永遠の停止少女
ガタンゴトン、とそんなに揺れのない、速くて快適な新幹線へ乗り。
更には駅からのバスの中で揺られながら最寄りへと進み、目的地まで歩いていく。
……などと、そんな快適で健全な旅行などをする気は一切なく。
東京駅には行ったものの、席やら何やらの手続きが面倒臭かった鈴野は、お土産である東京バナナを三箱ほど購入した後、一番最初に見つけたタクシーを捕まえて目的地である冨士山近くまで走らせていた。
「……しかしお客さん、本当に良かったのかい? 絶対電車で行った方が楽で速かったと思うけど」
「ああ、良いんだ良いんだ。どうせ貰った旅行費だし、余らせる方が失礼ってもんだからよ」
「……最近の娘は凄いねえ。おじさん、ちょっと心配になっちゃう」
ひらひらと数枚の札を見せびらかしながら、先ほど買ったおにぎりを齧り付く鈴野。
先ほど寄ったSAでトイレ休憩と昼食を挟み、更に軽食まで購入しつつ。
わざわざ拘束に乗るかを聞いてくれた優しい運転手だったこともあり、ラーメンやらコーヒーを奢るほどに和気藹々と進むこと数時間。
出発前は昼すら迎えていなかったというのに、目的地に着く頃にはすっかり空は夕暮れに染まってしまっていた。
「……本当にここで良いのかい? こんなとこ、何にもないんだけど……自殺なんて考えてるならよした方が──」
「心配すんなって。知り合いが近くに家持ってんだ。泊めてもらって、明日には電車で帰るっての」
「……そうかい。なら、おじさんはもう行くよ。良い旅を」
言葉通り何もない、見渡す限りを緑と山で埋めた道路に降り立った鈴野。
帽子を下げて一礼し、扉を閉めて去っていくおじさんのタクシーを見つめながら、先ほどの言葉についてつい口元を緩めてしまう。
妙な誤解が解けたのかは曖昧だが、まあ所詮は一期一会の関係だし別に構わないんだが。
しかし自殺でも考えていそう、か。……ふふっ。昔の話さ、遠い遠いあの頃のな。
「さあて行くか。……変身」
今日はそういう気分だったのか、少し気取った口調でその言葉を唱える鈴野。
そうして田舎に現れた桜髪の魔法少女は、空を飛ぶことなくあからさまに浮いた格好で歩を進めていく。
鴉の囀りに虫の声。暖かな風のそよぐ自然を肌で実感しつつ、夜の散歩を続ける鈴野。
最近山に縁があるなと思いつつ、変わらぬ景色が少し退屈になった頃。
周辺に並べられた無数の魔力を捉え、それが敵でも澱みでもなく馴染みある人物の物であることに気付く。
「ここ……だな。分かりやすくて結構じゃねえの」
まるで童話に出てきた白い石、或いはパン屑の道しるべのようだと。
したり顔で待っているであろう、ロリババアのお茶目に一応の感謝し、けれどここまでするなら迎えに来いよとも思いながら誘導に沿って進んでいく。
するとある時、何かを越えたような感触を感じ、その直後、つい先ほどまではそこになかったはずのお屋敷が目の前へと広がった。
「相変わらず見事な結界だこと。こりゃもう百年くらいは税金は取れねえだろうな」
「失敬じゃな。ちゃんと納税しておるわ。まあ、金で買った偽物の身分ではあるがのう」
肌に伝わる空気すら違う、鏡界よりもなお異界らしさのある世界。
周辺を覆う、誰にも知られぬ大結界。世界を隔てり、あるとなしを共存させた大魔法。
自分には到底為し得ない神業に感嘆しつつ、季節や環境お構いなしに生っているミカンの木に近づき、一つ頂こうとした鈴野を遮る声。
