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1-5悩みの種と決断

 向こうから店員さんが来るのが見えた。注文した料理が櫓の前に置かれる。鶏肉の香ばしさとトマトソースの酸味を感じさせるオムライスが香るけど、すぐさま意識の外へ消えた。


 今の話は噂だ。間違っているかもしれない。でも本当だとしたら、僕に好意を持ってくれるなんて心の底から嬉しい。しかも草壁も幸恵さんも魅力的だと思う。付き合いたいと思う男子は少なくないはず。

 いや……でも知り合って一年程度で? 確かに草壁とは高校に入学してから二度同じクラスになって、幸恵さんとは同じ部活になった。けどその程度だ。もっと深い仲の、相応しい人がいると思う。

 それに、僕はどちらの思いにも応えられる自信が無い。二人同時だからというわけじゃない。どちらか一人だったとしても、普通より余計に悩みを抱えさせるに違いない。

 漠然としたものに対して一応の形が見えたとき、乾いた音がした。


 櫓はすでにケーキも食べ終え、フォークを置いていた。早くないですか。確かオムライスが届いてから十分ちょっとしか経ってないですよ?

 コーヒーの飲む様子を見て、僕もアイスコーヒーで喉を潤した。


「買った情報は終わりでいいのかな?」


「そうだな。誰から聴いたかは追加料金で」


「それはさすがに大丈夫」


 櫓の視線は僕の顔に向き、ゆっくりとコーヒーに戻った。


「意外と反応薄かったな」


 ただ確認するような言い回しだった。そんな反応から僕が困惑していることを逆に読み取ったことだろう。


「色々考えちゃって。嬉しいことも確かなんだけどね」


 これ以上長居すると根掘り葉掘り訊くのが櫓という人間だ。アイスコーヒーを飲んで席を立ち、取引通り代金を支払った。


「今日はありがとう」


「今後も買ってもらえるとありがたい」


 櫓の揺るがぬがめつさに思わず笑ってしまった。


「どうかな。でも、また頼むかも」


 櫓は頷きを返して僕と別れた。



 今では根掘り葉掘りほどではなくとも、ある程度話してしまって良かったと思っている。

 でもそうしなかったのは、櫓の話が信じられなかった、いや信じる気になれなかったからだ。二人の反応から見て結局櫓の言うことが正しかったみたいだけど。


 連休が終わった後、僕は櫓に悩みを打ち明けるつもりだ。

 そして、あわよくば僕に協力してもらいたいと考えていた。

 ……いくら巻き上げられるんだろう。

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