2-12良い結論
次の日、高校にて。
「櫓さ~ん! なんとかしてくださいよ櫓さん!」
「私は君を助けに来た未来のロボットではない」
情報屋とも呼ばれ、人間関係に対して見識をもつ櫓智香。彼女に相談を持ちかけるために僕は席まで押し掛けた。人間であることは確かだけど、かの世話好きなロボットとは対照的に無機質な性格だ。
「内容によっては相談料を取るから聴いてやろう」
「辛い……。とにかく、単純な話ではないから退屈はしないと思う。単刀直入に言うと、深町姉妹が二人とも僕と付き合いたいと申し出てきまして」
すると櫓はそのうすら眼で僕を真っ直ぐに捉え、ため息を吐いた。
「君が私のことをどう思っているかは知らないが、私でも引くときはある」
「すみません。最初から話す時間をください……」
そうして昨日あったことについて伝えた。
「なるほど。それで?」
「現時点でも答えは出ないよ」
「そうか。ならどちらとも付き合え」
「ええ!? 投げやりになる気持ちも分かるけど! それともつまらなかった?」
「投げやりだなんてとんでもない。より面白くなるようにしているんじゃないか」
「そう……」
「なあ。君は草壁と西沖に対するこれまでの行動をどう思っているんだ?」
つまり言い換えれば――二人を幸せにできたのか?
今は二人とも前より楽しそうだと感じる。憧れの人、同じ夢をもつ人、支えたい人、関係の違いはあれど一緒に居たい人と居られるからだと思う。
でも関係を結ばせたことで無理をさせているのではないかと思う。余計に惑わせているのではないかとも思う。草壁が倒れたときは特にそれを考えた。
なら、深町姉妹は?
どちらに対するどの行動が、誰にとっての幸せに繋がるのか?
同時に叶えることが不可能なとき、誰の幸せを棄てるべきなのか?
「結論は出ないよ。良いのか、悪いのか。今は良いと思っても後で悪いと思うかもしれない」
「良い結論じゃないか」
「あ……うん。ありがとう。さすが櫓だよ。おかげでどうすれば良いかは分からないけど、どう考えれば良いかは分かったよ」
「それは良かった。何かした覚えは無いがな。……さて、相談料だが」
「なんで!? 何かした覚え無いんじゃなかったの!?」
「どら焼きにしよう」




