2-39西沖家の五人きょうだい
一週間経った日曜日の昼頃、僕は西沖家に向かった。
外から見た間取りとしては我が家とあまり変わらなさそうだったけど、現在二人で暮らしているこちらと違い、ここには七人が住んでいる。狭すぎるということはないだろうけど少しは不便だろうな。
インターホンを押すと、近寄ってくる足音が聞こえ、玄関が開けられた。
「いらっしゃ~い」
「お邪魔します」
「奏向くん、福成くん。今日はありがとう」
「え?」
「いえいえ、こちらこそ誘っていただきありがとうございます」
振り返ると油井がいた。
いつの間に?
そして油井も振り返った。
「いや油井を見てたんだよ」
「なんだそうか」
前を見ると幸恵さんも向こうを見ていた。
「信じて。何も無いから」
「なんだ残念」
「何が?」
「上がって上がって」
好調だね。暑さのおかげかな。
僕たちはそれぞれの手土産を幸恵さんに渡す。
……実は幸恵さんに玄関を開けてもらってから何かの視線を感じていた。僕の後ろからじゃない。家の中、幸恵さんの方の背後からだ。
弟さんたちは気にしないと思うし、末っ子の天音ちゃんとはもうずいぶん馴れ親しんだ仲だ。となると、小学校高学年の女の子だろうか。まあ、年上の異性とか怖いよね。
「あっ。いらっしゃい!」
元気の良い声を掛けられた。
声がした方を見ると……その小学生の女の子と思しき子だった。
息を短く吸って、
「お友達?」
と掌を差し出して訊いた。
「やだ~聴いてた通り面白~! 晴果です。今日はよろしくお願いしま~す」
ご冗談を、と言うにはさすがに幸恵さんと良く似ていた。
「よろしく……」
よろしくで良いのかどうか考えている間に晴果ちゃんは油井と話していた。
じゃあ天音ちゃんかな。家で会うのはちょっと違うもんね。
「そなた。いらっしゃい」
そう言いながら近付いてきたのはその天音ちゃんだった。いつも通りだった。
「お邪魔しています」
「あの人が」
天音ちゃんが油井の方を見ながら言うので僕は頷いた。
「……なんだっけ」
抜けているのもいつも通りだった。
「幸恵さんが福成くんって呼んでいる人だよ」
「あ、そうだった。挨拶してくる」
後は、弟二人……? いや、こんなきょうだいの中にいるんだ、並外れて繊細とかありそうだ。
「ああ、いらっしゃい。すみません、妹二人が」
天音ちゃんに合わせてしゃがんでいたので少し上の方から声が聴こえた。男の子だ。
「長男の和朗です。いつも姉がお世話になっています」
そんなことを良い笑顔で言う。人当たりが良い。
「ああ、いや。お世話になっているのはこちらの方です。今日は誘ってくれてありがとうございます」
何かの時は和朗くんに相談しよう。
「あれ? 今日だったっけ」
気の抜けた、幸恵さんを男の子にしたような口調だった。
「富益です。どうぞよろしく」
「うん。よろしく」
「じゃ引き続き準備あるんで」
「今日のつもり無さそうなこと言ってたのに!?」
「明日のつもりでした」
もしかすると幸恵さん越えかもしれない。




