1-3情報屋
僕の悩みはここから始まった。
二週間ほど前のことだ。
「君島奏向。面白い話あるから買え」
いきなり僕の席に来た女子が、山賊まがいの発言をすることは今に始まったことではなく。
唐突な来訪者の名前は櫓智香。山賊は冗談でも、情報屋という表現は冗談ではないと、僕と同じ中学を卒業した同級生なら分かってくれるだろう。
「え、何? テストのリークならいらないけど」
僕がテストの話を出したのは、櫓の情報屋活動一発目であり代表的な一例だからだ。
中学の頃、櫓は一部の同級生に無償で全教科をリーク。その情報は一つの間違えも無く、公開された者のみならず、他の同級生、それどころか他学年すらも驚かし、教師たちの中には警戒する者もいたようだった。
それ以降はテストの情報に対価を求めた。櫓の情報は確かであったためにその操業は上手く回り、テスト以外の情報も取り扱いだすころには情報屋というあだ名が付いていた。
「そんなのはもう取り扱ってない。費用対効果が少なすぎる。それに君はその手のものを買ったことないだろう?」
櫓の言う通り僕も情報を貰うことがあるが、いつも大体時事ネタか街の噂だ。教えてもらえる時事ネタは分かりやすいからとても助かる。安いネタばかり買っていきやがってと詰められるけど。
「櫓から持ちかけてくる話とか見当もつかないし。あっでも高いんでしょ」
「七五〇円分の話が二つだ」
「地味にする……」
この価格は櫓の労力、つまり言い値で決まっている。
今回に関して言えば、大した内容では無いが自分に関する情報なのだから気になるはずだ、という足元を見て決めている可能性もある。
「何について?」
「君が男子高校生なら興味のあることなんじゃないか」
何それ? 男子高校生? 僕がよく買う情報と合わせて考えると……受験とかの話だろうか。それをわざわざ僕のところまで来て売るとは。もしかすると櫓はこうして片っ端から売りつけているとか? 健気というか守銭奴というか。
ただ、それだと少し高い気がする。
「負けていただくことは……」
「駄目だ。いつも安い情報を買っている相手にそういったことはしていない」
「もう少しどういう話なのか詳しく……」
「駄目だ。これ以上は商品そのものになる」
「そうですか……」
気になる話なのは確かだ。僕は椅子に深く座って目を伏せる。
冷静になって、決心が着いた。
「分かった。買うよ」
「毎度。受け渡しは放課後で」