変わりのない声色だと、桜髪の魔法少女がミカンから手を放して振り向けば、そこにいたのは彼女にとって馴染みある少女がぽつり。
深緑の上質な着物を纏い、結月よりも一回り小さく、愛らしい姿に似合う笑みを浮かべる黒髪の少女がそこにはいた。
だが鈴野は知っている。
彼女は少女であってそうではなく、遙か過去から生きる賢老であると。
現存する魔法少女の中で最も長く活動するであろう、我ら旧世代の中でも断トツに特殊な老少女のことを。
「久しぶりじゃノイズ……いや、今はもうベルじゃったか。ああでも、ここは素直に姫ちゃんも捨てがたいのう」
「どれでも良いわ。にしても、あんたはまったく変わらねえな。魔法少女エターナル……いや、永婆さん」
「うむ。ところでお主、どうして変身しとるんじゃ?」
桜髪の魔法少女に疑問を投げかけた着物の少女。その変身名はエターナル。
最古にして最初。時代遅れの自らを揶揄するだけの、永遠と不変を冠するだけの少女であった。
魔法少女エターナル。永と呼ばれた老少女と再会し、屋敷に招かれて数時間後。
夜も更け、豪勢な夕食を振る舞われた鈴野は腹を擦りながら、案内された風呂で汗と疲れを流すことにした。
「ふー極楽ぅ。しっかし相変わらず料理上手いな、永婆さんは」
「そうじゃろうそうじゃろう? 振る舞う相手などとんとおらんが、錆び付かせるには惜しいと自分でも思うほどじゃ」
数多の星が輝く夜天の下。タオルを頭に乗せて湯に浸かり、顔も声も蕩けさせる鈴野。
整った黒髪の少女──永は盆を湯船に浮かべながら、手も足も伸ばし寛ぐ鈴野の隣へと腰を下ろし、盆に乗せられていたお猪口を差し出した。
「……知ってんだろ? 酔えねえぞ、私は」
「じゃが喉を通らぬわけでもあるまい? 月を見上げな再会の乾杯、この年寄りめの戯れにつきおうてくれ」
軽く息を零し、それからお猪口を受け取り、永の持つ徳利へ打ち付ける。
まるで子供を褒める親のように、心の底から慈しみを顔に出す永。
そんな隣の少女を流し見つつ酒を呷れば、舌がぴりつく程度に辛く、けれども爽やかな風味と喉越しが口内を渡っていく。
「……悪くない。さてはこれ、結構こだわってんだろ?」
「当然じゃ。最早時代遅れの老骨。嗜みなど、数えるほどしかあるまいて」
「……嘘つけ。さっきスマホいじってただろうが」
つい先ほど、自分どころか都会のJKすら顔負けな滑らかさでスマホをタッチしていた女が、よくもまあいけしゃあしゃあと。
そんな風に内心で毒づきながらも、まるで昔と変わらぬ笑い方の少女に、鈴野の力も一層に抜けていく。
「しかしお主、煙を吸うようになったんじゃな。かつてはあんなにも嫌っていたというに」
「……まあな。なんかふと、吸いたくなっちまってな。それからは惰性……いや、どちらかと言えば感傷か」
「そうかえ。しかし銘柄も同じとは、やはり師の後は追うものなんじゃのう……」
何かを懐かしむように、永は思い出を呑み込むように酒を喉へと流し込んでいく。
そんな様子の老少女に鈴野もまた遠い過去を、独りの魔法少女に白い部屋から連れ出され、共に戦った激動の日々を思い出してしまう。
馬鹿がいて、阿呆がいて、変態がいて、カスがいて、クズもナルシも陽キャもその他諸々もいて。
そして婆さんが一歩後ろから微笑んで、あの人が怒鳴って犬野郎が宥める。……懐かしいな。
「……で、何故私を呼んだ? 昔話を興じるため、わざわざ手紙を送ってきたわけじゃねえんだろう?」
「……まあのう。しかし姫ちゃんや。そう急がずとも、儂の力なくとも夜は長いのじゃ。急いて本題だけ話すのなぞ、それこそあまりに興ざめであろう?」
