第14話 ワン・コロ
シャブーレの街を出てから1週間後、2人はコノー・ヤローの街に着いた。
ここからは船を使っての移動だ。定期的に旅客用の船が出ているが、それを使う事は避けた。
シャブーレの街でデカッチは少なくとも重症を負っている。もしかしたら死んでいるかもしれない。
超人戦士にそんなことができる奴が今、野放しになっている。そしてそんなことができる奴はノー・ソイ以外ありえない。だからボコール側も厳重警戒しているだろう。
ボコールのスパイが至る所で必ず見張っているはずだ。
ノー・ソイ達が定期便の船に乗る所を目撃されれば関係ない客が巻き込まれかねない。それは避けたい。
2人は船を雇うことにした。
2人はヤロー側の港街へ行った。
ルークは目立たないようにフード付きのクロークを身に着けた。
ヤロー側の街はコノー側と違って庶民が多く住む地域だ。
街の至る所で新兵募集をしていた。ヤロー側の方が新兵募集がやりやすい。金持ちより貧乏人の方が与し易いからな。
それに貧乏人なら誘拐してそのまま強制的に入隊させてもそれほど問題にならない。
ルークみたいにヤローの街になんの伝手もない人間ならなおさらだ。
余計なトラブルを避けるため役人風の連中には近づかないように気を付けた。
ヤロー側の港では怪しい商品を扱う輩や運び屋が多く居る港だ。
2人は港街を方々歩き回り運び屋の情報を色々と仕入れた。
2人の求める運び屋の条件、それはその運び屋が彼等の事情を何も詮索せず船に乗せてくれることだ。
情報を仕入れて行くうちにある男の名前が浮かんできた。その男の名はワン・コロ(Wang Coro)と言う。
男はヤローの街に居る時はよくロー・デッドという酒場で屯しているとのことだ。
ロー・デッドは密造酒を裏メニューで売る無法者が屯する酒場だ。その酒場へ行けば大抵会えるみたいだ。
情報によればワン・コロは今、ヤローに滞在中だ。2人はロー・デッドへ向かうことにした。
2人はロー・デッドへ入ると辺りをゆっくりと見渡した。
情報を探っている時に当該の人物の見た目は教えてもらっている。それらしき人物が奥の方で酒を飲んでいる所を見つけた。
2人は男が座っているテーブル席の方へ歩み寄るとテーブル席への同席を男に求めた。
「まぁ、1杯奢ってくれるならいいよ」
ノー・ソイは酒場の給仕を手招きで呼ぶと注文を出した。
「彼におかわりを1杯。我々にはエールを1杯づつ」
給仕が酒を持ってくるとノー・ソイは支払いを済ませた。そしてここに来た核心に触れた。
「我々は船でプルードー王国まで行こうと思っている。それで我々をそこまで乗せってくれる船を探している」
「よう、老人。いい人物を見つけたな。その人物ならあんたの眼の前にいるぜ」
「ただ、1つ条件がある。我々のことを一切詮索しないことだ」
「だったら俺が最適だぜ。お前らの事情など知ったことではないからな。そもそも身元を隠す必要がない奴なら定期船を利用するだろう。ただしすべては金しだいだがな」
「それなりの報酬は払うつもりだ」
「プルードー王国までなら金貨150枚だな」
それを聞いたルークはぶったまげて声を上げた。
「ボッタクリじゃないか。プルードー王国までの船賃は2人で金貨4枚が普通だ。たとえ船を雇ったとしても金貨50枚が妥当だ。どうせ南下するつもりだろ。ついでの客にそんなに取るのか」
「おいおい何寝言を言っているんだ。金貨4枚って定期船の運賃だろう。それに曰く付きの人間なら普通の価格の3倍くらい取られても文句は言えまい。嫌なら他を当たってくれ」
ノー・ソイはそれを聞いてしょうがないと思い納得した。
「わかった。雇おう。出発はいつだ」
「明日の晩、深夜12時に港を出港する。金を忘れずに持ってきな」
ルークとノー・ソイは酒場を後にした。
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