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ディック・ウォーズ  作者: 天の惹
第1章 ルークの覚醒
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第1話 ルーク

 男はベッドから起き上がると素っ裸のまま窓の方へ歩いていった。男は窓を開けると心地よい風が部屋の中を吹き抜けた。と同時に月明かりが彼の鍛え上げれた体を照らした。正に完璧に鍛えられた体だ。6つに割れた腹筋、程よい厚みの胸板、二の腕に薄っすら現れた静脈血管など、体のどこ一つを見ても1片の曇りない見事な肉体美だ。どちらかと言えば細マッチョ、アスリートタイプだ。無駄な肉が付いていない。体脂肪率もきっと10%以下だろう。


 このような見事な体に育ったのは男が剣士として鍛えられたからだ。親はおらず、里親に育てられた。その里親は有名な剣士の一族だった。男はその一族の跡取り息子の噛ませ犬として育てられた。


 男は16歳の時に道場を飛び出して今に至る。当時はすごく嫌だったが、今は最強の剣士に匹敵する力を得たことで少しは感謝している。ちなみにこの国エイナールでは16歳で成人だ。


 男は背を外に向けて窓枠に座り、体を捻りながら月を眺めた。今晩は雲ひとつない快晴な夜だ。


「この眺めは悪くない。そしてこの俺の人生も」


 中には月に雲ひとつかからないのは風情がないと言う人もいるがルークはこっちのこうが好きだ。全く曇がない空の方がより多くの星を見られるからだ。夜空は満天な星空が見れるに限る。


 男の名はルーク・リックサッカー(Rook Licksucker)と言う。弱冠、18歳だ。道場を飛び出して約2年の歳月が流れた。今はその見事な体を活かして男娼をしている。この場合、その見事な体を活かしてとはちょっと変な言い回しだが、それは良しとする。


 今日は仕事で女の家に出張中だ。ルークは人気の男娼でなかなか予約が取れない。女は続きをしたくてウズウズしている。


「ねぇ、ダーリン。早くベッドに戻ってきてよー」


 甘ったるい声が女から聞こえた。


「わかった。今すぐ行くよー」


 ルークがベッドの方へ歩きかけたその時、家の奥の方からドアが開く音が聞こえてきた。女がビックリしながら声を上げた。


「やばい、旦那が帰って来た。ルーク、早く逃げて」


 どうやら女の夫は予定より早く帰宅したようだ。

 ルークは自分の服をすばやく回収すると素っ裸で窓から飛び降りた。だが女の夫にその後姿を見られてしまった。


「この野郎、絶対逃さん!」


 女の夫は血相変えて追いかけてきた。だが、ルークにとってこれは慣れっこだ。華麗に窓から飛び降りると服も着ず、一目散に退散した。町中を素っ裸で走り通したので、女の黄色い声があちこちから響いた。


「キャァー!ルーク様素敵」


 ルークはそれに答えるように手を振りながら走り去った。流石、鍛えられた肉体だ。中年の運動不足の男には到底追いつくことはできなかった。ルークは余裕しゃくしゃくと女の夫の追跡を撒くと路地に隠れて服を着た。その後、何事もなかったが如く帰宅した。


 まぁ、これで家庭が崩壊することはないだろう。中年の男が若い綺麗な女を妻にもらったらそう簡単に別れることはないだろう。少しゴタゴタがあるかもしれないが。ルークは女の浮気相手ではない。たまたま一晩雇われただけの男娼だ。家庭が壊れようが関係ない。

新連載です。


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