5-19進路希望
あらゆる大学の過去問題集が置かれている部屋――進路相談室へ借りに向かっています。今は確かに君島さんの進路を知りたいですが、私も受験勉強をしなければなりません。
「あ、凛紗さん」
「君島さん!?」
「ごめん……」
「い、いえ、こちらこそ……」
部屋に入ろうとしたところでちょうど出くわしました。出ようとしているということは……確かに問題集を持っていました。
見たい……でも怖い……あまりにも遠ければ諦めることを考えることになるでしょうから。でも見なければ前に進めない気がして……。
「凛紗さん?」
「うへっ!?」
「話があるなら聴くよ。ただここからは移動しないと」
「あ、はい、すみません、お願いします」
この部屋の中の面談用に置かれているらしい席に座りました。
……対面……! ただでさえ緊張するのに赤くなっているところを見られそうで恥ずかしいです!
「で、どんなこと?」
緊張が最高潮です!
……深呼吸。
訊きましょう。こんな状況になって、聴いてくださるわけですから。
「君島さんはどこの大学を受けるつもりですか?」
「筑葉大学だよ」
「そう……ですか。難しい大学ですよね?」
「そうだね。結構苦労してるよ。凛紗さんは?」
「一番近い大学です。近さ以外にも経済学が学べるので」
「へえ。勉強したいことがあるのはちょっと羨ましいな。僕は特にないから。試してみたいってだけで」
「充分凄いですよ。応援してます!」
「ありがとう。まあ落ちたら同じ大学にするつもりだから、学部は違うけどまたよろしくね」
「あ……お願いします……」
「話はこんなところ?」
「あ、はい。えっと、私は問題集持っていきますので」
「じゃあまたね」
君島さんは部屋から出ていきました。私は問題集を持っていくだけでしたが、椅子から立ち上がることもできませんでした。
なんで最後そんな……応援したくなくなることを言うんですか。
君島さんの第一希望の大学はそこまで遠くはありませんでした。それに第二希望の大学であっても、君島さんが受けるであろう理系の学部はキャンパスが少し離れた場所にあります。
それでもずっと近くにあります。すぐに会いに行ける場所です。
そこだったらと、少しでも思った私は……最低です。




