1-52意外な答え、意外な提案
食べ終えた後のお皿を見て考えていた。草壁の言う通り、明日幸恵さんにお礼を言おう。キャベツはまだ家にもいくらかあるけど。
明日、部活で、会った時にお礼を言えば良い。あまりの気楽さに少し笑ってしまった。油井は話したくても話しあぐねているというのに。
あれから考えてはみた。けど結論は出なかった。それどころか今日の部活で幸恵さんを真っ向から捉えようとするのが不可能なことのように思えて……。
考えにくいけど、進路の、目標の話をして、「え、その程度なの?」とか「それぐらい自分で決めてよ」とか「意見を言ってその責任を負わされたらどうしよう」とか、口に出さなくても絶対に思い浮んで来ないとも言い切れない。
気がつくと、草壁が食器を取り下げに来てくれていた。
「あぁ、ありがとう」
「……君島、最近ずっとそんな感じだよね」
「そんな?」
「どうせ他人のこと心配してるんでしょ」
「あ……うん。友人のことでね」
「なんか知らないけど、うちに話せることだったら聴きたいし、一緒に考えたい。君島にそんな必要無いって分かってるけど」
「そんなことな……」
それって。
「そう、思うものなの?」
「なっ、悪い!?」
「それは、僕だから?」
「う……そうだよ」
「重くても軽くても聴きたくなかったことでも?」
「そんなの関係無い。話してくれたら、一緒に考えたいって、それだけ」
「そっか……ありがとう」
「いいんだって、そういうの!」
文句を言いつつも、僕が苦笑いするのを見てなのか、厨房に振り返る一瞬どこか嬉しそうな表情が見えた。
◇
「油井、ちょっといい?」
数学の授業終わり、まだ席に座っていた油井に声をかけた。
「なんだい?」
「幸恵さんへの相談のこと。結論から言うと、してみると良いと思う」
「彼女は話をあまり重く受け止めないということかな?」
「そこはちょっと分からない。やっぱり何を考えてるか分からなくて」
「君島でも、か」
「それでも、何か悩んでるなら相談してほしいんじゃないかな。現に心配していたわけだし。どんなことだったとしても聴いてくれるはずだよ」
草壁が言っていたことそのまま。根拠になるような例ぐらいしか加える気にならないほど、それが答えだと思えた。
「ああ、そうか」
油井は目を開いてからしみじみと納得したように、ため息交じりにつぶやいた。
「ん? 何?」
「こんな風に相談するかしないかみたいなことこそ、重いってことか」
これまでの幸恵さんの想定に違和感があったからか、その言葉が余計に腑に落ちた。
「うん。そうだと思う」
「よし、じゃあ話す。君島も聴くか?」
頷いた後で一瞬の内にねじ込まれていた言葉に気づいた。
油井も頷いて席を立った。
「……あの、今なんて言いました?」
「よし、じゃあ話す。君島も聴くか」
抑揚無く言われた。
「そうだ、いつ頃がいいと思う?」
「あー……再来週の金曜の放課後とかいいんじゃないかなー、落ち着いた頃だから」
「分かった。当日は頼む」
「うん、分かった……」
まあ。
本人が良いなら。
いいか。




