2-7聴いて! ☆
二人とも順調なのは分かった。しかし、どうすれば僕は二人それぞれとの距離を取ることができるだろうか……。
教室の外のロッカーで次の授業の準備をしつつ、そんなことを考える。
急に離れてしまえば、草壁も幸恵さんも絶対に心配すると思う。自惚れじゃなくて。それが冷静さを欠いた言動を誘いかねない。ゆっくり、獰猛な野生動物から逃げるときのように、目を反らさず、背中を見せないように一歩づつ下がるのだ。この方法本当に獰猛な野生動物に対して効果があるのか知らないけど。
「君島くん。君島奏向くん!」
いきなりの呼び掛けに我に返り、声がした方を向いた。そこにいたのは深町冴羅だった
「……え? 深町さん? 何? というかいつの間に?」
「悪かったわね、影が薄くて」
「いや考えごとしていたから。あの、何か?」
「ちょっと、話があって」
「文化祭の話?」
「う……なんと言うか」
何か話しづらいことだろうか。
廊下のひと気の無い所まで行くことにした。
「ここでならいい?」
そう言って深町さんの顔に向き直ったのだが、見る間に染まっていくのが分かった。
こっちまで緊張してくる。というか、この感じどこかで……?
パシッ!
深町さんが両の頬を叩く音で、僕の思案は吹っ飛んでしまった。
「言うわ! 聴いて!」
「はいっ!?」
「付き合ってほしいの!!」
あ~……ええ!? い、いや、冷静になれ。どこかに着いていってほしいとかそういう話だろう!
「えっと、どこ――」
「夏休みの間だけ!」
????
深町冴羅。昨日の生徒会役員選挙で副会長に任命された人物だ。体育祭実行委員会としても精力的に活動していた。成績も優秀で、きりっとした居住まいは、幸恵さんとは対称的ながら頼られる存在だ。
……申し訳ないけど、彼女の印象は以上だ。中学校は一緒じゃないし、草壁と木庭みたいに小学校は一緒で一度離れたとかでもない。他にも行事で活動していたかもしれないけど、思い起こせるのはつい最近のことだけだった。
そんな人が何故?
「いきなりごめんなさい。説明させてもらっていいかしら」
「お願いします」
「実は妹の誤解を解きたいの。妹には好いている人がいるのだけれど、私とその人が親しいことを気にしている様子で。だから他に付き合っている人を見せて、妹のことを応援したいと考えていて」
直接言った方が――と一瞬思った。そんなこと僕が言えるはずもない。そう出来たら苦労しない。あらゆる手段を考えた上で、擬似的な関係を作ることに決めたのだろう。




