2-14棘の姉
実行委員会会長から話された動画内容は四種類あり、その内の一つである開催予告は公開が来週中だ。例年簡単な物であったため、案として今までと被らないように既に三つ作成していた。これらを上映した上で検討が行なわれ、程無くして内容が決定した。
やがて会議は終了。映像部も機材を片付けて解散した。
後輩たちが帰ったコンピューター室で、僕たちも帰り支度をしていた。
「冴羅ちゃんって綺麗だよね」
「え?」
これまでのことや実際どう思っているかに関係無く、こういった話にどう答えれば良いか分からない。素直に言って良いの? 同調したら同じ嗜好として喜ぶの? それとも差し置いたから悲しむの?
事情を加味すれば良いのか? 確かに幸恵さんならただなんとなく訊いただけの可能性が高い。でも持ち前の鋭さから冴羅さんの様子に感付くところがあったのかもしれない。
なんて答えれば――。
「え~? 思わない?」
どうしてそんな爛々とした目で見つめるんです!?
ああ……もうどうとでもなれ。
「綺麗だと思うよ。僕も」
「だよね! でも綺麗な花には棘があるって言うよね……」
本当に一体何を思っているの……?
「冴羅さんに棘があると?」
「いや~そういうことがよく言われるな~ってだけで冴羅ちゃんには……あるかな……」
「えっと……あるんですね?」
「なんというか、どこか張り詰めている感じがして」
「話しかけづらい感じ?」
「う~ん。そうかも。いやなんか違うような……話は普通にしてくれるし周りに対して攻撃的ってことじゃないんだよね。むしろすごく優しいと思う。あ……でもたまに当たりが強かったり顔が怖かったりする……。うぅ……悪いところばっかり言ってる。今言ったことはほとんど無くていつも素敵な人なんだよ!」
「幸恵さん、取って付けた感じが強いです」
「そうだよね……」
幸恵さんは肩を落とした。
「でも、大丈夫。分かっているから。妹さん思いで、その妹さんからも思われる方だということは」
「あれ、凛紗ちゃんのこと知ってるの?」
「あ……たまたま会ったことがあって!」
「そっか、それだよ!」
幸恵さんは頭突きせん勢いで僕に顔を近づけた。
「うわっ! 何が!?」
「頭が良くて優しくて綺麗で頼れる! 理想のお姉さんだよ!」
「冴羅さんのことね」
「そうそう。凛紗ちゃんのこと羨ましいって思ったこともあったな~」
「五人きょうだいの長女の幸恵さんが言います?」
納得のいく表現が見つかったようで何よりです。僕としても、幸恵さんから見た冴羅さんの姿を知れて参考になりました。
コンピューター室を出て、鍵を閉めたところで少し気になったことを訊いた。
「幸恵さん、冴羅さんには申し訳ないんですけど、顔が怖いのはよくあることじゃないんですか?」
「え? さすがに失礼じゃない?」
……僕が怖いと思う顔でも幸恵さんはたまにしか怖いと思わないらしい。




