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5-20過去に戻って

 部活の無い放課後。どうしてもすぐに帰る気にはなれず、とはいえ行くあてもなく、遠回りしてゆっくりと歩いていました。


 途中母校である中学校の校門の前を通りすぎ、笑顔で下校する中学生の方々を見ると複雑な気持ちになりました。

 病気が無かったら。今の調子のまま戻れたら。そんな無理なことを思わずには……。


「じゃあね」


 え? この声、幸恵ちゃん?

 思わず振り返ると、そこにいる女の子はどう見てもこの中学の制服を着ていました。

 まさか本当に戻ったのでしょうか。


 その子がこちらに向かってきます。

 そのおかげで顔をよく見ることができました。幸恵ちゃんではなく、おそらく晴果ちゃんのようです。本当に時間が戻るわけないですよね。


「こんばんは……」


「あ、こんばんは……。あの! 幸恵ちゃんの妹さんの晴果ちゃんですよね?」


「えっと……」


 当然不審ですよね……。

「あ、ごめんなさい。私、幸恵ちゃんの友人の凛紗です」


「あ! もしかしてお姉ちゃんの幼なじみの!」


「そうですそうです!」


 私たちは話しながら歩くことにしました。


「いや~、ずっとこっちを見てくるから誰かと思いましたよ」


「不審な行動しがちなんです……」


「そうなんですか? なんか面白い」


「とんでもないです! 怖い思いをさせてしまうんですから!」


「でも理由はあるんですよね?」


「へ? あ、はい。幸恵ちゃんの声がしたと思ったからです」


「じゃあ仕方がないですね」


 私は思わず笑いました。

「声以外にも鋭いところが幸恵ちゃんによく似ていますね」


「そうですか? 嬉しいですけど……お姉ちゃんそのものにはなれないですよね~」


「え? どういうことですか?」


「それは……傍にいたい人が凛紗さんの同級生にいるんです。でも私は中学生だから色々難しいじゃないですか。そう思うとお姉ちゃんと入れ替わりたいな~、と」


「そうでしたか。私は真逆のことを考えていました。私、幼い頃からの持病があるのですが、今ようやく普通の学生生活を送ることができていて。でも一喜一憂したり冷静になれなかったりで疲れてしまって、今の状態のまま中学生に戻れたらもう少し違ったのかもしれないと思っていました」


「……それは、いつでも変わらずそうなってしまうような気がします」


 私は驚いて晴果ちゃんに顔を向けました。


「いや分かりませんけど! でも私はこれからもあの人のことで一喜一憂したりすると思います」


「それは、どうしてですか?」


「理由と言えるか微妙ですけど、大切だから、でしょうか」


「大切……。そうですね。やはり幸恵ちゃんそっくりです。その本質を見抜くような考え方」


「本質だけでもどうにもならないですが。なんて。私は頑張りますよ。想いが届くまで」


「はい。私も頑張ります!」


 晴果ちゃんを見送る時、私の心はすっきりとしていました。

 ああ、そうだったんですね。

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