第17話 フロステーの街
コノー・ヤローを出港してから17日が経った。今はエイナールの首都フロステーの港に入港している。
ワン・コロと彼のクルーはここで荷物の積み下ろしをしている。
ルークとノー・ソイはその間、何もすることがなかったので街を少し見学することにした。街の中は騒々しくてんやわんやだった。
戦争がもうすぐ始まることもあり、至る所で新兵募集があった。
2人は庶民街へ行くのは避けた。
まずは飯だ。17日間、ずっと魚ばっか食べてきたのでもう飽きた。がっつり肉が食いたかった。それに野菜も食いたい。
長い船旅だと野菜も段々萎れてくる。時々移動販売船が近づいて来て色々野菜などの新鮮の食料を買うことができたが、それでも野菜は2~3日たつと萎れた。新鮮な野菜が恋しい。
2人はシュラスコのレストランを見つけた。そこにはいくつかの鉄製の長い串に刺さった複数の肉の塊がいくつもあった。
肉と肉の間にはピーマンや玉ねぎなどの野菜が挟まっていた。串によって肉の種類や部位が違うみたいだ。肉の余分な油が垂れて炭火に掛かり辺りに香ばしい匂いを振りまいていた。食欲をそそられる。
2人は迷うことなくそのレストランへ入っていった。
2人は席に着くとすぐにウエイターが来た。
2人は赤ワインを注文し、肉をガッツリ食べたいことを告げた。
しばらくするとウエイターがカートを押して戻って来た。カートには何種類もの串に付いた肉が載っていた。
ウエイターは皿に串ごと肉を載せるとソースを付けてくれた。ソースは岩塩、オリーブオイル、酢で味付けしたシンプルなソースだ。
そして2人のテーブルの上に置いた。2人は食事は始めた。
「この焦げの香ばしさがたまらない。たっぷりの肉汁が口いっぱいに広がってくる。それと野菜のアクセントと相まっておいしい」
「このソースも素晴らしい。肉汁のギトギト感を酢をベースとしたソースがスッと胃の中に押し流してくれる」
やっぱりバーベーキュー式の肉料理、最高だよな。2人は久しぶりの肉料理を堪能した。
2人は奴の存在に気づいていなかった。蛇のようにしつこく付き纏う野郎を。
そいつはデカッチの片割れのモッコだ。
シャブーレの街でデカッチはノー・ソイに不意打ちを喰らいふっ飛ばされた。それが原因で死亡した。
デカッチほどの達人をたった一撃で葬った奴、当然のことながらモッコはそんな輩を放っておく訳がなく、しつこく嗅ぎ回っていた。そしてエイナールの首都フロステーに辿り着いた。
どうやらモッコはコノー・ヤローの街でルークとノー・ソイを追い越したようだ。コノー・ヤローで2人を見つけることができなかったモッコはさらに南へ進んだ。
そんな時、ワン・コロのモジョラー号に乗船した2人も南下して旅を続けた。モジョラー号は足が早かったので不幸にもこの街でモッコに追いついてしまったようだ。
その日、モッコはディッカーを探していた。
もうモッコが探している人物はディッカーに決定だ。あんなことができる奴はディッカー以外にあり得ない。
そしてあんなことができるのはあのディーカー、ノー・ソイ・ボールド以外あり得ない。
モッコが大通りを歩いていると老人と若者らしき者が肉料理のレストランへ入って行く所を見かけた。老人は顔をフードで隠しているためよく見えないが、何となく皇帝レイダーが言っていた人物と似ていた。体格とかはそっくりだ。
モッコは思った。老人は食事する時、きっとフードは外すだろうと。その時が来るまでモッコは気配を殺して隠れた。
そして老人と若者はフードを外すと食事を始めた。モッコは老人がノー・ソイ・ボールドだと確信した。
ただモッコは自重した。
今、ここで騒ぎを起こせば外交問題になる。
モッコはノー・ソイに間者を1人付けた。
モッコ自身はノー・ソイがどのような経路でこの街まで至ったのかを調査した。
どうやら陸路ではなさそうだ。陸路で入城した形跡はなかった。船でここ数日、入港したのは数が限られる。
定期船以外で身元不明人を船に乗せる輩がいるか調べていく内に1つの密輸船に行き当たった。モジョラー号だ。
モジョラー号は翌日の夜にはプルードー王国へ向けてフロステーを出港するようだ。途中で待ち伏せすることにした。
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