1-28問題を解こう!
受付で渡されたのは問題が載ったバインダー。ざっと見たところこれだけでは全てを解くことはできず、指定される場所に行くことでヒントや完全な問題が分かるようになっているみたいだ。
櫓さんは既に解き始めていた。待ってくださいまだ問題読んでもいないですって。数合わせとか全くそういうつもりないでしょ?
「『苺、うどん、椎茸、蕎麦、ネギ、ブルーベリー、まんじゅう、リンゴを3つのグループに分け、椎茸と同じグループの個数を〇、ブルーベリーと同じグループの個数を△、まんじゅうと同じグループの個数を□としたとき次の式で求められる数は?』で、式が『〇×△+□=?』数の候補が9と10と13……」
「あ、マルバツサンカクじゃなかった」
「野菜も果物も料理も和菓子もあって三つにするのか」
「野菜も植物と菌類だし」
「そこまで細かく分ける?」
「確かに。そういう分け方ならうどんは蕎麦と料理としてまとめないでまんじゅうと小麦由来の食べ物としてまとめた方が」「あのすみません」
「え? それなら蕎麦も小麦を使うものがあるから三つで一つじゃない?」「お二方?」
「それもそうだな。で、どうした君島」
「グループが三つになりそうにないんですけど」
「そうか、そうだったな。なら漢字と平仮名と片仮名に分けるか」
「今のなんだったの……」
「3×3+2で11。選択肢に無いよ」
「だよね」
三人、改めて問題を見直す。
「二つに『ご』が付いてるんだけどね」
「じゃあ苺とリンゴか同じグループ?」
「りん、いち……。そうか」
何か分かったような声だった。
「それぞれは別だと思う」
「なんで?」
「単語に数を表現できる言葉が、一つも無い、一つ含む、二つ含むの三つで分けるんじゃないか」
「じゃあ、椎茸は『し』で四、まんじゅうは万の『まん』と十の『じゅう』。で、他のには無いんだ。式は2×4+2=10。お~。ちゃんと答えにあった。ありがとう油井くん!」
「いやいや。序盤でこれだと、それぞれ意見を出し合った方が良さそうだ」
二問目以降、僕たちは櫓以外が引っかかりつつも解答を導き出していった。
僕は幸恵さんと油井の会話から離れ、後ろにいた櫓の方を向いた。
「さすがだよね、すんなり解けるのは」
特に返答も無く、ただ感情の無い目を向けられた。
「哀れみでも侮蔑でも無い視線が本当に怖いよ……。ところで練習したりした?」
「何?」
「いや、その、これを企画している会社のサイトにこういうのが幾つかあって、そこに大体練習問題があったから」
「まあ……使ったな」
「へ?」
やけに素直に、かつわざと聞こえにくく答える様に思わず声が出てしまった。
「と言えば君は納得するのかい?」
櫓はニヤニヤと僕を見ていた。
「ん? 大丈夫か?」
前にいた二人は当然訳が分からなさそうな顔で僕を振り返っていた。
「ああうん大丈夫」
僕はただ笑顔でやり過ごすしかない。また櫓の演技にやられた……。




