1-54ゴール
いざ始まった試合は混戦となった。一組も三組も同様に相手のフィールドに入ることはできるものの、結局は止められるという状態だった。
残り三分。得点は一対一。あれ、今回も引き分けかな。なんて思っていた時だった。
一組のフォワード全員、ほとんどのミッドフィールダーがパスを回しつつゴールへ迫ったが、総出で立ちはだかるディフェンダーに為す術が無かった。
それは結果として、守りが引きはがされ相手ゴールが僕の目の前で露わになった。
――あの場所にボールが行ったらもったいない。
このままでは均衡を打破できないというのもあったけど、一番はそんな貧乏根性でした。
「ここはお願い!」
横並びにいたチームメイトに声を張って伝えるとともにゴールに走り出した。
途中から追われた。一方最前線はまだ僕に気づいておらず、案の定まだ誰もいない空間に弾かれた。
もう余裕は無い。
トラップ無しで。
蹴り込む!
「頼む、君島!」
僕に気づいた一人から声援が飛んだ。
僕の足に当たったボールは――
その場で回転した。
まずい! 後ろから来る! 前からもキーパー来てる! 回転するとかあるの!? これ凄く蹴りづらい! 誰か助けに来てほしいな! というかもう誰でも良いからこの状況なんとかしてぇ!
「落ち着け、君島!」
僕にさっきの一人から助言が飛んだ。いや、助けてほしいな。
「ふん!」
再度蹴り込んだボールは、キーパーの股を抜き、回転を保ったままゴールに収まった。
意識の外の人物が得点したためだろう。一組のみんなは大いに喜んだ。
良いのよ? 情けないって言っても。
◇
この三組とは三対一で決着した。あれ、僕の得点要りませんでした?
「初勝利おめでとう。君島も頑張ってたよ、回転させて……ふふっ」
草壁が労いになりきれない言葉をくれた。
「うん、回転させようとして回転させてたわけじゃないよ? その反応が一番しっくりくるけどね」
「あ……ま、良かったのはホントだから」
僕から目を逸らして、そんな一言を付け足した。
「……そっか」
不思議にも、その一言の方も訝しむことなく受け入れていた。
残りの一戦だった四組との試合にも勝利。一組は二位タイという結果となり、二年のサッカーは幕を閉じた。




