2-31怖がる人と忘れた人
駅から少々歩いて目的地に到着した。土曜日だからだろう。朝でも駐車場は八割ほど埋まっていた。
上映開始まで余裕があったが、映画館へと直行することにした。
全く気乗りしないな……。
チケット購入に座席指定が必要になった。見やすそうな席は売れていたが、そこまでいっぱいになっているわけでもなかった。
「前の端とかにしようかしら……」
券売機を操作していた冴羅さんの、しばらく黙った末の一言だった。
「見づらくないですか?」
「怖くなってきてしまったの! だからわざと見づらい席にでもしないと見ていられないと思ったの!」
「なんでそこまで……」
「いい!?」
「はいっ!」
今また問い詰められたけど怖くはなかった。むしろ、いつも冷艶とした冴羅さんの半泣きに助けを出したくなっていた。代わりのように居たたまれないのも違うよ……。
僕たちは時間まで映画館の外に出ていることにした。
「やっぱり夏休みだし家族連れが多いよね」
僕は何気なく冴羅さんに話した。
「そうね。君島も家族でこういう所によく来るの?」
「まあ、あるけど」
というかそれしかないです。
「そうよね……。実は、私にはあまりそういう経験が無いの」
「自分の家族と、ってこと?」
「ええ。いつも来る時は友人となの。ねぇ、家族と来てどういう話をするもの?」
「それは……売り物がどうとか、どこ寄っていくかとか」
「へぇ。趣味が合うのね」
「そうでもないけど」
「そうなの!?」
僕が驚くぐらい冴羅さんに驚かれた。
「うん……僕が服飾とかに興味がないから」
「そう……気にすることなかったのね」
「気にする必要のある趣味なの?」
もしかして凛紗さんのホラー好きだろうか。
「気にするわよ。父の趣味はどうしても分からないもの」
「あ、ああ。そうだよね。家族で唯一の男性だからかな」
「それが理由なのかしら。それなら君島には理解できるのかしら。父の趣味」
「どんなの?」
「……楊枝集めよ」
「狭い……。いやたまに形状違うのがあるな~とは思うけど!」
「君島も困惑するなら私たちには理解できるはずもないわよね」
「そうだとしても差し支えないと思うので一緒に出掛けてあげてください」
「分かったわ」
母との暮らしが長くなって、“父”という存在そのものが抜け落ちるようになった。
僕としてはそれで良いと捉えているけど、こういう会話には少し影響が出てしまう。
「どうかしたの?」
「なんというか、冴羅さんの家は良い家族だと思ってた」
「そんなこともないわ」
◇
しばらくしてから中に入れるようになった。客層はカップル、年齢が比較的高い親子や家族連れ、一人と意外と幅広い。
指定した席――僕が真ん中寄り、冴羅さんがその隣――に着いてまずは流されていた予告やCMを観た……観上げた。
本当に観づらい。すでにちょっと疲れた。普通に映画を観ても立ち上がる時違和感があったりするのに僕の首は持つのだろうか……。
「ちゃんと観づらいわね。安心したわ」
「別の所が不安ですけど」
「……ごめんなさい」




