第29話 チャスティンとの遭遇
王都を出て1週間、船をようやくチチカンダールの港へ滑り込んだ。
チャスティンはクレイに丁寧に礼を言うと例の男を探す為、街に繰り出した。
噂によると男はよく街の南東部の裕福な者が住む地区で目撃されているとのこと。
まずは宿の確保だ。宿は男がよく目撃されている地区で取った。これは丁度いい。
少しは楽に探せるはずだ。
宿はこの街一番の高級宿だ。2人は一泊金貨2枚のスイートに滞在した。スイートはマスターベッドルームとベットルームがもう1つのある。
マスターベッドルームにはキングサイズベッドが1つ置いてある。
もう1つのベッドルームにはツインサイズベッドが2つ置いてある。
2人は徒歩で街を探索しやすいように着替えた。なるべく動きやすく街に繰り出しても浮かない服を選んだ。
宿のロビーに行くと早速、街の情報収集だ。街のことは街に詳しいコンシェルジュに聞くのが一番だ。2人はコンシェルジュ・デスクに行くと早速尋ねた。
「この街の名物はですね⋯⋯」
「いえいえ、我々は観光に来た訳ではありません」
チャスティンは事の経緯を説明した。2人は不埒な露出狂を探しに来たのだと。
「あぁ、ルーク様のことですね。あの方はよくこの近くの公園にいますよ。見ればすぐわかりますよ」
あの男の名はルークと言うのか。
なんでこのコンシェルジュ、そんな事知っているのか。
てかそんなに知られていてよく牢屋へぶち込まれていないな。
やはり警備隊は何もしていなかった。これは警備隊の怠慢だな。国王に進言して罰を受けてもらうことは決定だな。
コンシェルジュによるとルークの見た目は身長190センチある細マッチョだ。髪の色は濃い茶色で短髪。顔は男が見ても惚れ惚れするほどのハンサムな男だ。
チャスティンとアークは早速、街へ繰り出した。
一方、ルークとワン・コロは少し遅い昼食を取っていた。朝練が終わりレストランでエールを飲みながら肉料理を舌鼓している。エールを何杯かおかわりした。
「よぉ、ルーク。ちょっと飲み過ぎじゃない」
ワン・コロが嗜めた。確かに、ノー・ソイが不在な為、少し気が抜けている。うるさく指導する師匠はいない。
ワン・コロはいるが、彼はフォーナスの事を理解していない。使えないのだから当たり前だ。あまりルークの行動に口出し出来る立場ではない。
「えっ、そうですか?全然酔ってないですよ」
ルークの顔はほんのり赤くなっているが、言動はしっかりしている。ルークは店員にもう1杯エールを注文しようとしたが、ワン・コロが制した。ワン・コロはルークを促すように店を後にした。
ルークとワン・コロはいつもの公園のベンチに腰を掛けた。公園には心地よい風が通り過ぎ気持ちがいい。これでちょっとは酔が冷めた。
「ワン・コロ、俺、ちょっとひとっ走りしてくるわ」
「わかった。だが公園から出るなよ。俺、ここで待っているから」
「わかった。じゃあ行ってくる」
ルークは公園内の小道を走り出した。小道と言っても幅10メーター位あるが。
この公園はこの街で一番大きい公園だ。公園の真ん中には池があり、公園の小道はこの池の周りを回っていた。大体、1周2キロくらいの距離だ。
公園の池は市民の憩いの場になっている。遊泳禁止にも関わらず、中には池で泳いでいる人もいる。
小道の脇には等間隔でベンチが置いてあり、この時間帯ではほぼ使われていた。今の時間帯は老若男女を問わず公園内でくつろいでいる。少し若い女が多いか。
ルークはしばらく走っていると若い女性から黄色い声を掛けられた。
「キャー、ルーク様、素敵。愛してる」
ルークは軽く手を振って女性の声に応じた。更に別の女性からも同じ様な声を掛けられた。ルークはいつの間にか有名人になっていた。ただ、本人にはそんな自覚は全くなかった。
今、この一連のやり取りを見て怒っている人物が居た。チャスティンだ。チャスティンはルークの前に立って道を塞いだ。
「そこのあなた、ちょっとそこで止まりなさい!」
「はい?」
「あなたですか?ルークと呼ばれ噂される不埒な輩は?」
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