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適当  作者: 正倉院ネムル
1/3

かつて世界は一つの大陸——パンゴアであった。

大地も海も空も、生命さえも、そのすべては女神ジオヘルナの手によって創られた。

だが、その楽園は終わりを迎える。

宇宙より飛来した謎の存在が、大地を、空気を、命の営みを汚染し始めた。

女神は世界を二つに分けた。汚染された地は「魔界」、清浄なる地は「人間界」。

そして魔界に残された者たちは、やがて「魔族」と呼ばれる種となり、人間を深く憎むようになる。


——時は流れ、今。


「斬れ。女も、子も、容赦するな。ここは“奪われた我らの土地”だ。」


燃え上がる村に、号令が響く。

リアは、その声の主を見つめながら、震える手で剣を握りしめていた。


自分は魔族。

魔王アポカリスに忠誠を誓い、魔王軍の一兵として戦っている。

それが「正義」だと、教えられてきた。

この地——ヴルガータは、かつて魔族の故郷。奪われたものを取り戻すのは、当然の権利のはずだった。


だが。


リアの目の前で泣き叫ぶ人間の子供。

その傍らで既に冷たくなった母親の亡骸。

仲間たちは笑いながら家々を燃やし、逃げ惑う者たちに刃を振るう。


「なぜ……私たちは、こうまでして、憎まねばならないの……?」


その問いは、誰にも届かない。

魔族に「慈悲」などという言葉は存在しないはずだった。

だがリアは、それを抱いてしまった。進化の過程で捨て去られたはずの、「人間の心」を。


遠く、空を裂くように、白銀の剣が舞う。

人間界の騎士が村に到着したのだ。

リアは剣を構える……だが、その手は、もはや戦うためのものではなかった。


自分は、何者なのか。

この戦争に、意味はあるのか。

そして、ジオヘルナは、なぜ自分たちを見捨てたのか。


問いと矛盾を胸に抱え、リアの戦いは始まった。










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