鈴野の問いをいなしながら、更に徳利に口を付ける永。
そのなりで直飲みはどうかと思わなくもないが、緩むと雑なのは昔からだと自分もお猪口に口を付け、一気に残りを口へと流し込む。
……まあ確かに、悪くねえよこんな時間も。久しぶりすぎるからな。
「最近はどうじゃ? あの三人とは連絡取ってるのかえ?」
「いんやぁ? 偶然からギアルナの遣いには会ったが、犬野郎とイナリはあれっきりだよ」
「おや、イナリもかえ? 確かお主ら、相当に懇ろな関係じゃった記憶が」
「ふざけんな。あの変態女、昔私をホテルに連れ込んだんだぞ? 法が通じるなら是非とも裁いて牢にでもぶち込んでほしいね」
ピンクな部屋での苦い過去、それからあの狐耳を生やした魔法少女を思い出し、つい立ち上がって声を荒げてしまう鈴野。
はあはあと息を荒げ、私の両手を押さえつけてベッドに押し倒してきやがったあの雌狐。
あのド変態クソレズ巫女の強行に流されかけ、一度でも体を許しかけたのは今でも私の恥であり屈辱だ。
大体ああいうのはもっと無理矢理じゃなくてだな、もう少しムードを気にするべきなんだよ。
あのエロ狐はその辺を分かってねえ。あの頃の私の体なんて貧相なもんだったが、それでもやるならせめてもう少し──。
「まあ過激ではあったがのう。しかしあれはある種、一途の鑑であったような娘じゃからな。そも、あれはお主が何でもすると軽はずみに口にしたせいでもある。儂からすればお互い様のじゃれ合いじゃよ」
「……そう言われちゃ、まあそうだが。相変わらず、度し難いほどの甘さだな」
「そらそうじゃろう。儂からすれば、あの頃共にあった十四人は皆等しく孫同然。無碍に出来る理由が何処にある?」
無論お主も、と微笑みながら手を伸ばし、座り直した鈴野の頬を優しく撫でる永。
そんな子供扱いに少しだけ嫌がる素振りをするが、決して乱暴に払いのけようはせず。
やがて鈴野は折れたのか、上げようとしていた手を下ろし、されるがままに撫でられ続ける。
「嗚呼、愛い娘よのう。お主と出会うた頃、瞳を虚無に染めた童が、よくぞここまで大きくなってくれたのう」
「……あんたらのおかげだよ。あの人が全部の罪を背負って引っ張り上げてくれて、あんたらが無駄に世話を焼いたり面倒事を押しつけてきたから私がいるんだ。……だから、感謝してる」
「……嬉しいのう。そう言ってもらえたのなら、お主に託したあの娘も浮かばれるじゃろうて」
顔を背け、人差し指で頬を掻きながら、照れくさそうに感謝を言葉にした鈴野。
そんな彼女に永が零したのは、いつものからからくつくつな余裕ある笑いではなく。
心の底から誰かを想い、目の前の少女を尊び、ここにある現在を慈しみような優しき笑みだった。
「だが、運命というのは残酷じゃ。だからこそ、お主は挑まねばならぬ。あの娘の……響の遺した結果のために争わねばならんとはな」
「……なんだそれ。どういう意味だよ、永婆さん」
だが意味深に吐かれた言葉への鈴野の問い。
真意を問われた永の笑顔は真剣な面持ちへと変わり、鈴野の正面まで移動して瞳を覗いてくる。
「……封印の限界が近い。もうじき、審判の刻が来ようとしている」
「……んな馬鹿な。だって、あれはあの人がシステムを変えて成長を遅らせたはず──」
「そう、確かに響めが仕組みの根本を優しくした。そして儂らもそれに賛同し、少なくとも五十年は遅らせたと、そう思っていた。……誤算だったのは人の進歩が、繁栄がお主達やこの婆めの予想を遙かに超えておったということじゃ」
