5-44羨望、人それぞれ
「お姉ちゃん。今日は一緒に行く?」
「え? もちろん!」
今日は晴果と一緒に登校することができた。中学校は高校の近くだけど、晴果の部活とか天音の送迎とか、お互いの都合でいつでも一緒に登校できるわけじゃないから嬉しい。
「こんな風に一緒に歩いてくれるのは晴果だけになっちゃったな~」
「そりゃだって、お兄ちゃんも富益も友達にお姉ちゃん見せられないでしょ。もっと自分の魅力自覚して?」
「そっか……確かに大きいよね」
「持ち上げないで。でも私とも、こういうことそろそろできなくなるからね?」
「え?……あ、私が大学行っちゃうからか。え~? 今から近くの大学に変えようかな?」
「そんなお姉ちゃん私は嫌だから」
「うう。分かった」
「もう。そっちに遊びに行くから」
「あっ! それも楽しそう!」
「立ち直り早。なら、頑張ってね」
「うん!」
「あの~……」
不意に後ろから声がして、咄嗟に振り返った。
「びっくりした。凛紗ちゃんか。おはよう」
「あ、おはようございます! ごめんなさい。羨ましさで声をかけられず途中からお話を聴いてしまいました!」
「何が?」
「姉妹で登校していることです」
「なるほど。今度誘ってみてよ。確かに忙しそうだけど、一緒に登校してくれるんじゃないかな」
「はい! 今度誘ってみます!」
「えっと、それで話したいことっていうのは?」
「晴果ちゃんに。この間はありがとうございました。おかげで大切な人に告白できました!」
「え、すごい! 頑張るとは言っていましたけどそこまで!? おめでとうございます」
「ということは、私にとっても恩人ってこと? ありがとう晴果!」
「なんでお姉ちゃんも?」
「凛紗ちゃんにとって大切な人は私にとっても大切な人だから」
「そうなんですね……」
私の言葉で晴果の顔が少し翳った。……あ。
「奏向くん、だから!」
「あ、ああ! そうなんですね! じゃあ、凛紗さんに肖れるように頑張ります!」
頑張れ、晴果!
◇
昨日は楽しかったけど、ちょっと凛紗を羨ましく思った。こんな時は……
「麗奈~!」
麗奈に駆け寄って、
「お~よしよし。どうしたの?」
頭を撫でてもらって、
「うう。最近り……付き合い始めた友達のことが羨ましくなっちゃったんだよ~」
相談に乗ってもらうのが一番!
「そうなんだ。どんなところが羨ましいの?」
「可愛すぎるくらい可愛いところとか、でも格好良くしようと思うと格好良くできちゃうところとか、うちにできなかったことができてるところとか、うん。いろいろ」
「万能?」
「病弱だけど」
「そっか。私は美頼の元気で夢に真っ直ぐなところが格好良くて羨ましいけどな。だってほぼ毎日リュヌに行ってるでしょ? 私はたまに休んじゃうもん」
顔を上げると麗奈は微笑んでいた。
「その加減できるのも羨ましい」
「人の欲望に限りは無いね。でもそれで大切なものを疎かにするようなことがあったら駄目じゃないかな」
「そっか……。うん。ありがと!」
「それそれ! そういうところ可愛いから!」
「えへへ。麗奈の頼れるところも好きだよ」




