰も聞いてくれない。その場に残ったのはルークとリーダーぽい男を含め数名の男だけだった。
ほとんどの連中は家族や大切な誰かがこの街にいる。街が陥落した以上、赤の他人の命にかまっている暇はない。ルークは独り身だがこの街に友人が多い。
ルークには失うものはほぼないが、友人達を見捨てる気にもなれなかった。
それに剣技を含めて古武道にも精通している。今、このスキルを活用しなくていつやるのだ。どうこうしているうちに広場に残った連中でボコール軍に一泡吹かせてやろうということになった。
彼らはボコール兵に抵抗するためそれぞれ散っていった。
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