首を横に振り、声を落として語る永に、鈴野は反論出来ずに息を呑んでしまう。
そして思い出す。身勝手にも後を任せ、そのまま自分の側から去った錆色の魔法少女を。
だってもしも、こいつの語るそれが正しいのであれば。
それはあの人の行いが無駄であったと、そう告げるに等しき侮辱に他ならない。
だったらあの人は何のために、私なんぞよりも大事な命を賭してまでこの世界の仕組みに抗ったんだよ……。
「……それが呼んだ理由か。もう間もなく訪れる終わりに備えろと」
「そうではあるがそうではない。むしろ本題はここからじゃ」
「あ?」
否定されたそれに、怪訝な顔で首を傾ける鈴野。
「お願いじゃ姫。どうかあの娘を、かさねを止めてくれぬか? あの阿呆はシステムに手を染めようとしておる。愚かにも、今の魔法少女を糧にしてじゃ」
「……かさねが? あの馬鹿が、人の命を使って?」
湯の場であろうとはっきりと分かるほど瞳を涙で濡らし、悲痛に顔を歪め、声を震わす永。
今まで見たこともない、かつて十五人で話した時でさえ見せなかった少女の慟哭。
そんな姿に鈴野は唾を飲み、その言葉に一切の虚飾がないのことを悟ってしまう。
かさねが、よりにもよってあの犬野郎が人を糧にする……?
どうなってんだ。あいつはあの人の親友で、私達の中で誰よりも無辜の人々を巻き込むのを嫌悪していただろうが。
『良いかノイズ。あたしら魔法少女は人のために戦うんじゃねえ。だからこそ、あの馬鹿みたいに関係ない人間を巻き込んじゃいけねえんだ』
かつて、心なく戦おうとしていた私に教えてくれた言葉を思い出してしまう。
……お前がそう言ったんじゃねえか。関係ない人を巻き込むなって。それはいけないことだって。
「……どうすればいい。私は、何をすればいい?」
「めいを捜すのじゃ。あやつならば居場所を掴める。先回りし、成就する前に接触するのじゃ」
永は告げる。めいと言う名前を、先ほど話題に出た狐耳の魔法少女を捜せと。
魔法少女イナリ。魔法少女の中でも抜きん出て反則的な彼女であれば、確かに手がかりがなくとも人捜しくらいは余裕だろうと。
「だがどうすりゃいい。イナリのやつに会おうにも、私には手がかりなんてない。そもそも、あいつが私を許してくれてるかは──」
「それについては問題ない。一つだけ、儂はあやつについて知っている情報があるからのう」
そう言って永は盆へ手を伸ばし、乗っていたスマホに指を滑らせていく。
防水加工はまるでなし。けれスマホは湿気や指の水で壊れることはなく、正しく持ち主の要望通りに画面を変えていく。
相変わらずでたらめで便利な能力だことで。羨ましいよ、そういう使い方を出来るのは。
「……これじゃ。これがやつへの手がかりじゃ」
「なになに……メール?」
「昔、あやつが一度だけ送ってきたんじゃ。便りがあるのは良い証拠だと、あの頃はつい跳ねてしまったのう」
『聞いて聞いておばあちゃん! わたしのベルちゃん、なんと同じ職に就いてくれたの! もしかして後追い!? 離れてもオソロなんて、これってやっぱり運命だよね!? ネオエンターに入って良かったー! きゃー!』
見せられた画面を覗き込んだ鈴野は首を傾げてしまう。
永がめいの奴からだというメールに書かれていたのは、頭が痛くなりそうな数文のみ。それも大した説明もなく、ただ自分のことだけ書いたものだ。
しかし同じ職……? 何のことだ……?
