5-30冬の廊下にて
幸恵ちゃんの提案で昼休みに美頼さんと三人で少し話すことになり、時間になって三組の前で集まりました。
「ごめん。寒いけど廊下で」
「うん。まああんまり声出さなきゃいいでしょ」
「いや、そっかごめん! 凛紗ちゃん寒いと体調悪くしちゃうんだっけ?」
「大丈夫ですよ、少しなら。ありがとうございます。病気のこと、気にかけてくださったことも、その前まで忘れていたことも」
「え? 忘れてていいの?」
「普段は忘れていてほしいんです」
「そうなんだ」
「じゃあ、凛紗は病気じゃない病気じゃない」「それも嫌です」
笑い合う私たち。
「美頼ちゃんも奏向くんから離婚の話を聴かせてもらえたって言ってたから話したかったんだ。どう思った?」
「やっぱ君島好きだな~ってなった」
「え……?」
「ね? 凛紗」
「あ……はい!」
思わず感情を表に出してしまっていたのでしょうか。恥ずかしいです……。
「そうだ。君島家どうだった?」
「綺麗にしてあったよ。奏向くんの部屋も含めて」
「やっぱそうなんだ。うちも見せてもらおうかな」
「そういえばなんで見せてもらおうと思ったんですか? 約束していたみたいな話はしてましたけど」
「約束、してないと言えばしてないんだよね」
「え?」
「考えておくって言われてて。いつかちゃんとお願いしようと思っていたんだけど、今にしたのは凛紗ちゃんに見てほしかったからなんだ。大事だと思うんだ、どんな家に住んでいるかって」
「あ、ありがとうございます」
「そうだ、チョコあげた?」
「はい」
「おお~。どんな反応だった?」
「あ、えっと……ごめんなさい! 今は言いたくないです! でも絶対いつか必ずお話ししますから!」
二人は私を見てにやけていました。見ないでください……。
「ま、それならそれでいっか。冴羅にだけど、案内渡して良かった」
「こちらこそ、ありがとうございます」
お二人とも気にかけてくださってありがたいです。
「というか奏向くんに渡すのすっかり忘れてたな~」
「君島さんが思った通りだったんですね……」
「家族には渡したんだけどね」
「君島さんはそれで良いとは言ってましたよ」
「そう?」
「また君島は。私も渡してないけど……」
「あ、凛紗ちゃんだけっていうので思い出した。奏向くん、なんで凛紗ちゃんにだけ離婚したことを話してたんだろうね」
「うちもそれ気になって訊いたんだけど、気まぐれらしいんだよね」
「へえ。どんな状況で聴いたの?」
「その、一緒にお弁当を食べる機会があったので、そこで」
「……あ、もしかしてあの部屋で? 二人きり!?」
「二人きりかあ……」
お二人の視線は熱を帯びていました。
「恥ずかしいです見ないでください!」
冬の廊下とは思えないほど暑かったです……。




