第13話 ルークの秘密
次の日、朝食を食べ終えるとコノー・ヤローへ向けて出発した。ノー・ソイは昨日の説明の続きを始めた。今回はノー・ソイの旅の目的を中心に話しを始めた。
ノー・ソイはあの時にシャブーレの街に居た理由を説明した。彼は新たなる希望の星を探してシャブーレを訪れていたのだ。
その希望の星とは皇帝レイダーに対抗できるディッカーのことだ。
そして今頃18歳になっている新たなる希望のディッカーを見つけて保護することだった。
時は遡ること18年前、ノー・ソイは闇堕ちしたレイダーと対峙していた。
あの時は際どい戦いだった。レイダーの力はノー・ソイを僅かながら凌駕していた。
不利な戦いの上、ノー・ソイはレイダーと対峙の他に別の使命も負っていた。
ある子供を連れて亡命することだ。その子供とは非常に有能なディッカーのダムジラ・リックサッカー(Dumzilla Licksucker)と姫巫女との間に出来た子供だった。
実はルークは有能なディッカーの遺伝子を継いだ子供だった。
ディッカーの遺伝子を継いだからと言ってもその子供がディッカーとして覚醒する可能性は必ずしも高くない。普通の人よりは少しましと言ったところだ。
だがダムジラと姫巫女との間に出来た子供は特殊だった。まだ思春期に達していない勃起もできない子供にフォーナスがわずかながらに体から出ていた。
ノー・ソイはその時に感じた。これはノー・ソイがこの子供を救うために神から与えられた使命なんだと。
始めは戦いに専念するために子供の救出することを拒んだんが子供の特殊性を理解し、考え方を変えたのだ。
ノー・ソイはレイダーに負けて殺されたと偽装して、その子と共に自由商業国連盟から脱出する手筈を取った。
ルークが思春期に達していない子供にも関わらずフォーナスを顕現できたのは母親の影響ではないかとノー・ソイは推測した。
母親は姫巫女だ。云わゆる魔女だ。女には当然ではあるがフォーナスを顕現することができない。一物がないからだ。
だが女には女としての特殊な力がある。それが魔女である。魔女の反対バージョンの魔男がいないように、フォーナスの反対バージョンの力は存在しない。
魔女の力はフォーナスと違って幼い女の子でも顕現する。だが先日、ルークがペッカーと対峙していた時、ルークが持つ短剣が青白く光った。まさに魔女の力がルークに覚醒したと。
ちょっと待て。ルークは男であって女ではない。魔男は存在しない以上、魔女の力を男が出せる訳がない。
実はルークは双子の片割れだった。もう1人の子は女の子で生まれることはなかった。
1つの可能性としてはルークはもう1人の片割れの力も受け継いだと言う事だ。
ルークは同一の個体内に異なる遺伝情報を持つ生物、俗に言うキメラの可能性がある。
だから生まれてからそう経っていないにも関わらず魔の力を使うことが出来、フォーナスを僅かながらであるが顕現させる事が出来たのかもしれない。
そしてデカッチと対峙した時に持っていた剣が青白い光に包まれたのもなんとなく納得できる。
ルークはここまで色々と話しを黙って聞いていたが、1つ気になったことがあった。彼の両親のことだ。彼等らはどうなったのか?その事をノー・ソイに訪ねた。
「申し訳ないが彼等はペッカーによって殺された」
やはりそうだったのか。
でなければノー・ソイではなく彼の両親が彼を国外へ逃がしていただろう。
だが、ルークに記憶にノー・ソイの存在は全くない。彼の育ての親は武道家の師範であってノー・ソイではない。その事についてノー・ソイは説明を続けた。
当時のノー・ソイには子供を育てる選択はなかった。
彼は逃亡中でボコール帝国の指名手配犯であり常に命の危険に晒された。そんな状況で子供を育てながら逃亡生活を続ける選択肢はなかった。
子供と一緒のまま国境を越えるのは不可能と悟り、国境手前の街にいる友人にルークを託して去っていった。その友人にはルークが立派な剣士になるようにと託した。
だが、その友人には剣士の技量がなかった。その友人は別の友人にルークを託した。
ルークは巡り巡って武道家の師範に辿り着いたとのことだ。それは反って良かったのかもしれない。ルークの足取りが完全に消えたからだ。ルークを探すのにノー・ソイですら手こずったからな。
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