私の職歴なんて潰れた本屋でのアルバイト一つきり。だがあの職場にあいつはいなかった。
それに、ネオエンター? それって確かVの大手事務所の名前──。
「……まさか」
「そう。恐らく、お主と同じ配信者。それも文脈からして名うてのVTuberというやつじゃろう」
それは年寄りの口から出たとは思えない現代的な職業。
VTuber。つまりは配信者。画面の前でしゃべって金を稼ぐ、ネットキャバクラとさえ揶揄される職業。
まさかそんな偶然が……まああいつ、そういうの上手そうだしなくはないだろう。ところで。
「なあ、なんで私がVやってるって知ってるんだ?」
「そりゃいつも楽しく観てるからじゃぞ。のう、魔法少女ベルちゃんや?」
永がぽちぽちと画面を動かすと、なんと画面には見覚えあるチャンネル名とアバターが。
……え、ちょっと待って?
こんな真面目な話で流しそうになったけど、私の配信婆さんに観られてるの?
ギアルナといい縁ある人が知りすぎじゃない? 自分で言うのもアレが、所詮は登録者四桁のカスよ私。普通認知されなくない?
「名前まで一緒ならそら見つけちゃうじゃろ。儂としては、たまに出てくる姪ちゃんなる者について詳しく聞きたいんじゃが」
「……弟子だよ。何の因果か見つけちまった、今じゃ天然記念物な魔法少女」
「……なんと。まだおったのか、自発的に至れる者が」
あるはずのない奇跡を耳にし、驚きを隠さずに唸る永。
その反応に鈴野は少しだけ弟子を自慢したい気持ちに駆られるが、すぐに首を振ってその欲を振り払う。
「あんたからの連絡は……無理か。あいつ自分勝手で気まぐれだし」
「うむ。儂が連絡したところであやつはどうせ読まんし聞かん。あの在り方こそ、誰よりも自由な人なる獣。だからこそ、お主の頼み事であれば聞いてくれるはずじゃ。それこそがあの娘なのじゃから」
まあ確かに、あいつが素直に動く可能性があるとしたら私くらいだよなぁ。
あいつに会うのは気が進まないが、まあ仕方ない。
他でもない永婆さんの頼みだ。よほどのことでなければ、断る理由なんてどこにもない。
……それに、本当にあの犬野郎がそんな凶行に手を出してるってなら話は聞かなきゃならない。
他を犠牲にしてまで再びシステムに干渉する。それはあの人の──魔法少女ベルベットの意志に反することだから。
……ああでも、それにしたって気が滅入る。
一体どんな見返り求められるか。……今度こそは受け入れてやらねえとなぁ。
「ま、やるだけやってみるさ。あの犬野郎……レイドッグが何考えてるのか聞かなきゃならんし、何より封印が解けそうなら私達は会わなきゃだからな」
「……臆病な儂を許してくれ。あの娘の想いも、痛いほど理解できるからのう……」
「気にすんなって。婆さんが私達にだだ甘で、だから悩んでるのは判りきったことだからよ」
ぽんぽんと、頭を下げる永の背中を摩る鈴野。
その小さな背を手のひらで感じながら、久しくなかった魔法少女としての責任に心が満たされる。
必ず、話を聞くからな。
最悪な殴ってでも止めてやるし、けじめだってつけてやる。それがベルを継いだ、私の役目だもんな。
「さ、ひとまず話を切り上げて、そろそろ流して出ようかのう!
「食いつくなぁ。んな大層な話なんてねえぞ?」
「いいのじゃいいのじゃ! お主の弟子というだけでそれはもう盛り上がるからのう! ……ああちなみに入浴後にと冷やしてあったのじゃが、コーヒーとフルーツ、どっちの牛乳の気分じゃ?」
じゃばん、と波を立てながら立ち上がる永。
その顔に先ほどまでの悲痛さはなく、すっかり元の調子を取り戻し──それどころか新たな話題に更に活気づいている。
そんな老少女に鈴野はやれやれと首を振り、後を追うように立ち上がる。
「コーヒー派。っていうか、普通の牛乳ない?」
「あるぞー。しかし、そういう部分は響と違うんじゃなあ」




