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ディック・ウォーズ  作者: 天の惹
第2章 逃避の旅
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第19話 チチカンダールへ

 ワン・コロ、ルーク、ノー・ソイの3人は左岸へ向けて泳いでいった。彼等3人以外に左岸へ泳いていく人はいないようだ。

どうやらワン・コロのクルーは誰も船から退避していないようだ。船内にいたクルーも生き残れなかったみたいだ。

船にいた賊の何人かも生き残ったようだ。奴らは右岸へ泳いでいった。右岸には奴らの味方の兵がいるしすぐそこなので当然か。

だからルーク達3人はわざわざ遠い左岸へ方へ行った。セーカン川の川幅は約100メーターくらいあり、かなり広い。その上、川の流れも早い。船なしで簡単に渡れる川ではない。

ルーク達は荷物を浮袋代わりに左岸へ向けて泳いだ。左岸へ着くまでかなり下流へ流された。


 左岸に辿り着くと浮袋代わりにしていた荷物の中身を確認した。それと上流から流されてきた荷物の一部も回収した。それなりにいい収穫になった。

ノー・ソイがワン・コロに渡した金貨が入った袋もあった。

それから換金性のよい品物も回収できた。一番の収穫は複数のゴルフボール大の黒い玉が入った袋だ。それはアヘンと呼ばれる品物でどこへ行っても喜んで物々交換して貰える品物だ。ほぼ金と同じ価値がある。金代わりにこれを携行する商人も多い。

アヘンは特に軍に需要がある。軍人が怪我をするとこれをワインに混ぜて飲む。すると痛みが改善する。その上、疲れもだいぶ和らぐ。


 3人は荷物を回収すると下流へ移動した。丘にいた賊は全くの無傷だ。こちらを追ってくるかもしれない。

だが対岸にいるのでそう簡単にはこちら側へ渡ってくることはできない。もう日が暮れて暗いので川を渡るためのフェリーは動いていないからだ。

取り敢えず明日の朝まで距離を稼ぐ必要がある。

3人は近くの街まで辿り着くと早速馬を3頭買った。少々高い買い物だった。金貨60枚もした。まぁ、いいか。必要なくなったら売ればいいのだから。


 3人は距離を稼ぐ為、夜通し馬を走らせた。

暗くて危ないかもしれないが、今夜は月明かりが仄かにあり馬を走らせるのは無理ではなかった。

山賊に襲われる危険もあったが、強行した。

或いは夜の方が反って安全かも。夜に街道を歩いている旅人はほとんどいない。山賊も人のいない夜の街道で就労する気はないだろう。

なんたって夜の山賊業は開店休業状態だからな。


 日が昇ぼり辺りが明るくなると3人は休憩を取った。

彼等は襲撃のこととか今後のことに付いて色々と話し合った。

まずは襲撃だ。

あれはただの襲撃ではない。ただの追い剥ぎなら捨てた荷物を回収して穏便に済ませたはずだ。

普通、彼等はそこそこの収穫があれば手を引く。あまりやり過ぎると国家権力が介入して彼等自身が殲滅されかねん。

それに殺しはほとんどしない。これも国家権力の介入を懸念してだ。

だが奴らは荷物には全く関心を示さなかった。しかも襲撃の目的が殺しだった。

それに丘にはエイナールの正規兵らしき者もいた。国家権力が海賊まがいの行為をするとは到底考えられない。

ワン・コロにとってあの襲撃は納得のいくものではなかった。


 ノー・ソイはその疑問に襲撃にいたエイナール兵は実はエイナールの者ではなくボコールからの兵隊だと言った。奴らは偽装していたのだ。ワン・コロは怒りを込めながら言った。


「またボコールの野郎か」


 ワン・コロはシャブーレの陥落のことを勿論知っていた。

ボコールが更にエイナールの深部に侵攻しようとしていることも。

これはきっと陽動作戦だろうと。

少ない兵士をエイナールの各地へ送り問題を起こさせる。エイナールはそれらを無視することができず兵の一部をそちらへ回す。それで主力の戦力を削ぐ。

ノー・ソイは話の結論がそうなるように誘導した。本当は奴らはノー・ソイを狩るために来たことを隠して。ノー・ソイはそのことに関して罪悪感を持っていなかった。何と言っても彼も被害者なのだから。奴らに命を狙われる謂れはない。

彼等は色々と話し合った結果、共にプルードー王国の国境の街チチカンダールへ向かうことにした。

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