2-37空回る人と話した人
店で商品を選ぶことにはそれほど悩まず、僕たちは店内の席に揃って着いた。
ただ、凛紗さんは手を着けずにいた。
「大丈夫?」
「あ……その、今日の映画、食事が憚られる場面もありましたよね」
……うわ、やってしまった。
僕は昨日の冴羅さんの反応があったが故に凛紗さんは平気だと思い込んでいた。凛紗さんも僕と行動をともにすると決めていたから提案に乗った。けど、さすがにすぐに思い出させる行動に対しては耐性が無かったんだ。
最悪だ……望んでいなかったことを無意識にしてしまったなんて……。
「「ごめんなさい!」」
なぜか、僕と凛紗さんの謝罪の声が重なった。
「えっ?」
「あれ、なんで……?」
「いえ、君島さんはそれほど食欲が無いかと考えていたんです! にも関わらず、私のことを気遣って無理してくださったのかもしれないと思って!」
「いや、凛紗さんこそ僕に合わせて我慢しているのかと」
さっきからどうも空回りしている。
「――あっ、いえ、大丈夫です。私も安心しました。いきなり紛らわしいこと言ってごめんなさい」
「ううん、気にしないで。それにしても何かあった? 僕辛そうだった?」
「いえ、というよりは、今になって昨日の姉を思い出しまして。実は、昨日誰かと出かけたそうで、それで何を思ってか先ほどの映画を見て、食欲を失っていたんです」
冴羅さん、家に帰っても引き摺っていたか……。
何を思ってか、ね。
「お姉さんは他に映画について何か言ってた?」
「そのうち私が観たら一緒に話したいと言っていました。だから詳細には触れないとも。その食欲の無さはネタバレ同然のような気もしましたけど」
「確かに」
「ですよね。……でも」
凛紗さんは、これまで見たことの無いような、ほど良く力の抜けた笑みを浮かべた。
「嬉しかったです。姉が見てくれたこと。理解は一生されないとしても、否定するだけじゃないこと。それから、同じもの見ることが出来たこと。一緒に見たわけではないですけど、小さい頃を思い出しました。あ、すみません! 長々と話してしまって。気にせず食べてください」
「ああ、うん。いただきます。……踏み込んだことは言えないけど、お姉さんと、ちゃんと話してみて」
「はい」




